「心理的安全性を作るにはどうすれば良いのだろう?」
「自発的な行動や活発な議論ができるチームにしていくために、心理的安全性の作り方が知りたい。」
そのような思いを抱いているのではありませんか?
この心理的安全性という言葉は、Googleが発表した「チームのパフォーマンスに影響する最も重要な因子は、心理的安全性である」という調査結果をきっかけに、広く知られるようになりました。
あなたも、組織の向上を目指して心理的安全性を作りたい、高めたいとお考えのことと思います。
ただ、具体的に何をすれば良いのか、ということはイマイチ把握できていないのではないでしょうか。
簡潔に結論をお伝えすると、心理的安全性の作り方は以下の通りです。
とはいえ、あなた一人が尽力しても心理的安全性を作ることはできません。
ご覧いただいた通り、心理的安全性は、マネジメント層・組織内の全メンバー・社内制度の三方向からアプローチすることで構築されるものだからです。
あなたがマネジメントする立場なのであれば、ご自身が動くだけでなく、統括するメンバーにも意識的に行動してもらい、さらに会社側にかけ合って制度を見直すことも必要となるのです。
大変なことではありますが、少しでもスムーズに動き出せるように、今回は即実践できるレベル感で心理的安全性の作り方をご紹介します。
本記事の内容 |
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・そもそも心理的安全性を作るとはどういうことか ・心理的安全性を作るためにマネジメント層が取り組むべきこと ・心理的安全性を作るためにメンバー全員で取り組むべきこと ・心理的安全性を作るために制度面で工夫すべきこと ・心理的安全性を作る際に参考になる事例 ・心理的安全性の作り方を間違えないための注意点 |
最後までお読みいただければ、心理的安全性を作るための適切なアクションが、今日から起こせるはずです。
早速読み進めていきましょう。
【目次】
1. そもそも心理的安全性を作るとは
具体的な心理的安全性の作り方を見ていく前に、まずは、
「そもそも心理的安全性を作るとは、どういうことなのか」
ということを押さえておきましょう。
結論から言うと、「心理的安全性を作る」とは、「対人関係におけるリスクへの不安」を解消し、組織のメンバーが安心してリスクを取れる状態を構築することです。
【対人関係におけるリスクとは?】
- 対人関係において発生しうる以下4つのリスクのこと。
- (1)「無知」だと思われるリスク
疑問や不明点を訊くことで、他者から無知だと思われてしまうリスク。 - (2)「無能」だと思われるリスク
ミスや失敗をすることで、他者から無能だと思われてしまうリスク。 - (3)「ネガティブ」だと思われるリスク
批判や異論、懸念を口にすることで、他者からネガティブだと思われてしまうリスク。 - (4)「邪魔」だと思われるリスク
要望を伝えたり、不用意に話しかけることで、他者から邪魔だと思われてしまうリスク。
心理的安全性を作るためには、こうしたリスクへの不安を解消する取り組みが必要なのです。
不安が解消されれば、組織内のメンバーは、活発に意見を述べ、新たな挑戦や提案も自発的に行えるようになります。
つまり、他者の評価を恐れることなく、リスクを取れるようになるのです。
こうした状態を目指して、心理的安全性は作っていきます。
まずは、この目的地をしっかり押さえておきましょう。
2. 心理的安全性の作り方に必要な三方向からのアプローチ
対人関係のリスクへの不安を解消し、心理的安全性を作るためには、以下の三方向からのアプローチが必要です。
- ・マネジメント層
- ・マネジメント層を含む全メンバー
- ・組織内の制度
マネージャーが一人で取り組むだけでは、その他のメンバー同士の間では対人関係リスクへの不安が解消されません。
また、全メンバーの間で不安が解消されたとしても、組織内のルールや制度によって心理的安全性が阻害される場合もあります。
だからこそ、以下のように三方向から対人関係のリスクへの不安解消に努め、心理的安全性を作っていくことが重要なのです。
【三方向からの心理的安全性の作り方】
マネジメント層が取り組むべきこと |
・ささやかな相談・発言にも向き合う ▶︎「無知」「ネガティブ」「邪魔」だと思われるリスクへの不安を解消 ・自分の限界を開示する ▶︎「無知」「無能」だと思われるリスクへの不安を解消 ・小さな成果も褒める ▶︎「無能」だと思われるリスクへの不安を解消 ・裁量を与える ▶︎「無能」だと思われるリスクへの不安を解消 ・会議で発言を引き出す工夫をする ▶︎「ネガティブ」「邪魔」だと思われるリスクへの不安を解消 |
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メンバー全員で取り組むべきこと |
・相手を見て話を聴く ▶︎「無知」「ネガティブ」「邪魔」だと思われるリスクへの不安を解消 ・業務外の雑談をする ▶︎「無知」「ネガティブ」「邪魔」と思われるリスクへの不安を解消 ・お互いを人として尊重し合う ▶︎「無能」だと思われるリスクへの不安を解消 ・感謝は対面で積極的に伝える ▶︎「無能」だと思われるリスクへの不安を解消 |
制度面で工夫すべきこと |
・メンター制度を導入する ▶︎「無知」「ネガティブ」「邪魔」だと思われるリスクへの不安を解消 ・ピアボーナスを取り入れる ▶︎「無能」だと思われるリスクへの不安を解消 ・評価制度を見直す ▶︎「無能」だと思われるリスクへの不安を解消 ・組織で情報を共有する ▶︎「無能」「ネガティブ」「邪魔」と思われるリスクへの不安を解消 |
すぐに取り組めることもたくさんあるので、早速実践してみてくださいね。
詳しくは、続けて説明します。
3. 心理的安全性を作るためにマネジメント層が取り組むべきこと
まずは、心理的安全性を作るために、マネジメント層の方が取り組むべきことについてご紹介します。
3-1. ささやかな相談・発言にも向き合う
マネジメント層の方は、組織内のメンバーのささやかな相談や発言にもしっかりと耳を傾け、向き合うようにしましょう。
これにより、各メンバーの、以下のリスクに対する不安が解消されていきます。
- ・「無知」だと思われるリスク
- ・「ネガティブ」だと思われるリスク
- ・「邪魔」だと思われるリスク
自分の話をきちんと聞いてもらえれば、誰しも
「この人なら、質問をしても無知だなんて思わず答えてくれる。」
「この人なら、会議で異論を唱えてもネガティブに捉えず、意見を吟味してくれる。」
「この人なら、大事な商談への会議をお願いすれば、快く承諾してくれる。」
というような確信を持てるようになるはずです。
そのような状態を目指すために、具体的には次のような行動を意識してください。
【ささやかな相談・発言に向き合うための行動】
話している相手を見る |
どんなに忙しくても、メンバーが話している時は相手に目を向け、真剣に聴いていることを示す。 真剣に聴いてもらえていると分かれば、メンバーは安心して発言できる。 |
---|---|
話を遮らない |
相手が話している最中に、遮らないようにする。話が長くなりやすいメンバーに対しては「1分程度で話してほしい」等とあらかじめ伝える。 最後まで聴くことで、メンバーの発言意欲を削がずに済む。 |
連絡は迅速に返す |
メンバーからの連絡をないがしろにせず、取引先や上司と同じように迅速に返す。 レスポンスが良ければ、メンバーはいつでも相談しやすい。 |
1on1ミーティングを行う |
毎週〜隔週でメンバーとの1対1のミーティングを実施する。 相談の機会が設けられ、会話することに抵抗感も無くなれば、メンバーは限界を迎える前に相談しやすい。 |
心理的安全性が構築され、メンバーが安心して意見を言えるようになるために、こうした行動によって、ささやかな相談・発言に向き合っていきましょう。
いつでも安定して、このような行動を取ることで、メンバーの対人関係への不安は解消されていくはずですよ。
3-2. 自分の限界を開示する
心理的安全性を作るために、マネジメント層の方は自身の限界をメンバーに開示するようにしましょう。
上の立場の人が、知らないことや、過去の失敗をオープンにすることで、メンバーは
「自分だけが知らない・できないわけではないのだ。」
ということを感覚的に認識することができます。
これにより、「無知」「無能」と思われるリスクへの不安が解消されるのです。
無理に自分の至らない点をひけらかす必要もありませんが、以下のように限界があることを隠さずオープンにしてみましょう。
・メンバーの質問の中に知らない、分からない点があったら…
▶︎「ちょっと勉強不足だから、調べてから回答するね。」
・仕事に対して自信が無かったり、不安に思うメンバーが居たら…
▶︎「私も新人の頃はこんな失敗をしてね…〜でもなんとか今までやって来れているよ。」
・メンバーに仕事を任せたい時に…
▶︎「私よりあなたの方がうまく進められると思うから、ぜひお願いしたい。」
このように、自分の限界を隠さないことは、組織内の心理的安全性の構築に有効なのです。
3-3. 小さな成果も褒める
メンバーの小さな成果を褒めることも、心理的安全性を作る方法の一つです。
大口契約を取り付けた等の利益に直結するような成果以外にも、業務の中でメンバーが達成できたこと、期限内に完了できたことなど細かい成果が日々生まれているはずです。
そのような小さな成果も見過ごさず、褒めることを習慣化すれば、メンバーは自分の仕事や能力が認められていると感じることができます。
このことで、「無能」だと思われることへの不安も解消されるのです。
とはいえ、マネジメントを行う立場である以上、指摘を入れなければならない局面も多いですよね。そういう時にこそ、
「この部分はよくできているけど、そっちはもう少し◯◯してみて。」
「◯◯になると更に素晴らしいから、そのためのアイデアを考えてみて。」
という風に、まずはできていることを褒めてから改善や修正を求めるようにしてください。
間違いを指摘しつつも、心理的安全性の構築にも繋がるはずですよ。
3-4. 裁量を与える
心理的安全性を作るためには、組織内のメンバーにある程度の裁量を与えることも重要です。
自分の考えやアイデアに基づいて業務を進められることで、メンバーは、自身が何の力も持たない人間だなどと思わなくなるはずです。
つまり、「無能」だと思われるリスクを取ることに不安が無くなるのです。
逆にいつまでもマネージャーの判断のみでメンバーの行動をコントロールしていれば、
「自分の考えで動いてミスをすれば、無能だと思われるに違いない。」
「この人の判断に背くと、邪魔な部下だと思われてしまうのでは…」
という不安が絶えず、心理的安全性を形成することも難しくなってしまいます。
そのような状況を避けるためにも、過度に統制することなく、メンバーの技量に応じて裁量を与えるようにしてください。
3-5. 会議で発言を引き出す工夫をする
心理的安全性を作るために、会議などでメンバーの発言をしっかりと引き出すようにしましょう。
心理的安全性が高い状態では、放っておいても各メンバーが自発的に意見を述べる傾向にありますが、そうでない場合は、発言することに消極的なメンバーも見受けられるはずです。
そのようなメンバーは、自分の意見が「ネガティブ(否定的)」と捉えられたり、「邪魔(無用)」と思われることを不安に感じている可能性が高いです。
その不安を解消するために、発言を引き出してしっかり聴くことが重要なのです。
例えば、次のように話を振ることで、反論や疑問を含めた率直な意見が出やすくなります。
- ・「プロジェクトを慎重に進めるために懸念点も洗い出したいんだけど、◯◯さんは何か気になる?」
- ・「先方のリアクションを幅広く想定しておきたいから、提案内容への異論を聴きたい。」
- ・「◯◯さんの意見も参考にしたいんだけど、この企画の長所と短所はどういうところだと思う?」
このように、「あなたの意見が必要です」ということが伝わるように発言を促して、少しずつメンバーの不安を解消していきましょう。
4. 心理的安全性を作るためにメンバー全員で取り組むべきこと
続いて、心理的安全性を作るために、組織内のメンバー全員で取り組むべきことについて、詳しくお伝えします。
4-1. 相手を見て話を聴く
心理的安全性を作るために、各メンバーが互いに相手を見て話を聴くようにしましょう。
マネジメント層が取り組むべきこととして、「ささやかな相談・発言にも向き合う」ことをお伝えしましたが、要はそれと同じです。
組織内のメンバー全員が漏れなく取り組める内容としては、まずは相手を見て話を聴くことを徹底していきましょう、ということです。
誰もが、忙しいとパソコンや資料から目を離すことなく相手の話を聞き流しがちになります。
聞き手側にはそのつもりがなくても、話し手側はそう感じてしまうのです。
そのように感じさせる態度を取っていては、
「簡単なことも知らないと思われているのかな…」
「ネガティブな意見だと思っているから聴いてくれないのかな…」
「今、忙しくて邪魔だったのかな…」
と、話しかけることを互いに不安がるような状態を生み出してしまいます。
不安を解消するには、それぞれが相手の話をきちんと聴いていることを示すことが重要です。
そのために誰もが今日から取り組めるのが、相手を見て話を聴くことなのです。
4-2. 業務外の雑談をする
心理的安全性を作るためには、業務外の雑談をすることも大切です。
雑談と聞くと、「ただのおしゃべりが本当に役立つのだろうか?」と疑問に思われるかもしれませんね。
ただ、その「ただのおしゃべり」が「無知・ネガティブ・邪魔」だと思われるリスクへの不安解消に非常に役立つのです。
誰しも、知らない人に話しかけることに、多少の不安を感じるはずです。よく知らない相手は、自分の発言をどう評価するか全く想像がつかないからです。
対して、気心の知れた相手には「この人は話しかけても大丈夫」と安心して声を掛けられますよね。
そういう心理的安全性の高い状態・関係性を築くために、雑談を用いるのです。
とはいえ、「雑談をしていこう!」と言って簡単に雑談をしてくれるわけではありませんから、きっかけを作るために以下のような方法を取り入れてみてください。
チェックイン |
アイスブレイクの手法の一つ。会議やミーティングの冒頭で、テーマを決めて参加者が順番に軽く話をする。 テーマ例:今の気分、近況、興味のあること、住んでいる街について 等 |
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席替え |
定期的に席替えをして、接点の少なかったメンバー同士が話すきっかけを作る。 |
ランチミーティング |
ランチをしながら、雑談を交えつつ軽いミーティングを行う。 |
メンバー間で雑談をして、互いの人間性やバックグラウンドをうかがい知ることで、対人関係のリスクへの不安を解消していきましょう。
4-3. お互いを人として尊重し合う
心理的安全性を作るためには、それぞれのメンバーが、互いに人として尊重し合うことも重要です。
「人として尊重し合う」とは、友人や家族と同じように、お互いを気づかい合うということ。
業務上のドライな関係を築いていると、「請求書の発行役」とか、「売り上げを立てる役」という風に、役割でお互いを認識してしまいがちです。
しかしそれでは、人として尊重し合う視点が損なわれ、
「役割をうまくこなせないと無能だと思われてしまうかも…」
という不安を助長してしまいます。
そのような「無能」だと思われるリスクへの不安を解消するために、相手を役割で見るのは止めて、「人」として尊重するという基本に立ち返りましょう。
そのためには、目の前の相手を、自分にとって大切な存在と捉えて接するように意識してみてください。
4-4. 感謝は対面で積極的に伝える
感謝を対面で積極的に伝えることも、心理的安全性を作るために効果的です。
感謝を伝えられた相手は、自身の行動や発言が助けになったということを把握することができます。
このことが、「無能」だと思われるリスクへの不安解消に繋がるのです。
互いに不安を解消するため、以下のような場合には、積極的に感謝を伝えるようにしましょう。
- ・外出中や休暇中、代わりに対応してもらった
- ・必要な資料を送ってもらった
- ・ミスをカバーしてもらった
- ・プラスアルファの対応をしてもらった
- ・手伝ってもらった
また、対面で伝えることで、事務的な挨拶ではなく、本当に感謝していることが伝わりやすくなります。
そのため、できるだけ対面で、難しくても電話で感謝を伝えることを、組織内のメンバー全員で心懸けてみてください。
5. 心理的安全性を作るために制度面で工夫すべきこと
続いて、心理的安全性を作るために、制度面で工夫すべきことについて詳しくご紹介します。
これまでは、組織を構成するメンバーからのアプローチをご紹介してきましたが、制度を工夫し、環境を整えることで、より強固に心理的安全性を構築することができます。
そのため、ぜひ社内制度についても、一度見直しをしてみてください。
5-1. メンター制度を導入する
メンター制度は、心理的安全性を作るために効果的です。
【メンター制度とは?】
相談役となる相手(メンター)を起用し、メンターが実施する面談を通してメンバーをサポートする制度のこと。
メンターとなる人は、従業員から起用しても、社外のメンター派遣サービスを活用しても良い。ただ、より本音で話せるようにメンバーを評価する立場の人は避けるのが一般的。
メンター制度を導入し、定期的に面談を実施することで、メンバーは自分の考えを広くメンターと共有することになります。
自分の発言をしっかりと聴いてもらえて、否定されることもなく、時に励まされることで、自然と対人関係のリスクへの不安が緩和されていくのです。
メンターとの面談を通して不安が緩和されることで、自分の部署や業務内でも対人関係のリスクを取ることへのハードルが下がり、心理的安全性の構築が進みます。
メンター制度を導入するに当たっては、メンターや、メンター制度についての詳細な理解が必要です。
役立つWebサイトや書籍などを紹介するので、まずはこうした資料に目を通すところから始めてみましょう。
メンター制度への理解を深めるためのお役立ち資料 |
---|
・日本メンター協会(Webサイト) …メンターやメンター制度についての基礎知識・概要がまとまっている他、セミナーの申し込みや教材の購入も可能。 …メンターとなる人に向けた、メンタリング(面談)の解説書。 ・メンター制度って何? 目的やメンターの役割、必要なサポートとは【新任人事向け】(動画) …メンター制度の概要やメンターの選び方などを研修形式で学べる動画。 |
5-2. ピアボーナスを取り入れる
心理的安全性を作るためには、ピアボーナスを取り入れることも効果的です。
【ピアボーナスとは?】
メンバー同士で報酬を贈り合うことができる仕組みのこと。
各メンバーがお互いに評価や感謝を贈りたい相手に、ポイントやメッセージを送信。多くの場合、得られたポイントは、商品・特典と交換できたり、インセンティブとして支払われたりする。
ピアボーナスを取り入れることで、組織内のメンバーは、自分の行動が誰かの役に立ったことを目に見える形で把握できます。
このことで、「無能」だと思われてしまうリスクへの不安が解消されるのです。
ピアボーナスをスムーズに導入するなら、ポイント・メッセージのやり取りや、精算の仕組みが体系的にまとまったツールを活用するのがおすすめです。
その例としては、以下のようなものがあります。
ピアボーナスツールの例 |
---|
…業務中のふとした感謝や称賛を、感情の伝わるステッカーとメッセージで伝えられるツール。特別な感謝の表現として、デジタルギフトを贈り合うこともできる。 …従業員同士がオープンにお互いの良い行動を称賛・シェアできるサービス。贈った人 / もらった人の両方に、さまざまなリワードと交換可能なポイントが届く。 |
この他にも多様なツールがあるので、利用料や仕組みが自社に合っているツールを選んでみてくださいね。
5-3. 評価制度を見直す
心理的安全性を作るために、評価制度を見直すことが必要な場合もあります。
旧来の評価制度が、対人関係のリスクに対する不安を助長してしまうケースもあるからです。
例えば、以下のような制度では、自身の仕事や行動が良い方向に評価されず、無力さを感じるメンバーも出てきます。
- ・ノルマ未達成の場合にペナルティが課せられる
- ・従業員をS、A、B、C…という風に一定の指標でランク付けしている
- ・数字で可視化されない貢献は評価されない
実際は、後輩をフォローしていたり、他の人が気付かなかった重大なミスを修正していたりと、組織に貢献していても、それが評価されなければ、「無能」だと思われることへの不安は大きくなってしまうのです。
心理的安全性を作るなら、そのような評価制度を改善し、メンバーの日々の仕事ぶりを絶対的に評価できるように変えていかなければなりません。
次のような評価手法は、その一例です。
【日々の仕事ぶりを絶対的に評価する手法の例】
ノーレイティング |
業務上の目標設定を日々行い、目標についてマネジメント層との対話を実施、フィードバックを与えることで、その都度評価する手法。 |
---|---|
360度評価 |
上司やマネジメント層だけでなく、部下、同僚、他部署のメンバーなど複数の従業員が各メンバーを評価する手法。 |
コンピテンシー評価 |
高いパフォーマンスを発揮している人に共通した行動特性(コンピテンシー)を基準とした評価手法。 |
現行の評価制度が、心理的安全性を損なうようなものであれば、ぜひこうした評価手法を取り入れてみてください。
5-4. 組織で情報を共有する
組織で情報を共有したり、そのための仕組み・ツールを取り入れたりすることも、心理的安全性を作るために効果的です。
心理的安全性を作るためには、メンバーが互いに人間性やバックグラウンドを知り、
「この人なら、ミスを罵倒したり、意見や要望に対して嫌な顔をしたりしない。」
と安心し合えることが大切ですよね。ここまでの内容で、それはお分かりかと思いますが、実は、同じことが組織とメンバーの間でも言えます。
各メンバーが組織からの評価を恐れず、安心して行動・発言できるようになるためには、会社(組織)がどのような価値観で、何を目指しているのかを共有し、理解してもらうことが非常に重要です。
また、会社側も、各メンバーについて、その人となりを知っておくべきです。
こうした組織とメンバーの相互理解があることで、メンバーは、組織を敵ではなく味方だと思えるようになるのです。
組織とメンバーが互いに理解し合うために、例えば以下のような方法で情報を共有するようにしましょう。
【組織で情報を共有する方法の例】
社内SNSを活用する |
組織のメンバーと、組織の顔とも言える経営陣がSNS上で投稿やメッセージを共有する。 メンバーと組織の相互理解が深まるだけでなく、メンバー同士のコミュニケーションの活性化にも役立つ。 |
---|---|
全社的なイベントを実施する |
慰労会や運動会、新年会などのイベントを通して、組織の理念やクレドを共有・再確認する。経営陣とメンバーの交流のきっかけにもなる。 |
社内報(社内情報誌)を活用する |
組織内での出来事や新たな取り組み、各メンバーの成功談・近況などをコンテンツとして共有することで、相互理解を深める。 |
このように、組織とメンバーの相互理解を促進し、全社的な心理的安全性の構築を目指しましょう。
【社内報を活用するならWORKSTORYがおすすめ!】
社内報テック「WORKSTORY」なら、Web上に社内報を構築できるので、いつでもどこでも閲覧することが可能です。
組織とメンバーの相互理解をスムーズに進めたい場合は、ぜひ以下より詳細をご覧になってみてくださいね。
▶︎未来型 社内報テック「WORKSTORY」を詳しく知る
6. 心理的安全性の作り方の参考になる事例
心理的安全性の作り方を一通りご覧いただいたところで、次に実際の取り組み事例を見てみましょう。
事例を知ることで、心理的安全性の作り方が、より鮮明に理解できるはずですよ。
6-1. 社内報でメンバー同士のコミュニケーションが活性化された事例
不動産事業やIT事業、飲食店の運営と、幅広く事業を展開するある企業では、弊社の提供する社内報テック「WORKSTORY」を導入し、メンバー間でのコミュニケーションの活性化に成功しています。
具体的には、例えば次のような効果が見られました。
- ・自社で運営する飲食店で、良く接客してくれたアルバイトスタッフに、社内報テックのメッセージ機能を使って挨拶と感謝を伝えることができた
- ・社長が自分と同じ趣味を持っていることが分かり、休日に出かけて今後の展望を熱く語り合う機会を持てた
- ・本社と店舗スタッフのコミュニケーションが増えた
社内報を取り入れることで、組織内で情報を共有できるだけでなく、それをきっかけとしたコミュニケーションが活性化されたのです。
心理的安全性を作るために、多方面からアプローチできている好例と言えます。
6-2. 毎週の1on1ミーティングで気軽に相談できる関係性を構築した事例
誰もが知る大手ベンチャー企業においても、心理的安全性を作るための取り組みが行われています。
こちらの企業では、マネージャーとメンバーの間で週に一度の1on1ミーティングを実施することで、気軽に相談できる関係性を築いています。
その具体的な効果は、以下の通りです。
- 部下の立場から見た効果
- ・困ったことがあった時に上司に相談する心理的ハードルが下がる
- ・解決策を提示できない状態でも、業務が大変な状況にあることを相談できる
- 上司の立場から見た効果
- ・大変な状況の時に早めに相談してもらえることで、手遅れになる前に手が打てる
定期的な1on1ミーティングが、部下の心理的安全性を向上させ、気軽に発言や相談をしやすい状態となっているのです。
このような状態は、実はマネジメントする立場にある上司としても、好ましいことが分かりますね。
7. 心理的安全性の作り方を間違えないための注意点
心理的安全性を作るための取り組みは、今日からでも実践していただきたいのですが、その前に気をつけるべき点も知っておきましょう。
というのも、心理的安全性の作り方は、一歩間違えるとマネジメントとして逆効果になることもあるからです。
そこで、やり方を間違えないための注意点を最後にご紹介しておきます。
心理的安全性の作り方を間違えないための注意点 |
---|
・定期的に心理的安全性を測定して状況を把握する ・愚痴に対しては改善案を一緒に考える ・逸脱すべきではない境界を明確にする |
一つずつ説明しますね。
7-1. 定期的に心理的安全性を測定して状況を把握する
心理的安全性は定期的に測定して、組織内の状況や取り組みの効果を正しく把握しましょう。
心理的安全性が構築できているかどうかは、組織内の雰囲気を見るだけでは分からないため、客観的な指標を用いて計測することが欠かせないのです。
そのために役立つのが、心理的安全性の提唱者によって考案された、7つの質問を用いたアンケートです。
以下の表をご覧ください。
【心理的安全性を計測するための質問と回答ごとの点数】
1.チームの中でミスをすると、たいてい非難される |
回答 |
① |
② |
③ |
④ |
⑤ |
⑥ |
⑦ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
|
2.チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える |
回答 |
① |
② |
③ |
④ |
⑤ |
⑥ |
⑦ |
点数 |
7 |
6 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
|
3.チームのメンバーは、自分と異なることを理由に他者を拒絶することがある |
回答 |
① |
② |
③ |
④ |
⑤ |
⑥ |
⑦ |
点数 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
|
4.チームに対してリスクのある行動をしても安全である |
回答 |
① |
② |
③ |
④ |
⑤ |
⑥ |
⑦ |
点数 |
7 |
6 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
|
5.チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい |
回答 |
① |
② |
③ |
④ |
⑤ |
⑥ |
⑦ |
点数 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
|
6.チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない |
回答 |
① |
② |
③ |
④ |
⑤ |
⑥ |
⑦ |
点数 |
7 |
6 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
|
7.チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる |
回答 |
① |
② |
③ |
④ |
⑤ |
⑥ |
⑦ |
点数 |
7 |
6 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
この7つの質問によるアンケートに対して、メンバーに以下の①〜⑦で回答してもらいます。
- ①非常にそう思う
- ②そう思う
- ③ややそう思う
- ④どちらともいえない
- ⑤あまりにそう思わない
- ⑥そう思わない
- ⑦まったくそう思わない
この回答に応じて点数(表を参照)を算出することで、組織内の心理的安全性の状態を数値化することができるのです。
この点数には、◯点以上でOKという明確な基準はありませんが、点数がアップしていくことを目指して、心理的安全性を構築していきましょう。
※アンケートは、本音を引き出すため、匿名で回答してもらってください。
7-2. 愚痴に対しては改善案を一緒に考える
さまざまな取り組みにより、心理的安全性が作られてくると、時にはメンバーから愚痴が出ることもあります。
その際には、共感して終わるのではなく、改善するにはどうすれば良いかを一緒に考えるようにしてください。
愚痴が出るということは、そのメンバーが不服に思っていることがあるはずですよね。それを具体的に引き出して、解消に努めるのです。
愚痴に共感するだけでは、友人同士のおしゃべりの域を出ません。
確かに雑談は重要ですが、愚痴には解決すべき課題が隠れています。それは、組織として解決していくべきことです。
心理的安全性を構築しつつも、組織をより良くするためのマネジメントを行うためには、その点を留意しておかなければなりません。
7-3. 逸脱すべきではない境界を明確にする
心理的安全性が向上すると、組織内のメンバーは自発的に発言・行動するようになるはずです。
それ自体は良い傾向なのですが、行き過ぎると、規範を無視して利益をあげようとしたり、ミスをしたのに反省が見られなくなったりする恐れもあります。
そのような状態を許していれば、心理的安全性が構築できている組織というよりも、いわゆる「ぬるま湯組織」となってしまいます。
そうならないために、事前に逸脱してはならない境界を明確にし、ルールとして周知させるようにしてください。
そして、メンバーがそのルールを逸脱した場合には、きちんと指摘し、改善を求める必要があります。
8. まとめ
心理的安全性の作り方について、お分かりいただけたでしょうか?
最後に今回の内容をまとめておきます。
そもそも「心理的安全性を作る」とは、「対人関係におけるリスクへの不安」を解消し、組織のメンバーが安心してリスクを取れる状態を構築することです。
そのためには、以下の三方向からのアプローチが必要です。
- ・マネジメント層
- ・マネジメント層を含む全メンバー
- ・組織内の制度
具体的には、以下のような取り組みにより、心理的安全性を作っていきます。
マネジメント層が取り組むべきこと |
・ささやかな相談・発言にも向き合う ・自分の限界を開示する ・小さな成果も褒める ・裁量を与える ・会議で発言を引き出す工夫をする |
---|---|
メンバー全員で取り組むべきこと |
・相手を見て話を聴く ・業務外の雑談をする ・お互いを人として尊重し合う ・感謝は対面で積極的に伝える |
制度面で工夫すべきこと |
・メンター制度を導入する ・ピアボーナスを取り入れる ・評価制度を見直す ・組織で情報を共有する |
こういった取り組みを実践するうえでは、以下のことに気をつけて、適切にマネジメントが行えるようにしましょう
心理的安全性の作り方を間違えないための注意点 |
---|
・定期的に心理的安全性を測定して状況を把握する ・愚痴に対しては改善案を一緒に考える ・逸脱すべきではない境界を明確にする |
より良い組織を目指して、ぜひ今日からでも心理的安全性の構築に取り組んでみてくださいね。