エンゲージメント経営とは?効果的な手法と組織づくりの実践ポイント

モチベーション・はたらく環境

「社員が自発的に行動する、自走する組織を作りたい」
「離職率を下げて、人材の定着率を高めたい」

このような課題に対して有効な「エンゲージメント経営」が注目されています。

エンゲージメント経営とは、従業員エンゲージメントを経営的な視点から捉え、従業員エンゲージメントを向上させる取り組みを、戦略的に実践する経営手法です。

従業員エンゲージメントは、“所属する組織や自分の業務に熱意を持ち、自発的に貢献しようとする意欲”を表す概念であり、強い組織に欠かせないものです。

この記事では、エンゲージメント経営とは何か、効果的な手法や組織づくりの実践ポイントを解説します。

一読いただくと、社員のやる気を引き出し、組織の生産性を向上させるために何をすべきか、具体的にイメージできます。エンゲージメント経営をスタートするために、お役立てください。

1.エンゲージメント経営とは?基本の知識

エンゲージメント経営とは?基本の知識

まずは、エンゲージメント経営とは何か、基本的な事項から押さえておきましょう。

1-1.エンゲージメント経営の意味

冒頭でも触れたとおり、エンゲージメント経営とは「従業員エンゲージメントの向上」を経営戦略の視点で実践する手法です。

従業員エンゲージメントとは、従業員が、所属する組織や業務に対する熱意を持ち、自ら積極的に関わろうとする意欲を指します。

従業員エンゲージメントには、以下のような要素が含まれます。

・モチベーション:意欲を持って自発的に行動する
・当事者意識:組織の課題を自分事として捉える
・充実感:職場に対する満足度が高く日々が充実していると感じている
・帰属意識:組織に対する愛着があり貢献したいと思う

より学術的な定義としては、厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」にて、以下のとおり解説されています。

【ワーク・エンゲイジメントの概念について】

ワーク・エンゲイジメントの概念について

「ワーク・エンゲイジメント」は、オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli 教授らが提唱した概念であり、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義される。

出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」p.172

1-2.エンゲージメント経営が注目される理由

エンゲージメント経営が注目される理由は、組織にとって、従業員エンゲージメントは非常に重要な要素であると、広く知られるようになったためです。

たとえば、Harvard Business Reviewで「Employee Engagement(従業員エンゲージメント)」と検索すると、400件以上のコンテンツがヒットします(本記事執筆時点)。

ホットトピックであり続けていることがうかがえますが、そのきっかけのひとつとして挙げられるのが、英国政府の主導で作成された2009年のレポート『Engaging for Success』です。

同レポートで従業員エンゲージメントの取り組みは、
〈職場のパフォーマンスと従業員の幸福が一段と変化し、英国企業にとって大きな利益になる〉
と結論づけられています。

一部を引用しましょう。

春にマンデルソン新国務長官が私たちに会ったとき、景気後退が深刻化する中、私たちは、現在の経済的困難を乗り越え、好転したときに最大限の利益を得て、グローバル競争の激化に対応するための努力の一環として、エンゲージメントのアプローチをより広く取り入れることが、英国の競争力とパフォーマンスにプラスの影響を与えるかどうかを特に検討するよう奨励しました。

私たちの答えは、明確に「イエス」です。この8ヶ月間、私たちは、従業員エンゲージメントによって業績と収益性が向上した企業や組織の例を数多く見てきました。また、自分たちの仕事人生がどのように変わったかを熱心に説明する多くの従業員に会ってきました。

もし、従業員エンゲージメントとその背景にある原則がより広く理解され、優れた事例がより広く共有され、この国の労働力に存在する潜在能力がより十分に発揮されれば、職場のパフォーマンスと従業員の幸福が一段と変化し、英国企業にとって大きな利益になると、私たちは考えています。

出典:Engaging for Success ※日本語訳はDeepLによる

具体的にどのような効果があるのかについては、次の章で見ていきましょう。

2.エンゲージメント経営がもたらす3つの効果

エンゲージメント経営がもたらす3つの効果

エンゲージメント経営が組織にもたらす効果として、3つのポイントがあります。

1. 組織の生産性が向上する
2. 離職率が低下する
3. 企業イメージが向上する

2-1.組織の生産性が向上する

1つめの効果は「組織の生産性が向上する」です。

具体的に、どのようなメカニズムで生産性が向上するのか、リストアップしたものが以下です。

・従業員の仕事に対する意欲が、安定的に高く維持される

・上司が部下のマネジメント(モチベートなど)に費やす労力が削減される

・自ら考えて行動し、組織全体の問題解決能力が向上する

・創造的な新しいアイデアが積極的に提案され、イノベーションが起きる

・成長意欲が高く、自ら学びスキルアップする

・チームワークがよくなり、業務プロセスがスムーズに進む

・従業員同士が協力し合い、個々の能力を超えた相乗効果(シナジー)が生まれる

逆に考えると、生産性が低くなる真因は、従業員エンゲージメントの低さにあるといえます。

「従業員が仕事に対して消極的で、モチベーションが低いために、生産性が低下している」ということです。

表面上の手当てではなく、根本的に生産性の高い組織づくりを進めるのであれば、エンゲージメント経営の視点が欠かせません。

2-2.離職率が低下する

2つめの効果は「離職率が低下する」です。

従業員エンゲージメントは、「この会社で、ずっと働き続けたい」と思う感情と、密接につながっている概念です。

エンゲージメントの高い従業員は、自分が所属する組織に対する愛着や忠誠心が強く、簡単には組織を離れようとしない傾向があります。

エンゲージメントが高い状態では、従業員は仕事に対する熱意ややりがいを感じる一方で、ストレスや不満を感じにくくなります。結果として、離職意向は弱まるのです。

組織にネガティブな出来事が起きた場合でも、エンゲージメントの低い従業員と高い従業員では、思考回路が異なります。

【思考回路の例】

・エンゲージメントの低い従業員:「会社から早く逃げ出して、自分が損失を被らないようにしよう」

・エンゲージメントの高い従業員:「会社が早く困難から抜け出せるように、自分も一緒にがんばろう」

2-3.企業イメージが向上する

3つめの効果は「企業イメージが向上する」です。

エンゲージメント経営によって、企業イメージが向上するメカニズムは、次の2つのポイントがあります。

・従業員から広がる口コミや評判:従業員自身が、SNS・転職サイトのレビュー・取引先との会話・友人との会話などを通じて発信する、自社への評価や自らの体験談が企業イメージに貢献する。

・顧客満足度の向上:顧客と接する従業員の態度や振る舞いから熱意や誠実さが伝わり、顧客の評価が高まって、企業のイメージが向上する。

現代では、SNSやレビューサイトが広く普及し、ブランド価値を高めるためには、評判のマネジメントが欠かせません。

エンゲージメント経営は、自社の評判を高めてブランド価値を高める戦略としても、有効に機能します。

3.エンゲージメント経営に取り組むべき企業とは

エンゲージメント経営に取り組むべき企業とは

エンゲージメント経営は、どのような企業に有効性が高いのでしょうか。取り組むべき企業として、次の3つが挙げられます。

1. 従業員のモチベーションに課題を抱えている企業
2. 離職率が高く人材が定着しにくい企業
3. 生産性が高く自走する組織を目指す企業

以下で詳しく見ていきましょう。

3-1.従業員のモチベーションに課題を抱えている企業

1つめは「従業員のモチベーションに課題を抱えている企業」です。

【具体的な例】

・従業員の会社へのコミットメントが低い
・経営陣と従業員との間に距離があり、従業員に当事者意識がない
・細かく指示をしないと、自発的に動かない従業員が多い

従業員のモチベーションを高めたい場合、多くの経営者は「引き締める」方向で、対応しようとします。

たとえば、必達ノルマを与える、目標未達を厳しくとがめる、といった方向です。

しかしながら、引き締めるアプローチは、大きな効果が見込めないばかりか、逆効果となることもあります。

過剰なプレッシャーは、従業員のストレスや不安を増大させ、生産性を阻害するからです。

厳しく接しなくても、自然と従業員のモチベーションが高まる組織づくりには、エンゲージメント経営が有効です。

3-2.離職率が高く人材が定着しにくい企業

2つめは「離職率が高く人材が定着しにくい企業」です。

【具体的な例】

・従業員の離職が続けて起きている
・新入社員の離職率が高い
・人材育成に投資しても、育つ前に辞めてしまう

離職率が高い原因は、「会社に対する帰属意識や愛着に乏しいから」といえます。

従業員エンゲージメントは、帰属意識や愛着と直結する概念ですから、エンゲージメント経営に取り組むことが、離職率改善に役立ちます。

3-3.生産性が高く自走する組織を目指す企業

3つめは「生産性が高く自走する組織を目指す企業」です。

【具体的な例】

・労働生産性(収益÷従業員数)を高めて、少数精鋭の組織を作りたい
・従業員が自発的にイキイキと働ける職場づくりを目指している
・シナジーを起こしてイノベーションを推進したい

エンゲージメント経営は、従業員の自主性や創造性を高めるため、イノベーションの創出や新しいビジネスチャンスを生み出すうえで、効果的な手法です。

社会的な関心が高まっている、従業員にとっての働きやすさや、ウェルビーイング(満たされたよい状態)にも通じる概念です。

これからの時代を企業が生き抜くうえで、重要な戦略といえます。

4.効果的なエンゲージメント経営を実現する5ステップ

効果的なエンゲージメント経営を実現する5ステップ

エンゲージメント経営に取り組みたいという方へ、一例となる取り組みの流れをご紹介します。

1. 経営陣のエンゲージメント経営へのコミットメント
2. MVVの明確化と共有
3. 社内コミュニケーションの最適化
4. 働き方改革の実践
5. ウェルビーイングへの取り組み

以下で詳しく見ていきましょう。

4-1.経営陣のエンゲージメント経営へのコミットメント

1つめのステップは「経営陣のエンゲージメント経営へのコミットメント」です。

経営トップや役員が、エンゲージメント経営に明確な意志を持って取り組むことを、確認します。

まずは経営陣がロールモデルとなれるよう、研修やワークショップに参加して、エンゲージメント経営への理解を深めましょう。

【研修講座の例】

※上記は具体例の参考として挙げているもので、過去の研修が含まれます。

あるいは、書籍で学ぶのもおすすめです。

【参考:関連書籍】

関連書籍 エンゲージメント経営

柴田彰 『エンゲージメント経営』

4-2.MVVの明確化と共有

2つめのステップは「MVVの明確化と共有」です。

MVVとは、ミッション・ビジョン・バリューのことです。MVVは、エンゲージメント経営の中枢となる最重要ポイントといっても、過言ではありません。

4-2-1.MVVとは?

Harvard Business Reviewの記事を参考に、MVVについてまとめると、以下のとおりとなります。

【MVVとは?】

・ミッション:私たちがともに働くことの核となる目的は何か。なぜ私たちは存在し、何をするのか。

・ビジョン:私たちは何を成し遂げたいのか。私たちがともに歩む旅路の核となるものは何か。

・バリュー:私たちが仲間として、あるいは顧客のために協力し合うには、どのような基本原則が必要なのか。

参考:It’s Time to Take a Fresh Look at Your Company’s Values

たとえば、「1人当たり売上高どんどん増加」50社ランキング(東洋経済オンライン)で第1位となったイーレックス株式会社は、以下のとおり掲げています。

【イーレックスの目指す姿】

ミッション
新たな発想と行動力で、未来を切り拓く

ビジョン(2030)
~持続可能な社会の実現のために~
再生可能エネルギーをコアに 電力新時代の先駆者になる

・バリュー
挑戦とスピード:ベンチャー精神を忘れず、果敢に取り組む
共創:信頼と協力のもと、様々なステークホルダーと共に、価値を生み出す

出典:イーレックス

4-2-2.MVVが重要な理由

MVVがエンゲージメント経営にとって重要な理由として、以下が挙げられます。

【MVVが重要な理由】

1. 会社に唯一無二の人格を与える
従業員が会社に対して愛着や帰属意識を持つためには、その対象となる「個性」が必要です。
MVVは会社の人格を端的に表したものであり、世界にひとつしかない自社の輪郭を浮き彫りにします。

2. 会社の存在意義が明確になる
自社が何のために存在しているのか、根源的な意義が明確になると、従業員は会社に対して「価値」を感じられるようになります。

3. 従業員の行動指針となる
MVVには、組織が目指すベクトルや将来の展望、価値観が明確に示されており、従業員にとっての「行動指針」となります。MVVに沿った判断や行動をすることで、組織全体の一体感が生まれます。

MVVは、多くの企業がコーポレートサイトに掲げていますが、形骸化されていることが少なくありません。

エンゲージメント経営に取り組むタイミングで、あらためて見つめ直しましょう。

「MVVとは何か、いまひとつ理解できていない」という方は、ウェブ電通報の「ミッション・ビジョン・バリューを、穴埋めでつくってない?」がおすすめです。そもそもの概念から、端的に解説されています。

4-2-3.MVVを従業員に“きちんと”共有する

策定したMVVは、従業員に“きちんと”共有することが非常に重要です。

“きちんと”、というのは、企業理念ページに数百字のテキストを掲載して終わり、ではありません。

経営者は、MVVの背景にあるストーリーや思い、現状との関連、自身の考え方の変化などを、いつも従業員に語り続ける必要があります。

とはいえ、経営者のリソースは限られています。合理的にMVVを浸透させる手法として「社内報」がありますので、ぜひ有効的に活用してください。

紙媒体に印刷する社内報ではなく、デジタルで展開する社内報テックがおすすめです。

【社内報テックの例】

社内報テックの例 WORKSTORY

詳しくはこちら

4-3.社内コミュニケーションの最適化

3つめのステップは「社内コミュニケーションの最適化」です。

2つめの「MVVの明確化と共有」までのプロセスは、エンゲージメント経営の「幹」となる部分です。非常に重要ですので、時間や労力を十分にかけて取り組んでください。

そのうえで、ここからご紹介していくのは「枝葉」となる実践プロセスです。

まずは社内コミュニケーションの最適化を図りましょう。

転職者の離職理由として多く挙げられるのが「職場の人間関係が好ましくなかった」 です。

従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員同士が信頼し合い、よい関係を築く社内コミュニケーション施策が欠かせません。

社内コミュニケーションを最適化するプロセスとしてはまず以下を行います。

1. 自社が抱える課題の特定
2. 対策する課題の優先順位づけ
3. 費やせる予算・リソースの確認

そのうえで、さまざまな取り組みの中から、自社に合う施策を選定し実行していきましょう。

【社内コミュニケーション活性化施策の例】

1. 社内報
2. 社内SNS
3. メンター制度
4. 社内サークル・部活動
5. 社内交流イベントの開催
6. 社員食堂・ランチスペース
7. 部署横断プロジェクト

上記詳細は「社内コミュニケーションとは?基本と活性化の取り組み 7つのアイデア」にて解説していますので、ご参照ください。

4-4.働き方改革の実践

4つめのステップは「働き方改革の実践」です。

働き方改革とは、政府が推進する政策であり、多様で柔軟な働き方を選択できるようにする取り組みのことです。

【働き方改革の取り組み例】

・リモートワークの導入
・副業・兼業の解禁
・子育て支援制度の充実
・残業時間の削減
・有給休暇の取得促進
・フレックスタイム制度の導入
・ジョブローテーション制度の導入
・メンタルヘルス対策の強化
・ワークライフバランス支援制度の導入

働き方改革は、以下のポイントにおいて、従業員エンゲージメントと密接に関連しています。

・合理的な働き方の促進:ムダなく能率的で、従業員にとって納得感のある働き方が推進される

・過剰な負荷やストレスの軽減:負荷やストレスが軽減されることで、熱意や意欲を持つ心身の余裕が生まれる

・企業と従業員の関係性向上:従業員が会社から大切にされていると実感するきっかけとなり、信頼や愛着が高まる

働き方改革の実践については、多くのナレッジやノウハウが厚生労働省の「働き方改革特設サイト」で共有されています。情報収集しながら、取り組みを進めましょう。

4-5.ウェルビーイングへの取り組み

5つめのステップは「ウェルビーイングへの取り組み」です。

ウェルビーイング(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態を指す概念です。“充実した幸せな状態であること”を指します。

WHOが取り組みを進めている概念ですが(参考:ウェルビーイング社会への道筋を憲章化(公益社団法人 日本WHO協会))、経営方針に取り入れる企業が増えています。

以下は財務省の広報誌からの引用です。

また経済においても、さまざまな企業がウェルビーイングを会社の経営方針の中核にすえはじめている。

たとえばトヨタは2020年、会社の新理念を「幸せの量産」とすることを発表したり、あるいは日経新聞は2021年、ウェルビーイングを会社の核に置く企業連合が参画するイニシアチブを立ち上げ「ウェルビーイング経営」を推進していくと明言している。

出典:財務省「いまなぜウェルビーイングなのか?」

「ウェルビーイング経営」と「エンゲージメント経営」の呼称は異なりますが、従業員が「身体的・精神的・社会的に満たされており、充実している状態」を目指す点では、両者は多くの部分で重複するといえます。

ウェルビーイングの取り組みの最初の一歩としては、「身体的・精神的な健康」を充実させる施策から始めるとよいでしょう。それが、ウェルビーイングの基礎となるためです。

具体的なナレッジやノウハウは「健康経営」の文脈でリサーチすることをおすすめします。

健康経営は、経済産業省が政策として推進している取り組みです。

【健康経営とは?】

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。

出典:経済産業省「健康経営」

以下のハンドブックなど、経済産業省のサイトにナレッジやノウハウが掲載されています。

健康経営ハンドブック 2018

健康経営ハンドブック 2018

詳しくは「健康経営関連資料・データ(METI/経済産業省)」にてご確認ください。

5.エンゲージメント経営を導入した組織づくりの実践ポイント

エンゲージメント経営を導入した組織づくりの実践ポイント

最後に、エンゲージメント経営を導入した組織づくりの実践ポイントを3つ、お伝えします。

1. 従業員エンゲージメントの測定と評価
2. マネジャー陣の意識改革とトレーニング
3. モチベーション向上に寄与する人事評価制度

以下で詳しく見ていきましょう。

5-1.従業員エンゲージメントの測定と評価

1つめは「従業員エンゲージメントの測定と評価」です。

エンゲージメント経営がうまく機能しているのか、定期的な効果測定と評価・レビューを行い、改善を重ねながら継続していきます。

効果測定の具体的な手法として、以下が挙げられます。

・従業員エンゲージメント調査:半期または四半期ごとにアンケート調査を実施して、定量的な測定を行う。

・1on1の面談:従業員の意見に耳を傾け、フィードバックを受け取る。

・導入ツールの活用:導入ツールのエンゲージメント測定機能を活用する。※

※導入ツールの活用について補足すると、たとえば社内報テック『WORKSTORY』の場合、利用度チェックやモチベーションチェックを活用して、エンゲージメントを推定できます。

【モチベーションチェックの例】

モチベーションチェックの例

モチベーションチェックは、従業員のその日の調子を収集する機能。5つの選択肢からその日の気分に1番近いものを選びます。毎日チェックすることで、調子の振れ幅を観測します。

出典:WORKSTORY 機能

エンゲージメント経営の取り組みの中でツールを導入する際には、上記のような機能の有無にも目を向けて、チェックしてみてください。

5-2.マネジャー陣の意識改革とトレーニング

2つめは「マネジャー陣の意識改革とトレーニング」です。

4-1.経営陣のエンゲージメント経営へのコミットメント」にて、経営陣のコミットメントの重要性をお伝えしました。

エンゲージメント経営の取り組みを継続的に成功させていくためには、マネジャー陣のコミットメントの度合いが、重要なカギとなります。

マネジャー陣が経営陣からのメッセージや方針を深く理解し、ほかのメンバーへの適切な働きかけやサポートを実行している組織は、自律的にエンゲージメントが高まっていくためです。

たとえば、以下のような取り組みを通じて、マネジャー陣の意識改革とトレーニングを進めましょう。

・エンゲージメント経営に関する研修やセミナーを受講し、最新の知見や手法を取り入れる

・コーチングやリーダーシップ能力を向上させるワークショップに、定期的に参加する

・経営陣とのコンタクトを密にして、意思疎通に努める

・マネジャー同士での情報交換や相談のための定期ミーティングを開催する

5-3.モチベーション向上に寄与する人事評価制度

3つめは「モチベーション向上に寄与する人事評価制度」です。

本記事では、社内コミュニケーションや働き方改革、ウェルビーイングの取り組みといった観点を中核として、エンゲージメント経営の解説を行いました。

一方で、人事評価・報酬・昇給昇格といった仕組みも、従業員の「働きがい」に影響を与える要素です。

社内コミュニケーションなどの取り組みで効果が得られない場合や、従業員からのフィードバックで人事制度に対する不満が観測されている場合には、人事評価制度の見直しが必要と考えられます。

中小機構の「人事評価制度と賃金制度の改善(経営ハンドブック)」や、関連書籍を参考にしながら、取り組みを進めましょう。

【参考:関連書籍】

関連書籍 人事評価制度のつくり方

山元 浩二『小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』

6.まとめ

本記事では「エンゲージメント経営」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

エンゲージメント経営がもたらす3つの効果として、以下が挙げられます。

1. 組織の生産性が向上する
2. 離職率が低下する
3. 企業イメージが向上する

次の企業は、エンゲージメント経営に取り組むべき企業といえます。

1. 従業員のモチベーションに課題を抱えている企業
2. 離職率が高く人材が定着しにくい企業
3. 生産性が高く自走する組織を目指す企業

効果的なエンゲージメント経営を実現する流れを5つのステップでご紹介しました。

1. 経営陣のエンゲージメント経営へのコミットメント
2. MVVの明確化と共有
3. 社内コミュニケーションの最適化
4. 働き方改革の実践
5. ウェルビーイングへの取り組み

エンゲージメント経営を導入した組織づくりの実践ポイントは、以下のとおりです。

1. 従業員エンゲージメントの測定と評価
2. マネジャー陣の意識改革とトレーニング
3. モチベーション向上に寄与する人事評価制度

エンゲージメント経営は、企業にとっても従業員にとってもウェルビーイング(充実していて幸せな状態)を実現する、建設的な手法です。さっそく、自社での取り組みを進めていただければと思います。