「自社の離職率が高いことが悩み」
という経営者の方は、多いのではないでしょうか。
少子高齢化が進むなかで、日本の雇用情勢は売り手市場が継続しており、とくに中小企業においては、人材不足が深刻化しています。
離職率に対して適切な対策を講じ、人材の流出をくい止めることは、重要な経営課題です。
この記事では、離職率の高い中小企業に多く見られる原因と、それを解決するための具体策を解説します。
従業員の定着率を向上させる具体的なアクションプランを立て、実践していきましょう。
【目次】
1. 離職率が高い中小企業の実態
最初に、離職率の基礎知識と実態について解説します。自社の状況を、全体動向と比較しながら、読み進めていただければと思います。
1-1. 離職率の計算方法
「そもそも、離職率はどうやって計算すればいい?」
という点からクリアにしておきましょう。
厚生労働省の調査では、離職率を「常用労働者数(*1)に対する離職者数の割合」と定義しており、以下の計算式で求められます。
離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100(%)
*1:「常用労働者」とは、期間を定めずに雇われている者、または、1ヶ月以上の期間を定めて雇われている者のいずれかに該当する労働者をいいます。
【離職率の計算例】
2023年1月1日に80人の常用労働者が在籍しており、2023年中に10人が離職したとします。この場合、離職率は以下のように計算されます。
離職者数 10人 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 80人 × 100(%) = 離職率 12.5 %
今期あるいは前期の実際の数値を利用して、自社の離職率を計算してみましょう。
1-2. 離職率の平均値
「計算した自社の離職率が、高いのか?低いのか?」と判断するうえでは、平均値がひとつの目安となります。
厚生労働省「令和3年雇用動向調査」によれば、2021年の離職率の平均値は《13.9%》でした。
【入職率・離職率の推移】※赤線が離職率
自社の離職率が《13.9%》よりも低ければ平均以下、高ければ平均以上、と判定できます。
1-3. 中小企業の離職率
「大企業は除き、中小企業の離職率だけを知りたい」という方は、以下の表をご参照ください。企業規模別の離職率を抜き出した表です。
【企業規模別 離職率】
企業規模 |
離職率 |
---|---|
1,000人以上 |
12.9% |
300~999人 |
15.5% |
100~299人 |
19.8% |
30~ 99人 |
13.9% |
5~ 29人 |
11.4% |
計 |
13.9% |
出典:e-Stat「令和3年雇用動向調査」より作成
1,000人以上の大企業および100人以下の中小企業の離職率は低い傾向にあり、100〜999人規模の企業の離職率は高い傾向にあります。
偏っているように見えるこの傾向の理由として、
「新卒採用や若手社員の採用を、積極的に行っているか?」
というポイントが考えられます。
以下は年齢階級別の入職率・離職率です。10代〜20代の離職率は高い傾向にあるとわかります。
【年齢階級別 入職率・離職率】※点線が離職率
全体動向と自社を比較するときには、若年層の採用を行っているかどうかも、加味して評価しましょう。
年齢の若い社員の採用を多く行っている場合、離職率が高くなるのは、ある程度は避けられないものと考えられます。
1-4. 業界別の離職率
もうひとつ、業界別の離職率についても、見ておきましょう。
【産業別入職率・離職率】※緑色が離職率
離職率が、全体平均である13.9%を超えている業界をピックアップすると、以下のとおりです。
【離職率が高い業界】
業界 |
離職率 |
---|---|
宿泊業、飲食サービス業 |
25.6% |
生活関連サービス業、娯楽業 |
22.3% |
サービス業(他に分類されないもの) |
18.7% |
教育、学習支援業 |
15.4% |
逆に、離職率が低い業界(10%以下)をピックアップすると、以下のとおりです。
【離職率が低い業界】
業界 |
離職率 |
---|---|
複合サービス事業 |
8.1% |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
8.7% |
情報通信業 |
9.1% |
金融業、保険業 |
9.3% |
建設業 |
9.3% |
製造業 |
9.7% |
自社の業界の離職率を確認して、自社の離職率との差を確認しておきましょう。
自社がどの分類に該当するかわからない場合は、日本標準産業分類(平成 25 年 10 月改定)にてご確認ください。
2. 離職率が高い原因
自社の離職率が高い状況にあると判明したら、次に行うべきステップは、その原因を探ることです。
データを紐解きながら、離職率が高い原因を見ていきましょう。
2-1. 転職者が前職をやめた理由ランキング
厚生労働省「令和3年雇用動向調査」によれば、転職者が前職を辞めた理由別割合は、以下のとおりとなっています。
【転職入職者が前職を辞めた理由別割合】
上表のうち[個人的理由]を、割合が多い順にピックアップしてランキングすると、以下のとおりとなります。
【男性の離職理由】
業界 |
離職率 |
---|---|
職場の人間関係が好ましくなかった |
8.1% |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった |
8.0% |
給料等収入が少なかった |
7.7% |
会社の将来が不安だった |
6.3% |
仕事の内容に興味を持てなかった |
5.0% |
能力・個性・資格を活かせなかった |
4.3% |
【女性の離職理由】
業界 |
離職率 |
---|---|
労働時間、休日等の労働条件が悪かった |
10.1% |
職場の人間関係が好ましくなかった |
9.6% |
給料等収入が少なかった |
7.1% |
能力・個性・資格を活かせなかった |
4.8% |
会社の将来が不安だった |
4.5% |
仕事の内容に興味を持てなかった |
3.8% |
男女ともに、離職理由のトップ2は、
- ・職場の人間関係が好ましくなかった
- ・労働時間、休日等の労働条件が悪かった
となっている点が、大きな注目ポイントです。
それぞれ、以下で深掘りしていきましょう。
2-2. 職場の人間関係が離職率を高める
「うちの会社は離職率は高いけれど、円満退社が多い」
という経営者は、意外と多いものです。
しかし、離職者は、本当の離職理由を告げずに辞めることが多いため、真実はわかりません。
統計データから推定すれば、「離職率が高い=職場の人間関係が悪い」という可能性を受け入れ、向き合う必要があります。
職場の人間関係を理由に離職する傾向は、性別や年代によっても異なります。以下で詳細を確認しておきましょう。
【職場の人間関係が理由で離職した人の割合】
年代 |
男 |
女 |
---|---|---|
19歳以下 |
18.1% |
6.7% |
20〜24歳 |
12.8% |
9.3% |
25〜29歳 |
6.3% |
7.9% |
30〜34歳 |
5.3% |
7.8% |
35〜39歳 |
5.8% |
10.0% |
40〜44歳 |
12.2% |
12.3% |
45〜49歳 |
11.2% |
10.9% |
50〜54歳 |
9.5% |
12.6% |
55〜59歳 |
7.6% |
16.2% |
60〜64歳 |
2.8% |
4.8% |
65歳以上 |
5.8% |
1.3% |
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」より作成
上記データからは、以下の属性の従業員は、職場の人間関係をとくに重視していると推測できます。
- ・10代〜20代前半の男性従業員
- ・30代後半〜50代の女性従業員
- ・40代の男性従業員
2-3. 給料より労働条件で辞める人が多い
もうひとつ重要な点は、給料・収入面の条件以上に離職率に影響を与えるのが「労働条件」であることです。
性別・年代による詳細は、以下をご覧ください。
【労働条件が理由で離職した人の割合】
年代 |
男 |
女 |
---|---|---|
19歳以下 |
3.8% |
28.6% |
20〜24歳 |
14.2% |
14.3% |
25〜29歳 |
7.2% |
14.8% |
30〜34歳 |
9.8% |
8.3% |
35〜39歳 |
11.9% |
9.6% |
40〜44歳 |
8.9% |
10.0% |
45〜49歳 |
4.8% |
9.7% |
50〜54歳 |
4.8% |
7.1% |
55〜59歳 |
9.6% |
6.6% |
60〜64歳 |
4.4% |
2.3% |
65歳以上 |
1.8% |
1.4% |
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」より作成
労働条件を重視する傾向は、以下属性に強く見られることがわかります。
- ・20代前半の男性従業員
- ・10代〜20代の女性従業員
2-4. 補足:自社の従業員と類似した属性の動向
以上は、大局観としての離職率が高い原因の分析です。
厚生労働省の同調査を活用すると、自社の従業員に近い属性の動向を、さらに詳しく確認することも可能です。
詳細データは、厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」にて入手できます。
参考までに、以下は先にご紹介した離職理由の割合の表を、加工したものです。
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」より作成
たとえば、以下のような動向が推察できます。
- ・20代後半の男性従業員は、給料等収入が少ないと離職意向が高くなる。女性従業員は40代前半で同理由の離職意向が高まる。
- ・30代後半の男性従業員は、会社の将来への不安が離職理由につながりやすい。
- ・40代前半の男性従業員は、能力・個性・資格が生かせない職場からは離職したいと考える。
自社従業員の属性と照らし合わせて、データを確認してみましょう。
3. 離職率を改善する具体的な解決策(1)人間関係
離職率を改善する打ち手として優先順位が高いのは、離職理由として挙げられることの多い「人間関係」と「労働条件」に関する対策です。
まず、人間関係を改善する施策を3つ、ご紹介します。
- コミュニケーションの最適化
- DEIの推進
- セーフティネットの充実
以下で詳しく見ていきましょう。
3-1. コミュニケーションの最適化
1つめは「コミュニケーションの最適化」です。
社内コミュニケーションの促進や改善は、職場の人間関係を改善するための基本的なアプローチです。
ただし、一口にコミュニケーションといっても、自社が抱える課題に応じて、効果的な施策は大きく異なることに、注意が必要です。
まずは自社の課題の洗い出しを行いましょう。
【課題の例】
・コミュニケーション不足による情報共有の偏り
・経営陣や管理職と従業員の間に生じているあつれき
・部署間のコミュニケーション不足による関係悪化
・意見の対立によるいざこざ・不仲
・一部の従業員の言葉遣いや態度から起こる雰囲気の悪さ
・リモートワークによる対話不足
・過度な個人主義的カルチャー
洗い出した課題に対して、コミュニケーションを最適化するためには、さまざまなツールや手法があります。複数を組み合わせながら、課題解決に最適な施策を組み立てていきます。
【具体的な取り組み例】
・ミーティングの改善
〔例〕朝礼、週1回の定例1on1、ランチミーティング
・コミュニケーションツールの導入
〔例〕社内報ツール、社内SNS、ナレッジ共有ツール、タスク管理ツール
・コミュニケーションを促す空間づくり
〔例〕社員食堂、オープンスペース、フリーアドレス、リラックスルーム
・イベントの開催
〔例〕歓迎会、運動会、社員旅行
・社内サークルや部活動
〔例〕フットサル、ゴルフ、英会話、軽音楽
取り組みの第一歩として、多様な課題に幅広く対応できる手法をひとつ挙げると、「社内報ツール」があります。
【社内報ツールの例】
経営者と従業員との間の意思疎通から部署間・従業員同士まで、組織内のあらゆるコミュニケーションを円滑化する基盤として、社内報は有効です。
詳しくは、「社内報」の記事にて解説しています。
3-2. DEIの推進
2つめは「DEIの推進」です。
DEIとは、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンの頭文字を取った略語です。
- ・Diversity (ダイバーシティ:多様性)
- ・Equity(エクイティ:公平性)
- ・Inclusion(インクルージョン:包括性)
※近年、ダイバシティ&インクルージョン(D&I)にエクイティを加え「DEI」 と表現されることが増えています。
職場で生じる、建設的ではない摩擦や争いは、従業員の精神的な成熟度に起因するケースが多く見られます。
たとえば、未熟な従業員は、意見の対立をきっかけに人間関係を悪化させる傾向があります。
職場全体の精神的な成熟度を向上させる取り組みとして有効なのが、DEIの推進です。
一例として、パナソニック ホールディングスでは、DEIを以下のとおり定義しています。
私たちが目指す「DEI(Diversity, Equity & Inclusion)」とは?
挑戦する一人ひとりが ――
Diversity:互いの個性を受け入れ、尊重し、個性に価値を見つけること
Equity:機会の提供の公平性を追求すること
Inclusion:個性を発揮し、組織として活かしあうこと
まずは経営者がDEIについて学び、経営に取り入れることで、従業員にもDEIの概念が浸透し、社内の人間関係が改善されていきます。
より詳しい情報をリサーチするために、おすすめの記事を2つ、ご紹介します。
- ・Web労政時報「第2回 DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)を推進する心理的安全性」:DEIとは何か、非常にわかりやすく図解入りで解説されています。
- ・Amazon「ダイバーシティだけじゃない。Amazonが推進するDEIとは?」:現場でのリアルな実践例として参考になります。社内で読書会を行った書籍なども具体的に紹介されています。
3-3. セーフティネットの充実
3つめは「セーフティネットの充実」です。
職場の人間関係の改善に努めると同時に、従業員が人間関係でつまずきを経験した場合のサポート体制を整えておくことが必要です。
支援の仕組みがあれば、離職を決断する前に、問題を解決できる可能性が高まります。
【セーフティネットの例】
・メンター制度の導入:先輩社員(メンター)が後輩社員(メンティー)の相談役として付き、人間関係やメンタル面のサポートを行う。
・定期的な面談:上司または人事担当者との個別面談を定期的に行い、ヒアリングや様子の観察を行う。
・カウンセリングサービスの提供:従業員が第三者の専門家に悩みを相談したり、アドバイスを受けたりできるようにする(例:cotree、マイシェルパ)。
・匿名ホットラインの設置:ハラスメント被害などを完全匿名で通報できる(例:完全匿名ヘルプライン)。
このようなセーフティネットを整えることで、「誰にも相談できずにひとりで悩んで辞めてしまう」という離職者を減らしていきましょう。
4. 離職率を改善する具体的な解決策(2)労働条件
続いてご紹介するのは「労働条件」を改善する施策です。
- 働き方改革の実行
- 業務効率化や自動化の推進
- 物理的に快適な環境づくり
以下で詳しく見ていきましょう。
4-1. 働き方改革の実行
1つめは「働き方改革の実行」です。
【働き方改革とは?】
「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。
日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産向上や、就業機会の拡大、意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが不可欠です。
働く方の置かれた事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。
出典:働き方改革取組事例集
具体的には、長時間労働是正、多様で柔軟な働き方、ワークライフバランス支援などが含まれます。
【働き方改革の取り組み例】
・リモートワークの導入
・副業・兼業の解禁
・子育て支援制度の充実
・残業時間の削減
・有給休暇の取得促進
・フレックスタイム制度の導入
・ジョブローテーション制度の導入
・メンタルヘルス対策の強化
・ワークライフバランス支援制度の導入
働き方改革に関しては、すでに多くの企業が取り組みを進めており、成功事例やノウハウのデータを豊富に入手できます。
たとえば、以下資料では78社の事例が、わかりやすくまとめられています。
その他のデータは、厚生労働省の「働き方改革特設サイト」をご参照ください。
4-2. 業務効率化や自動化の推進
2つめは「業務効率化や自動化の推進」です。
非合理的なプロセスでの業務を強いることは、労働条件の悪化につながります。効率化や自動化を推進し、従業員が感じるストレスを軽減しましょう。
【具体的な取り組み例】
・業務プロセスの見直し:現状の業務プロセスを可視化したうえで問題点を洗い出し改善する。
・自動化ツールの導入:デジタルテクノロジーを活用して、重複作業や単純作業を自動化する。
・ワークフローの構築:誰が何を行うかワークフローを構築し、業務全体の合理化を図る。
・業務マニュアルの整備:新入社員や異動社員にとってもわかりやすい手順書を整える。
・社内システムの最新化:古い機能のまま使い続けられているシステムは投資して最新にアップデートする。
近年では、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった最新の技術をいち早く導入することで、市場での優位性や競争力を高めるチャンスともいえます。
このトピックについて、より深めたい場合は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」のキーワードで調査を進めるとよいでしょう。
DXとは、デジタル技術を使って、ビジネスモデルや顧客体験(CX)の変革を実現させることです。
中小企業庁の「『デジタル・トランスフォーメーション』DXとは何か? IT化とはどこが違うのか? 」 にて、基本事項をキャッチアップできます。
4-3. 物理的に快適な環境づくり
3つめは「物理的に快適な環境づくり」です。
意外に見落としやすい点ですが、物理的なオフィス環境は、従業員の体感的な疲労感やストレスに影響を与えています。
【具体的な取り組みの例】
・腰痛や肩こりを軽減する健康的なオフィスチェア
・集中しやすい温度、湿度、騒音・雑音の対策
・快適な照明環境、デスクライトの提供
・アレルギーや花粉症に対応する空気清浄機の設置
・オフィス内の緑化、観葉植物の設置
・適切なオフィスレイアウト、パーソナルスペースを守る仕切りの設置
従業員がリラックスしながらも、高い集中力で業務に向き合える環境を、整えましょう。
5. 離職率の改善に取り組む際に知っておきたいこと
最後に、離職率の改善に取り組む際に知っておきたいポイントを3つ、お伝えします。
- 助成金・補助金制度を活用する
- 従業員の声を聞く
- 長期的な視点で継続する
5-1. 助成金・補助金制度を活用する
1つめは「助成金・補助金制度を活用する」です。
離職率を改善するためには、さまざまな取り組みが必要です。これには費用がかかりますが、さまざまな助成金・補助金の制度が用意されています。
厚生労働省および所在地の自治体のWebサイトにて、どのような制度があるか、最新情報を確認しましょう。
本記事執筆時点では、厚生労働省が以下の支援を行っています。
たとえば、人材確保等支援助成金の「(a)雇用管理制度助成コース」の概要は、以下のとおりです。
【(a)雇用管理制度助成コース】
雇用管理制度(諸手当等制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度及び短時間正社員制度(保育事業主のみ))の導入・実施を通じて従業員の離職率の低下に取り組む事業主に対して助成します。
【助成金額】
目標達成助成:離職率低下57万円(生産性要件を満たした場合は72万円)
【主な要件】
〇雇用管理制度の導入
〇離職率目標達成 等
<活用事例:教育・研修制度を導入し、従業員が定着>
従業員の職場への定着状況に問題があったため、社員の段階に応じた階層別の教育・研修制度を導入することによって事業所の離職率を低下させ、助成金を利用した。
5-2. 従業員の声を聞く
2つめは「従業員の声を聞く」です。
離職率を改善するためには、当事者である従業員の話に耳を傾けることが欠かせません。
たとえば、以下のような取り組みが挙げられます。
【具体的な取り組み例】
・定期的な従業員アンケートの実施
・1on1ミーティングでのヒアリング
・会社代表(経営者)とのディスカッションの開催
・匿名でのフィードバックボックスの設置
経営者自身や会社として、改善すべきところは真摯に受け止め、アクションに移していく姿勢こそ、離職の抑止力となります。
5-3. 長期的な視点で継続する
3つめは「長期的な視点で継続する」です。
離職率の改善は、一時的な取り組みではなく、継続していく必要があります。
1年・3年・5年といった長期的な目標を設定し、離職率のモニタリングを継続しましょう。
離職率が改善した場合・悪化した場合、どちらの場合でも、「その理由は何か?」を深く考えて明文化し、記録していくことが役立ちます。
さらに、社会情勢や従業員構成の変化に伴い、離職率の改善策もその適切性が変わることがあります。定期的な見直しとブラッシュアップによって、高い効果を維持できるよう努めましょう。
6. まとめ
本記事では「離職率」をテーマに解説しました。離職率を改善する解決策をまとめておきましょう。
(1)人間関係
- コミュニケーションの最適化
- DEIの推進
- セーフティネットの充実
(2)労働条件
- 働き方改革の実行
- 業務効率化や自動化の推進
- 物理的に快適な環境づくり
離職率の改善に取り組む際には、以下のポイントを押さえてください。
- 助成金・補助金制度を活用する
- 従業員の声を聞く
- 長期的な視点で継続する
まずは「人間関係」と「労働条件」にフォーカスし、要所を押さえて、取り組みを進めていただければと思います。