新卒研修は、今後企業で戦力となってもらうため、採用した学生たちに意識を高めスキルアップを目指す目的で組み立てる必要があります。
とは言っても、新卒のモチベーションを高めるにはどんなプログラムを用意するべきなのか、よくわからないとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は新卒研修とは何か、どうして行うのか、実際の他社の成功事例や失敗事例まで知っておきたい情報をまとめました。
1)新卒研修とは
2)成功する研修にするために意識する3つのポイント
3)研修で教える内容を決めよう
4)研修の形式を決めよう
4-1)合宿
4-2)職場体験
4-3)セミナータイプ
4-4)レポート提出
4-5)OJT
5)こんな研修にならないように要注意!研修失敗談
6)まとめ
1)新卒研修とは
新卒研修とは、文字通り新卒で入った新入社員に行う研修です。
入社後に学生から社会人になるに向けて、会社組織で必要な知識やビジネスマナーを身に着けてもらうために実施します。
期間は企業によって違いますが、平均は1か月から3か月ほどの時間が多く、1年以上かけて長い間基礎からじっくり研修を重ねる企業も出てきました。
特に入社前に教育するメリットは、大きく次の4つが挙げられます。
- 学生から社会人になるに向けてのマインドチェンジ
- 内定者の仕事へのモチベーションを維持するため
- 同期の入社メンバーの結束感を強める
- 業務に必要な知識とスキルを取得させる
新卒は社会人としての経験がないからこそ、ビジネスマナーを習得させてから、現場に出すことが大切です。
研修の内容は業種や企業によって違いがあり、たとえば電機メーカーなど専門技術が必要な業種では、新入社員が先輩のサポートを受けながら、実際に新技術の開発に携わったり、ものづくりをしたりする研修があります。
最終的には研修最後の発表会で自分の成果を公表するという、場を設けている企業もあり自分でアイデアを出し発表する大きな場を与えることでモチベーションを高め、スキルアップを行っているのです。
ほかにも、エクセルやワードなどの基本的なOAスキル、電話対応などどこの部署でも必要な知識の習得も、現場ですぐに役立つ知識として座学で学習する企業も多いです。
2)成功する研修にするために意識する3つのポイント
研修を成功させるには、どんな点に注意すればいいのでしょうか?
まずは研修を行う目的を明確にすることが大切です。
たとえば、社会人としての最低限のマナーを学ばせる、同期での結束を強くするなど、何のために新卒研修を行うのかを決めましょう。
重視したいポイントを定めることで、無駄がなく効率のいいプログラムを組む足がかりとなります。
目的を決めたら、次の3つを意識してプログラムを考えていきましょう。
①研修の目的を新卒に伝える
まずは研修の目的を新卒に率直に伝えましょう。
そもそも企業が新卒を採用するのは、主に将来の幹部候補を早い段階から育てるためを目的としています。
新卒が戦力化するまでにはたくさんの時間が必要です。
それでも企業が採用を続けるのは、どこの企業にも属していない新卒は自社の空気になじみやすい特性があるからです。
企業に「新卒を採用する目的」のアンケートを実施した結果、このように約4割が『将来の幹部候補生の育成』を目的としているのがわかります。
http://www.leggenda.co.jp/news/press/20130704-01.html
将来の幹部候補生を育てるには、まず新卒研修で企業の理念を理解してもらうことが効果的です。
自社ではこんな点に重点を置いており、新卒はそれに向けて仕事への意識を変えてほしいと話します。
これによって、新卒は自分が何を学ぶべきか、プログラムを受けたことでどんなスキルアップが見込めるのか、ある程度のビジョンを描けるのです。
②難易度を新卒に合わせる
新卒は社会人としての経験がありません。
企業で働く人間にとって当たり前であることが、新卒にとっては知らないことであり、常識ではありません。
だからこそ、新卒研修では企業側が当たり前であることを、押し付けすぎないことも重要です。
新卒に合わせた難易度でプログラムを組まないと、研修についていけずに自信を失う新卒も出てしまいます。
まずは新卒が今ある知識のもと、少しずつ企業の当たり前になじんでいけるよう初歩の初歩からプログラムを組むことが大切です。
たとえば、現場では当たり前であるエクセルやワードのスキルは、資格を持っていても実践で役立つ基礎的な部分が養われていないケースも考えられます。
まずは現場の基礎である、報告書などのビジネス文書の作成がスムーズにできるよう、プログラムに組み込むなどの初期のスキルアップを目指すのもおすすめです。
③新卒の意欲を引き出す
この研修を受けたことで、現場に活用できると実感させられるプログラムを作りましょう。
座学だけでなく、現場の雰囲気に近いワークショップなどを取り入れると、より実践的で新卒が活躍できる場が増えます。
ほかにも新卒同士の意識を高め合い、交流できるディスカッションも研修で取り入れたいプログラムです。
座学ばかりでは新卒の集中力が持たず、中だるみを起こしてしまいます。
そんなときにワークショップを取り入れることで、体と頭を働かせ新卒の意欲を低下させず幅広い経験をさせられるのです。
3)研修で教える内容を決めよう
それでは、実際に研修で教える内容を決めていきましょう。
研修中は何をどこまで学ばせるのか、その線引きをしっかり作ることがまず大切です。
たとえばビジネスマナーは入社直後、社会人としての心構えと同時に学んでもらうことが多いです。
その後、企業の歴史や理念などの基本的な知識を勉強したあと、具体的な業務内容を職場体験を交えながら実践を積んでいく流れがおすすめです。
ここでは新卒の研修でよく教えられている、各カリキュラムの特徴をご紹介します。
①ビジネスマナー
〇教える主な内容
自立した社会人として求められる基本的なマナーを身に着けてもらうことを目的としています。
・出勤や退勤時のマナー
・勤務中の行動
・挨拶の仕方
・コミュニケーションマナー
出社や退勤時、勤務中の行動など社会人としてけじめをつけるべき基本姿勢が挙げられます。
社会人として時間やルールは守る、そして他人に聞くだけでなく自分で考え行動できてこそ、社会人であることを説明します。
〇とられることが多い形式と効果を上げるためのポイント
形式はセミナータイプがメインで、人事担当者以外にも外部講師を招いての座学で実施されます。
ビジネスマナーで教える内容は、「それくらい知っている」と感じている新卒も多いです。
そこで、しっかり新しいマナーを身に着けてもらうには、成功イメージを具体化するのがおすすめ。
どうしたら組織でお互い高め合い、成功できるのかそのためにマナーの習得は行動パターンまでも変えることを説明します。
たとえば協力し合えるよう明るい人間になるには、をテーマに日常でどんな行動をすべきか考えさせます。
その結果、相手にどのような敬語を使うべきか、スマートな身のこなしなどを新卒に学ばせ、練習をさせて確実に身に着けさせるのが大切です。
②業務知識
〇教える主な内容
次に企業の業務を実際にこなす上で、新卒が最低限学んでおきたい業務知識もプログラムに取り入れましょう。
業種によって身に着けるべき基礎知識は異なります。
たとえばIT系企業なら、まずはITビジネスの歴史からシステム開発の基本原理など、その事業の歴史から基礎知識を教えましょう。
ほかにも接客業のアパレルであれば、商品のチェックや品質管理など、店舗で接客をする上で最低限覚えておきたい業界ならではのプログラムも組むことをおすすめします。
〇とられることが多い形式と効果を上げるためのポイント
先輩が一から業務内容を教えずとも自身の知識を活かして行動できる人材を養えます。
実際にプログラミング技術を習得させるカリキュラムも用意すれば、プロとしての厳しさを知りつつもWEB技術を高め、新卒の早期戦力へとつなげられるのです。
こちらの業務知識はセミナー形式での学習や、実際に職場体験をさせるスタイルがおすすめです。
新卒に知識としてだけでなくリアルな職場での雰囲気を学んでもらいましょう。
③企業説明
〇教える主な内容
自分が所属する企業はどんなところなのか、改めて新卒にはっきり認識してもらうのが目的です。
・企業の歴史
・理念
・各事業部の事業内容
など
〇とられることが多い形式と効果を上げるためのポイント
このような企業説明は面接や企業説明会の段階でも行っていますが、内定後の研修は自分が改めてその企業の一員となった意識を持ってもらいましょう。
基本的にはセミナータイプでの座学が多く、今一度、企業がたどってきた歴史や理念を知ることで、企業が新卒にどんなことを求めているのか、肌で感じてもらえる効果があります。
また、座学と同時に実際に社内見学を行ってどこにどの部署があるのか、どんな業務をこなしているのか、②の業務知識と合わせて学習してもらうのがおすすめです。
④コンプライアンス
〇教える主な内容
・組織や社会ルールを守る必要性と重要度
・なぜ人はルールを破るのか
・世間の常識とのずれを知る
コンプライアンスとは、社内や社外の規範を守る意識を持たせることや、経営理念に合った行動を心がけることです。
新卒は社会経験が少ないからこそ、認識していない社会や組織のルールがあります。
それを学んでもらい、新卒の不祥事を予防するのが主な目的です。
〇とられることが多い形式と効果を上げるためのポイント
専門の講師を招いてのセミナー形式が一般的です。
このコンプライアンスの意識がしっかりしていないと、たとえば会社の備品を私物化したり、就業中にパソコンで趣味のサイトをチェックしたりとの問題行動を引き起こす恐れがあります。
会社は自分の家ではなく、ほかの人々と集まり事業をする場所であることを新卒に認識してもらいましょう。
具体的には、実際の事件の例としてコンプライアンスを違反した人物の事件を扱った記事を見せ、何がいけないのかどうしてこのようなことを起こしたのか、全員で意見を出し合うミニワークなどを取り入れるのがおすすめです。
単純に社会ルールを学ぶだけでなく、どうしてルールを守る必要があるのか、自分の常識は大丈夫なのかを理解してもらいましょう。
かつて新卒がTwitterなどのSNSに会社の機密情報を掲載し、事件化したこともありました。
このような企業の損失を防ぐためにも、コンプライアンスは新卒の意識を変えるために重要なカリキュラムなのです。
⑤社会人としての心構え
〇教える主な内容
・社会人としての立場の違いを自覚する
・円滑な業務のために、自発的な行動をしてもらう
・仕事へ取り組む姿勢
コンプライアンスと似た部分もありますが、社会人としての基本的な心構えをまずしっかり学んでもらうことも重要です。
学生と社会人という立場の違いを自覚し自発的に業務に取り組むことの重要性を学んでもらいましょう。
〇とられることが多い形式と効果を上げるためのポイント
新卒としての心構えは、研修当初からしっかり学ばせておきたい内容です。
形式は座学でのセミナーのほか、新卒同士の交流を深める合宿も改めて社会人としての意識を高める効果があるプログラムです。
特に近年、ゆとり世代は非常識だとの批判を受け、新卒自身も自分は常識がないのではないか、先輩から疎まれるのではないか、との不安を持って入社している人も多いです。
社会人としての心構えを教えることで、新卒としてどんなことをすべきか、どこを改善すべきなのかを知り、企業に貢献する人間として努力する姿勢を生みます。
報告、連絡、相談などのいわゆる「報連相」も、一般論だけでなく実際の例を挙げてイメージしやすい内容を用意しましょう。
たとえば、新卒が疑問点を放置した結果、取り組んでいたプロジェクトに欠陥が見つかった、前もって上司に相談しておけば未然にミスをなくせた、などその企業に合わせた例を盛り込みましょう。
新卒にも理解してもらいやすく、社会人としての心構えを持つことの重要性を知ってもらえるのです。
4)研修の形式を決めよう
次に、代表的な5つの研修の形式をご紹介します。
研修を取り入れる時期は企業によって異なりますが、まずはセミナータイプとレポート提出は入社前に取り入れるのが効果的です。
その後、新卒同士の交流を深める意味でも、入社後に合宿を行い職業体験で実践を積んでいく流れを意識しましょう。
ここでは、第3章で紹介しました①~⑤のどのタイプにおすすめか、それぞれどんなメリットデメリットと合わせてご紹介します。
〇研修形式でのメリットデメリットの一覧表
研修の主な形式5つの各メリット、デメリットをまとめた一覧表です。
研修ではまずどんな内容をメインに教えたいのかを考えておき、それに見合った形式を検討してみましょう。
一つの研修内容に対して、形式は一つだけに絞る必要はありません。
たとえば、「社会人としての心構え」はセミナーで知識として得てもらうだけでなく、合宿や職場体験など実践的な形式との組み合わせで、先輩や上司の行動を間近で見ることでより深く理解してもらえるでしょう。
メリットデメリットのほか、3章でご紹介したどの研修プログラムとの相性がいいかも記していますので、ぜひご参考になさってください。
メリット | デメリット | 3章のどのタイプにおすすめか | 費用・期間 | |
①合宿 | 社会人として心身ともに鍛えることができる。 仲間意識が生まれる |
厳しすぎる合宿は離脱者が生まれるリスクがある | ④コンプライアンス ⑤社会人としての心構え |
費用:一人5万円~ |
②職業体験 | 現場の空気を感じ、実践的な取り組みができる | 職場の先輩や上司のフォローが欠かせない | ②業務知識 | 費用:一人数千円から 期間:2、3日~ |
③セミナータイプ | 大人数が参加できる | 座学がメインで受け身のみになる | ①ビジネスマナー ②業務知識 ③企業説明 |
費用:数十万円~ 期間:2~3日~数年 |
④レポート提出 | ・学んだ情報を整理し、インプットさせられる ・文書作成能力を高める |
フィードバックがうまくいかないと、ただの感想文になってしまう | ②業務知識 ④コンプライアンス ⑤社会人としての心構え |
レポートのみであれば、特に大きな費用はかからない |
⑤OJT | 上司や先輩も新卒を育てる環境ができる 新卒が職場になじみやすく、やりがいを感じる |
質問しづらい職場環境だと、新卒がスムーズに業務に取り組めない。 担当者以外のまわりのサポートが必須 |
②業務知識 ⑤社会人としての心構え |
期間:半年~1年単位 |
4-1)合宿
新卒メンバーが施設やキャンプ場などで、一定期間合宿をします。
合宿の内容は企業によって違いがあり、期間も一週間からなんと数年単位の長期研修も設けられています。
〇内容
・社会人としての心構え
・コンプライアンス
・グループワークで協調性を高める
・ジョギングや体操、スポーツなど体を動かすプログラム
新卒同士が社会人としての意識を高め、お互い協力し合ってグループワークに挑戦するスタイルが多いです。
ほかにも合宿中に座学をして、業務の基礎知識を学ぶ企業もあります。
〇企業実例
・キャスレーコンサルティング
最先端のIT技術を活かした、WEBシステム開発やITコンサルティングを手掛けている企業です。
合宿中はシステム開発をメインに、2泊3日のさまざまなプログラムが用意されています。
開発はじゃんけんゲームや、トランプのハイ&ローなどで、作成したコードは最終的に発表を行います。
3章でご紹介した、業務知識や社会人としての心構えを中心に学べるような内容になっています。
・ALSOK
http://www.alsok.co.jp/person/tellme/05/
警備保障会社ALSOKの新人研修は、4泊5日にわたって行われます。
人間教育に重きを置いていて、警備の現場では許されない些細なミスや妥協を生まないため、挨拶から時間厳守など社会人としての基本的なマナーからしっかり学んでいきます。
また、専門的な護身術訓練から応急救護など、万が一の事態に備えた業務に携わる内容も研修プログラムに含まれています。
4-2)職場体験
職場体験は実際にオフィスで先輩とともに、業務に取り組んだり、支店に何日か研修生として働いたりして、実戦経験を積んでもらうプログラムです。
〇内容
・基本的な業務知識を学ぶ
・実際のオフィスで業務に取り組み
・専門店への訪問や接客などの職場体験
仕事に関するノウハウを教えてくれるセミナータイプと違って、企業での実習経験が自分のスキルを知り自信にもつながります。
座学では得られない経験ができるため、新卒に実際に肌で現場の空気を感じてもらえるのがメリットです。
デメリットは新卒をサポートする先輩や上司が必要であること。
社会経験のない新卒の仕事をカバーしつつも、業務に支障が出ないために準備を進め、ほかの社員との連携も求められます。
〇企業実例
・仕事旅行
http://shigoto-ryokou.net/case/newemployee
大人の職業体験をコンセプトに作られた仕事体験用ツアーです。
実際の職場に訪問して、仕事術や働くことへの想いをより身近で感じてもらえます。
4人一組でのチームで行うため、内定者同士の交流を深め離脱回避やチームビルティングにも役立ちます。
期間は全2日間で約480,000円の費用が発生します。
・三菱インフォメーションズシステムズ
http://www.mdis.co.jp/recruit/education/2-2.html
三菱では入社後1年にわたって新人研修が行われます。
この中に集合研修では、座学のほかに「ソフトウェア開発プロジェクト研修」を用意していて、新入社員をグループ分けして自分たちだけで、ソフトウェアの設計から試験までを行わせます。
職場の仕事をよりリアルに模擬体験させ、ものづくりの難しさを学び達成感を体得してもらうのが目的です。
4-3)セミナータイプ
セミナータイプは座学を基本に、社内講師の話を聞いたり、外部講師を招いて学んだりするスタイルがあります。
ほかにも新卒同士がグループワークを行ったりするプログラムも取り入れましょう。
〇内容
・ビジネスマナー
・業務知識
・社会人としての心構え
・グループワーク(ゲームやディスカッションなど)
セミナーは講師一人に対して、1度に大勢の受講者に教えることが出来るので、人数効率が良いのがメリット。
ただし参加者が受け身になって終わってしまう場合も多いです。
それを避けるためにもレポートを提出させたり、グループワークで発表させることをお勧めします。
個人の評価につなげられるような仕組みをつくり、参加者のモチベーションを上げられるよう工夫しましょう。
合宿や職場体験と違って、セミナーの強みはじっくりビジネスマナーや、企業の歴史や理念を学べること。
現場の空気を感じることももちろん大切ですが、セミナーを受けることで視野が広がり企業の一員として働く気持ちを再度認識させる効果があります。
〇企業実例
・マイナビ新入社員研修プログラム
マイナビが提供する新人研修プログラムは1日~3日間のコースが用意されています。
2日コース…30,000円
3日コース…55,000円
4日コース…78,000円
・社会人としての心構え
・電話応対や言葉遣い、名刺交換などの基本的なスキル
・コミュニケーションゲームでグループワークを行い協調性を高める
これらのプログラムを学習します。
社内講師だけではむずかしい、より専門的なビジネスマナーも学べる人気のプログラムです。
・茶禅
http://www.chazen-co.jp/seminar/
和の心を学びコミュニケーション力アップを目指す、座学式のセミナーです。
和の文化のマナー研修や、武士道を取り入れたビジネス研修などを行っており、人と人とのつながりの大切さを学ぶことができます。
具体的には千利休の七カ条から学ぶ心得や、豊臣秀吉から学ぶ天下を獲るための仕事術など、とてもユニークで実践的なプログラムがあります。
参加人数は4名から100名まで対応しており、費用は応相談です。
4-4)レポート提出
レポートは研修を受けた後に新卒から提出してもらう書類です。
レポートには何を学んだか、それをどう企業で活かしていくのかを書かせることで、文書のもまとめ方や作成能力を養います。
A4サイズ用紙1枚におさめるボリュームのものが多く、わかりやすい文章とレイアウトを意識させることで、見やすい書類を作ることの重要性も知ってもらえます。
〇内容
内容は自分が受けたカリキュラムの概要、およびそれの感想が基本構成です。
書く内容は次のような項目を中心にしましょう。
・日時
・所属 ○○課など
・受講場所
・受講日時
・講師名
・研修内容(ビジネスマナーや電話応対など)
・研修の感想
日本語の句読点や言葉遣いなど、基本的な文章作成のルールを守らせることも大切です。
将来的なビジネス文書の作成にも役立つように、日本語能力を高める目的も兼ね備えています。
4-5)OJT
OJTとは上司や先輩が、新卒に仕事を与えて、それに必要な知識や技術を指導し習得させる活動です。
正式名称を「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」と言い、研修を修了した後実際の現場に配属された後も、新卒が育つ環境づくりを行います。
〇内容
・新卒専用の「OJT指導員」などの教育係を配置する
・新卒の年間育成計画を立てて、それにともなった業務を与える
まずは指導担当者を決定し、共有する目標を決めます。
たとえば営業部の新卒社員が、新規開拓のため飛び込み営業をスタートするとします。
指導者から単純に飛び込み営業のやり方を説明するだけでなく、実際に体験させることでより必要なスキルを早く身に着けてもらえるのです。
どうすれば話を聞いてもらえるのか、相手に伝わりやすい資料とはどんなものなのかなど、経験から営業スキルを習得していけるのです。
このような経験をサポートするのが指導担当者。
飛び込み営業に必要な資料の作成方法や、商談の一部を新人に任せフォローに回るなど、実践的な経験を積ませつつ、むずかしい業務はサポートするとの流れを用意しておきましょう。
すると、新卒は安心して目標に向かって取り組め、少しずつ難易度の高い業務へもチャレンジしていけるのです。
このOJTを正しく行うには、計画的に長期間新卒を育成する計画を立てることがカギ。
具体的には、任せた仕事内容によって、半年から1年単位での育成目標を立てます。
計画を作ることで上司や先輩たちも、新卒の育成者であるとの自覚を持ち、新卒が職場環境になじみやすく、早期のスキルアップを目指せるのです。
〇企業実例
・ニコン
http://www.nikon.co.jp/recruitment/environment/training.htm
カメラでおなじみのニコンでは、各配属先の職場にてしっかり知識と技術を身に着けてもらうため、専門の「OJT指導員」を配置しています。
配属から1年間は指導員が中心となり新卒への技術やノウハウを教えていきます。
また、OJT指導員そのものの研修を実施していて、新人も上司も常に能力を高められる職場環境が整えられています。
・医療法人生愛会
http://www.seiaikai.jp/shisetunaikenshu.htm
総合リハビリテーションセンターを運営する生愛会では、毎月職員全体のスキルアップのためOJTを行っています。
医療や介護だけのテーマにとらわれず、交通安全や接遇など、幅広いジャンルについて研修し、幅のある教養を身に着けることを目的としています。
OJTは新卒だけでなく指導員側のスキルアップも見込めるプログラムです。
たとえば、メンタルヘルスをテーマにラジオ体操を職人に導入するなど、心身の健康をもたらして職人が働きやすい環境づくりを行っているのです。
変わった研修紹介
・株式会社エールライフの「無人島漂流研修」
http://www.yell-life.jp/training/?id=1489553025-544304
「無人島に漂流してしまった」という設定のもと、限られた材料で4日間生活をします。最終的にはいかだを作り、湖の反対岸をめざしゴールです。
サバイバル環境の中で課題をクリアする必要があるため、チームビルディングについて学ぶことができます。
基本料金150万円+受講生1名10,000円/日
研修期間 :3泊4日 現地集合・解散
・TDK「竹とんぼ研修」
http://journal.rikunabi.com/p/special/training/17854.html
TDKでは1か月かけて竹とんぼ研修を実施しています。
規定の時間以上空を飛ぶ竹とんぼをメンバーで協力し合って作り、品質管理の重要性とものづくりの楽しさを共有するプログラムです。
もちろん、合宿期間は業務に関係する「QA概論」などの基礎知識を学ぶカリキュラムも用意されています。
新入社員3人一組になり、定められた品質基準を満たした竹とんぼを作ることで、お客様が欲しいと思える価値をつけること、利益が出るものを作ることの重要性を理解してもらうのが目的です。
研修期間:約1か月
http://www.tdk.co.jp/csr/report/rep2006/rep06006.pdf
・アンデルセンの2年間の「小麦畑作り」研修
http://www.andersen.co.jp/recruit/
ベーカリーチェーン、アンデルセンでは荒地から2年間かけて、パンの材料である小麦畑を耕す長期合宿を設けています。
住み込みで現地で実施し、パンになるまでの小麦を作ることの大変さを実感してもらい、焼き上げたパン一つひとつを大切にする精神を養うのを目的としています。
研修期間:2年間
http://www.andersen.co.jp/
・株式会社リブトラストの「滝行」
http://www.liv-group.co.jp/recruit/blog/cat2/
不動産投資やマンション経営などを行っている、株式会社リヴトラストではなんと4月1日の入社翌日に滝行を実施しています。
約5メートルほどの高さがある崖から落ちる滝を浴びながら、新卒は自分の目標を声高く叫びます。
過酷な環境を経験することで、改めて社会人として気持ちを新たにし、本人たちがどう感じたか「気づき」を大切にするプログラムです。
http://liv-trust.co.jp/
・自衛隊研修
https://www.toandi.co.jp/companyNews/entry-206.html
自衛隊の10師団では年間100団体、約2,000名が自衛隊の生活体験を行っています。
年々新卒研修に取り入れる企業が増えてきており、規律正しい生活と集団行動を学べます。
たとえば、東亜非破壊検査株式会社では毎年新卒が3日間、小倉駐屯地で体験入隊に挑戦しています。
整列や行進などの基本動作から、体力測定や登山走など厳しいプログラクを経て、組織の一員としての連帯性の大切さを学び、自ら積極的に動ける姿勢づくりを目指します。
基本料金:1人あたり1日1,300円(別途作業服やシーツのクリーニング代)
研修期間:2泊3日~
5)こんな研修にならないように要注意!研修失敗談
研修は企業がよかれと思って組んだプログラムでも、新卒にとって負担だった、バッシングの対象になったりする可能性もあります。
ここでは失敗例をもとに、気をつけたいポイントを見ていきましょう。
・ビジネスマナーを講師に任せっぱなし
ビジネスマナー研修を外部講師にのみ任せた結果、実際の業務のマナーとは異なる内容が教えられていたケースがあります。
たとえば、テレフォンオペレーターの研修は、マナー研修と言っても相手が一般のお客様であるため、対応がまた違ってきます。
実務に合わせたマナーは一般的なビジネスマナーには当てはまらないため、外部講師に任せっぱなしにするのではなく、現場の人間がしっかりカリキュラムの監修をすることが大切です。
・教えるだけのセミナーで新卒のモチベーションがダウン
業務に携わっている社内メンバーを講師とした結果、教え方はただ板書するだけの講義形式で、新卒がやる気をなくしてしまう失敗例もあります。
必要なカリキュラムであるものの、長時間の一方的な座学はどうしても集中力を欠いてしまいます。
教える技術を鍛えるほか、受講者が緊張感を持ってセミナーを受講できる空気づくりも大切です。
そのため、仕事ができる人を講師にするのではなく、教えるスキルがある人を講師に選出するなど、人材の選び方も新卒の心をひきつける上で重要なポイントです。
・目的が不明瞭なカリキュラムをやらされる
たとえばIT系企業で、課題としてJavaを使ってのプログラミングを新卒に出したとします。
しかし、このときただ単純に課題を与え期限を伝えただけだった結果、新卒が目的意識を持てす「やらされ感」が強くなってしまったのです。
義務感だけでやらされる業務は、知識やスキルも身につかないほか課題のやり方も適当になってしまいます。
どうして課題をやるのか、これをこなすことでどんなメリットがあるのが、現場でどう生かせるのか、目的をはっきりと伝えなければ、新卒側は無理にやらされている気持ちになります。
そこで、はっきりその研修をする目的と理由を伝え、また疑問点は仲間同士で解決しあいながら課題に取り組める環境づくりが求められるのです。
・課題の基礎知識がある新卒とない新卒がいた
研修で出した課題に対し、最低限知っておかなければならない知識があったとします。
しかし、学生は出身も違いすべてがその最低限の知識を身に着けているわけではありません。
たとえばウェブサイトの作成を課題とした場合、誰もがHTMLの知識を持っているとは限らないのです。
その知識のばらつきの結果、課題のできにも差が生まれ、モチベーション低下にもつながります。
入社前に最低限覚えておくべき知識を新卒全員に学んでもらえるよう、自宅で学習できるe―ラーニングなどのシステムを導入し、知識のばらつきが起きるのを未然に防ぎましょう。
・研修をしたことによる効果測定をしなかった
研修のカリキュラムをただこなしただけでは、課題をクリアしただけで新卒のスキルアップにはつながりません。
研修で知識を得ていろいろな考え方ができるようになったと思っても、それを実務で行かせなければ戦力にはならないのです。
そこで、研修では明確にいつまで、何をどれくらいできるようになるのかを目標として定めましょう。
定期的に効果測定を実施し、メンバーの知識に差が出てないか、研修効果が出ているか、定期的にテストをしたり職場体験をさせたりして、可視化できる状態を用意しましょう。
6)まとめ
新卒の研修はやりすぎるとリタイアが出てしまう可能性もあります。
だからと言って、当たり障りのないセミナーなどの座学のみでは、新卒もやりがいを見いだせずモチベーションの低下につながってしまうのです。
そこで、座学だけでなく合宿など体を動かすカリキュラムを入れつつも、受講者のレベルに無理なく合わせた内容で進めることが大切です。
また、職場体験では先輩や上司が新卒へのフォローを徹底し、自分が会社に必要とされている実感を持ってもらうのも、研修を成功させる一つのポイントです。
ぜひ、今回ご紹介した研修プログラムを元に、自分の企業に合った内容でカリキュラムを組んでいってみてはいかがでしょうか。