近年、副業への注目が高まっています。
従業員の副業を容認する企業は増えており、副業が広まりつつあります。
実際に厚生労働省は、平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しており、副業の普及促進を図っているのが現状です。
会社員としては、「副業をして大丈夫なの?」と不安な方も多いと思います。
実は、副業を禁止するような法律は存在していません。
つまり、会社の就業規則によって副業が禁止されていた場合でも、法律的な拘束力はないのです。
副業が注目されている理由には、社会的な背景があります。
終身雇用の崩壊や年金への不安などから、少しでも収入を増やし、安心したいという方が増えています。
その結果、副業への関心が高まっており、副業を実践している方が増えているのです。
企業側も捉え方が変わってきており、副業を推奨している企業が増えてきています。
そこで今回は、企業が副業を推奨する理由や会社にとってのメリットなどについて紹介していきます。
1.現代における会社での「副業」とは?
2.会社にとっての「副業」のメリット・デメリット
2-1.「副業」のメリット
2-2.「副業」のデメリット
2-3.「副業」のメリット・デメリットまとめ
3「副業」も1種の働き方として主流になっていく
3-1.推奨している企業の事例
3-2.実際に「副業」している人の事例
4.まとめ
1.現代における会社での「副業」とは?
現代における会社での「副業」について、データと時代背景から紹介していきます。
データと時代背景から、現代における副業の状況となぜ副業が注目されているのかがわかります。
そのため、まずは現代における会社での「副業」について把握しましょう。
<データで紹介>
・副業を推奨している企業の割合
最近、副業が注目されているわけですが、どのくらいの企業が、副業を推奨しているのでしょうか。
株式会社リクルートキャリアが行った調査である『兼業・副業に対する企業の意識調査』(http://ur2.link/MKpm)によると、「兼業・副業を容認・推進している企業は全体の22.9%」となっています。
具体的に言えば、推進している企業は0.3%であり、容認している企業は22.6%です。
このことから、まだまだ推進している企業は少ないことがわかります。
しかし、2割以上と意外と多くの企業が認めているのが現状です。
・副業に興味がある会社員が88%
社員側の副業への関心のデータもあります。
エン・ジャパン株式会社が運営するエン転職による『5,000名以上の正社員に聞く「副業」実態調査-『エン転職』ユーザーアンケート調査結果発表-』(https://corp.en-japan.com/newsrelease/2017/3537.html )では、88%の方が副業に「興味がある」と回答しているのです。
正社員で勤務する20~40代の5,584名からの回答結果であり、いかに会社員側は副業に対して興味を持っているのかがわかります。
ちなみに同調査によると、興味がある方の83%が「収入を得るため」と回答しています。
会社員側としては、収入面でのメリットを重視しているようです。
・どんな副業をしているの?
同調査では、副業経験者に対して、どんな副業をしているのかの質問をしています。
最も多かったのが、「アルバイト(61%)」であり、次いで「アンケートモニター・ポイントサイト(20%)、「ネットオークション・フリマサイト(14%)」となっています。
この他にも、「株式運用・FX・不動産投資」「クラウドソーシング」「アフェリエイト」「ネットショップの運営」などの回答があり、様々な副業が存在しているのです。
特徴としては、ネットを使用したものが多いです。
副業が広まった背景として、ネットの普及も関係していると見ることができます。
<時代背景で紹介>
・終身雇用の崩壊
副業の注目が高まっている理由のひとつが終身雇用の崩壊です。
かつて日本は終身雇用が前提となっていましたが、現在では大企業でのリストラがあり、終身雇用制度は崩壊したと言っても過言ではありません。
終身雇用でない以上、いつまで現在勤めている会社で働けるのかわからず、経済的な不安があります。
そこで副業をすることにより、会社以外からの収入源を確保することで、その不安を解消しようという考えが生まれました。
・残業カットの動き
近年働き方が見直される中、長時間労働の問題から残業カットの動きがありますが、残業がなくなれば当然残業代もなくなります。
残業カットによって体はラクになったかもしれませんが、収入面ではマイナスです。
そこで、減ってしまった残業代分を補うために、副業に注目が集まっているのです。
また、残業カットによって増えた自由な時間を有効活用するために、副業に注目する方も多いのです。
・ネットの普及
ネットの普及も、副業が注目されるようになった理由のひとつです。
なぜなら、ネットが普及したことにより、副業が身近なものになりました。
スマホやPC、タブレットなどでネットを利用することで、手軽にできる副業が増えています。
ネットが普及したことで、自宅に居ながら副業も可能です。
気軽に副業ができる環境が整ったことが、副業が注目されるようになった理由のひとつとなっています。
2.会社にとっての「副業」のメリット・デメリット
会社にとって、社員の副業はマイナスのイメージがあるかもしれません。
しかし、社員が副業することによって得られるメリットもあります。
デメリットだけでなく、メリットについても目を向けるべきです。
そこでここでは、会社にとっての副業のメリット・デメリットを紹介していきます。
2-1.「副業」のメリット
・新たなイノベーションの創造
副業を認めることによって、社員の新たなイノベーションの創造というメリットもあります。
社員が副業をすることによって、多種多様な世界に飛び込むことになります。
そこで身につけた経験や知識は、現在の仕事に活かすことができ、イノベーションの創造が期待できるのです。
また、副業による経験で、社員はスキルアップすることが可能です。
スキルアップすれば、会社の利益につながるため、会社としてはメリットとして捉えることができます。
さらに、副業での経験で得たノウハウを自社で生かすことも期待できます。
自社にとってプラスになるノウハウなら、取り込むことによって、生産性の向上や業績アップにつながるのです。
・スキルのある人材の確保
副業をする人材は、自社以外で得られる経験・知識から、マルチな才能を開花させることが期待できます。マルチな才能を持つ人材を増やすことは、有能な人材を増やすことと同意義です。
その結果、労働力の向上につながります。
また、副業を認めることによって、スキルのある人材が自由に働きやすい環境となります。
スキルのある人材は、様々な場所で能力が発揮できるため、息苦しい環境だと離職してしまうケースもあるでしょう。
そこで、副業を認めて働きやすい環境を作ることで、スキルのある人材の確保につなげることができるのです。
2-2.「副業」のデメリット
・本業への影響
副業をすることで、必然的に労働時間が増加します。
労働時間が長くなることで体調管理が不十分となり、遅刻や集中力の欠如などのリスクがあるのです。
また、副業を重要視するあまり、本業に集中できない、やる気が沸かないといった勤務態度の変化も考えられます。
・情報の漏洩
副業が注目される理由のひとつは、ネットの普及でした。
ネットの普及によって気軽に副業ができる反面、ネットから情報を漏洩してしまうことも考えられます。
例えば、本業と副業で同じパソコンやスマホを利用している場合、本業でのやり取りを副業で誤送信してしまう可能性があります。
会社の情報は重要であり、情報漏洩は防ぎたい問題です。
そのため、副業を認める際には、本業と副業で同じパソコンを使用しないようにするなど、情報漏洩させないためhの対策が必要です。
・信用性の問題
副業を認めることで、会社の信用性を落とすリスクもあります。
例えば、社員が本業によって得た情報を利用した副業をし、それが発覚した場合、取引先や株主からの信用はガタ落ちです。
インサイダー取引は、その最たる例と言えます。
このように、副業によって会社の信用性へのリスクが考えられます。
2-3.「副業」のメリット・デメリットまとめ
副業のメリットとしては、社員のスキルや仕事の幅が広がることです。
本業では経験できないことを経験することができ、知識・ノウハウを得ることができます。
そして、それを本業へと還元させることができれば、会社側としてもメリットとなるのです。
また、デメリット面もいくつか存在しています。
しかし、これらのリスクは副業を認める前から存在するリスクと考えられます。
そのため、できるだけデメリット面での対策を講じながら、本業にプラスになるような副業を推奨していくことで、会社もメリットを得ることができるのです。
本業にプラスになる副業としては、本業と仕事内容が似ているものです。
内容が似ていれば、本業にフィードバックすることができます。
さらに、副業で得た人脈を本業に活かすことができるのです。
逆に、あまりプラスにならない副業とは、無関係のアルバイトやケータイアンケートなどから得られるお小遣い稼ぎなどが挙げられます。本業とリンクせず、ノウハウも溜まらないまま労働時間が増え、消耗するような副業は避けるほうが良いです。
プラスになる副業とは、完全に同じ分野でなくとも、本業とリンクするような副業のことです。
3.「副業」も1種の働き方として主流になっていく
福利厚生は会社にとって重要な要素のひとつです。
従業員の定着率を高めることができ、魅力的な会社にすることができます。
しかも、福利厚生は税金対策としても利用することができるのです。
ただし、節税対策をするためには、様々な条件があります。
福利厚生には様々な項目があり、各項目の条件を満たしていないと節税対策とはなりません。
せっかく導入する福利厚生なら、会社にとってもメリットがあるように、節税対策を施すのがおすすめです。
3-1.推奨している企業の事例
<株式会社エンファクトリー>
(参考:https://manatopi.u-can.co.jp/work/160801_1016.html)
・「専業禁止」を掲げて副業を推奨
株主会社エンファクトリーは、「専業禁止」を掲げて副業を推奨しています。
また、「副業」ではなく、「複業」という言い方をしており、本業になり得るような事業を掛け持つことを進めている会社です。
複業を推奨している理由は、この力を活かすビジネスを展開しており、元々のベースとして「個の自立を支援する」という人材ポリシーがあったのです。
そして、それが発展した形として「専業禁止」を掲げ、複業を推奨するようになっています。
ちなみに、「専業禁止」というのはキャッチコピーであり、絶対に専業が禁止というわけではありません。
・複業によるメリット
複業を推奨したことによるメリットは、社員の経験とのことです。
社員が複業をすることによって、「ビジネスを考える」「お客さんを探す」「商品を作って販売する」「確定申告する」などの経験をすることができます。
その結果、研修費用もなしに社員の成長を促すことができ、経営者目線も身に付けてくれるのです。
複業についてのルールなどはありませんが、半年に一度「en Terminal」という発表会を行っています。
この発表会では、各自の副業状況やどのくらい儲かっているのかなどを発表します。
これによって複業をオープンにすることができ、「複業への覚悟」を決めることができて、助言がもらえるなどのメリットがあるのです。
<メルカリ>
(参考:https://ashitanojinji.jp/category3/2428)
・社員の成長のために副業を推奨
メルカリが副業を推奨している理由は、副業が社員の成長につながるという考え方によるものです。
社内という閉じた世界だけでなく、副業で視野を広げることによって、社員の専門性を高めることを期待しています。
そして、副業によって得た専門性を本業で還元することで、会社にとってプラスになると考えています。
また、メルカリは一人ひとりが自律的に働き、自ら意思決定をするのが前提です。
そのため、副業についても本人の自由にしており、会社の許可も必要ありません。
仮に副業によって本業が疎かになったとしても、フェアな評価基準が設けられているため、システム上の評価が落ちるだけとなっています。
・様々な制度や取り組みを行なっている!
メルカリは副業に限らず、様々な先進的な制度や取り組みを行っています。
実際に、産休・育休期間中の給与を100%保証する制度を作るなど、他の会社ではできないような制度や取り組みを行なっているのです。
これは、メルカリが「やってみよう」の精神を持ち合わせているからです。
メルカリでは、できない理由を挙げるのではなく、できる方法を考えるという特徴があります。
その結果、様々な制度や取り組みにトライすることができるのです。
それは副業の推奨にも表れているのです。
<副業を推奨している企業の特徴>
副業を推奨している企業の特徴として、「個人の力」をパワーアップさせることが、社員と会社どちらにも良いという考え方が根本にある企業が多いように思います。
そのため、副業だけでなく、働きやすい環境を考えており、休暇や育休などの面においても制度を整えていたりします。
結果的に、働きやすい環境を作ることが、社員と会社の双方にとってプラスになると考えている事がよく分かりますね。
3-2.実際に副業している人の事例
<社会人1年目から副業をしている女性の事例>
(参考:https://fledge.jp/article/yuka-fukugyo)
Fiedgeのライターである外山友香さんは、社会人1年目から副業をしている女性です。
彼女は副業として、ライターや編集などを行なっています。
副業を行う理由は、社会人になったからという理由で、やりたいことを諦めたくないからとのことです。
副業では、思い通りに時間を割くことができず、失敗したこともあったとのことです。
これは、副業をしている多くの方が経験したことがあるかもしれません。
そこで彼女は、最初に先方へ「私はこれくらいしか時間を使えません」と伝え、本業とのバランスを保っています。
彼女は、副業をすることで社外での経験を積むことができ、人より早く本業の仕事も極めることができると考えています。
本業の会社としても、副業で彼女が成長してくれるのを望んでいるはずです。
まさに、双方にとってプラスになっている副業の形と言えるでしょう。
<副業で自分の世界を広げ本業にもプラスに>
(参考:https://fullswing.dena.com/archives/466)
DeNAの今西陽介さんも、副業で成功しています。
社内の「副業制度」を利用し、今西さんはファッション系のスタートアップ企業のマーケティング支援の副業をしています。
副業を始めようと思った理由は、「自分の実力を正確に把握したい」「人との新しい出逢い」「転職せずに気軽にできる」の3点からとのことです。
副業をすることで、DeNA以外の方々と仕事をし、フィードバックを受けることで、自分の実力を把握できると考えたのです。
また、転職や企業をせずに、新しい出逢いがあるという点で、副業をスタートさせています。
副業での経験は、本業にもプラスの影響があったとのことです。
今西さんは、DeNAではゲームのマーケティング業務を行なっています。
ファッション系のマーケティングを経験したことによって、お客様の感情の動きなどを考慮した施策などを考えられるようになったとのことです。
副業によって得た経験を本業に活かすことができたという点で、今西さんの副業は企業(DeNA)にとってもプラスと言えます。
今西さんのような事例が増えていけば、DeNAの副業制度は成功でしょう。
<副業OKだったはずなのに…>
(参考:https://dot.asahi.com/aera/2017121300055.html?page=2)
ある男性は、副業OKによって失敗しています。
男性はフリーランスでPRの仕事を請け負っていたのですが、ベンチャー企業に転職しました。
ベンチャー企業側との話し合いの末、転職後も「副業」としてPR会社の仕事も継続することになったのです。
しかし、いざ転職してみると身分があいまいで、副業のための休暇や途中抜けも認められなかったのです。
さらに正社員ではないということで有給休暇もなく、副業のためには親戚が亡くなったことにするしかありませんでした。
しかも最終的に社長が失脚したことで、「退職」に追いやられてしまったのです。
結果的にこの男性は、副業OKというエサを利用され、不本意な扱いを受けてしまったのです。
こうならないためには、副業OKというのは、どこまでOKなのかを確認しておくことが重要となります。
副業OKと謳っていても、まったく副業できるような勤務状況でなければ意味がありません。
そのため、しっかりと副業OKの内容を確認しておくことがポイント重要なのです。
<副業で稼ぐつもりが…>
副業によって、本業にプラスの収入を稼ごうとしたが失敗して、むしろお金を失った事例もあります。
ある男性の勤める会社では、副業がOKになったとのことです。
そこで、ネットから気軽にできる副業を探してみると、手っ取り早く儲ける方法を紹介してくれるというサイトがありました。
そのサイトから連絡を取ってみると、「業務に必要な機器を購入してくれ」「販売に必要な商品を購入してくれ」と言われ数万円を費やして機器や商品を購入したのです。
しかし、その機器や商品が到着すると、連絡が取れなくなり詐欺だったことに気づいたのです。
結果的に、この男性は副業をするつもりが、詐欺に遭って数万円を失ってしまいました。
副業が注目されている今、様々な情報がネットには溢れています。
しかし、その中には偽の情報商材や特定の機器を購入させるためのウソもあったりします。
ネットから情報を手に入れること自体に問題はありませんが、甘い話には裏がある可能性があるため、詐欺などに注意しながら副業をスタートさせるべきです。
4.まとめ
今回は、副業について紹介してきました。
副業を認めたり、推奨したりする企業が増えています。
社員が副業をすることによって、会社側にもメリットがあります。
副業をすることによって、社員が成長してくれることで、企業の業績アップにつながるのです。
また、副業によって得たノウハウや経験を本業に活かすこともできます。
もちろん、副業をする社員も収入面でプラスとなり、副業は会社と社員の双方にとってプラスとなっているのです。
副業は「悪」というのは、古い考え方となってきています。
これからは副業の捉え方を変えて、社員の働きやすい環境を作るようにしましょう。