従業員エンゲージメントとは?本質を理解して優秀な社員の流出を防ぐ

ワークライフバランス

企業の成長に必要なもののひとつに人材の確保が挙げられます。それに関連して意識しておきたいのが、授業員エンゲージメントです。
従業員エンゲージメントとは、企業の理念に社員が共感してくれているのかを示す指標です。企業の事業計画や売上に直結する数値として最近注目されている従業員エンゲージメントは、何もしなくても向上していくものではないため、効果的な対策が必要です。

この記事では、従業員エンゲージメントとは何かを解説した上で、数値を向上させるための調査のポイントや向上の方法について紹介します。

1.従業員エンゲージメントとは
 1-1.従業員エンゲージメントが注目されている理由
 1-2.従業員満足度との違い
2.調査時に押さえておくべき10のポイント
3.従業員エンゲージメントの数値を把握する方法
 3-1.現状調査
 3-2.計画・実行
 3-3.経過観察・調査
 3-4.繰り返す
4.従業員エンゲージメントの調査会社、コンサルティング会社
5.従業員エンゲージメント指数が高い企業
6.まとめ

1.従業員エンゲージメントとは

「従業員エンゲージメント」という言葉が聞き慣れない人も多いので、まずは意味を解説します。
エンゲージメントとは「約束」「契約」といった意味の単語ですから、直訳すると従業員エンゲージメントとは従業員の約束という意味になります。ここから転じて、社員が企業の理念を理解し、共感して、その理念を元に企業と一緒に成功しようとする自発的な意欲の度合いを測るものをさします。

つまり従業員エンゲージメントは、細かい質問項目に対する社員の回答を5段階評価で点数化し、指標化します。
従業員エンゲージメントが上がると、社員は積極的に貢献しようと労働意欲が高まります。こうした社員が増えることで企業全体が活気づき、結果的に企業自体の成長力が上がるのです。

1-1.従業員エンゲージメントが注目されている理由

なぜ従業員エンゲージメントが注目されているかというと、業績への影響がみられるためです。従業員エンゲージメントの指数が低いと企業の業績が伸びにくいとされています。 また、国際的に見ると日本の企業の従業員エンゲージメントは全体的に低く、国際競争力の低下との関連性も指摘されています。

株式会社リンクアンドモチベーションの研究機関・モチベーションエンジニアリング研究所と、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本研究室が行った「エンゲージメントと企業業績」に関する研究があります。

エンゲージメントスコアと営業利益率の数値を用いて、「エンゲージメントが高いと営業利益は高まるのか」を分析したところ、エンゲージメントスコアが1ポイント上昇するごとに当期の営業利益率が0.35%上昇するという結果が出ました。従業員エンゲー ジメントの指数が上がると営業利益率にプラスの影響をもたらすことが確認されたと言えます。
つまり、企業としての利益をアップさせるには、従業員エンゲージメントの向上をめざすことが条件のひとつとして求められているのです。

参考URL:
http://www.lmi.ne.jp/news/pdf/180918_%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9.pdf

1-2.従業員満足度との違い

従業員エンゲージメントの定義を知って、従来からある従業員満足度との違いが分からないという人も多いのではないでしょうか。その違いをここで理解しておきましょう。

従業員エンゲージメントと従業員満足度との違いを一言で言うと、企業への信頼度の高さと業績の向上へのつながりです。
従業員満足度の概念を視覚的に理解させる図
参考URL:https://tunag.jp/ja/contents/hr-column/738/

従業員満足度は、あくまでも「従業員が今の労働環境に満足している」という指標であり、企業に貢献しようという意思には結びついていません。対して従業員エンゲージメントは、企業の理念や体質、事業の方向性など企業全体に対しての共感度の指標であり、労働環境だけに満足しているわけではないため、数値が高いほど企業の業績向上に結びつきます。
従業員エンゲージメントの数値と企業の業績向上の関連性は、先ほどデータでも示した通り明らかです。

2.調査時に押さえておくべき10のポイント

従業員エンゲージメントの数値を調査する前に、従業員エンゲージメントが向上する要因について見ておきましょう。
従業員エンゲージメントの向上要因については、世界中でさまざまな研究が行われており、確立され標準化された理論はいまだに模索中です。参考として、アメリカ人材・組織コンサルティング会社・Human Resources Solution社が提唱している次の10項目を提示しますので、参考にしてください。

①認知
社員である自分が企業の中で存在を認められているか、実績を評価されているか。

②キャリア開発
仕事をすることによって自身の能力やスキルが高まり、やりがいを感じられるか。

③上司のリーダーシップ
直属の上司から認められ成長する機会を与えられているか。

④戦略と使命
日常業務だけでなく、企業としての戦略と使命に対して自分がどのような役割を担い貢献できるか。

⑤職務内容
興味が持てる、そして自分の強みやスキルなどを生かせる職務内容に携わっているか。

➅経営陣との関係
直属の上司だけでなく、社長や役員などの経営陣の考えを知って企業全体の戦略や使命を理解できる環境にいるか。

⑦コミュニケーション
自由に発言でき、情報共有がスムーズに行われている働きやすい環境にいるか。

⑧同僚への協調
一緒に働く同僚との協調関係が強固で、チームとして効率的に動けるか。

⑨必要な資源入手の容易性
他部署や社外から、日常業務を行うのに必要なツールや情報がすぐ手に入れられる環境か。

⑩組織文化
社会的責任を認識し、セクハラやパワハラなどの行為がなく、プライベートも大切にできる文化が社内にあるか。

表現は異なっているものの、他の研究機関から出されている研究結果もほぼ同じ内容ですから、ほぼ確立されている内容と言って差し支えないでしょう。一気にまとめて達成することは難しいですが、クリアできそうな内容から取り組んでいくことで従業員エンゲージメントを向上させる確率は高くなると言えます。

3.従業員エンゲージメントの数値を把握する方法

企業の業績向上には欠かせない従業員エンゲージメント。この数値を向上させるためには、まず現状を調査する必要があります。現状の従業員エンゲージメントについてアンケート調査を行い、数値化することで、現状が把握できると同時に課題が見えてきます。
その課題に対する改善策を検討し、実行していくというサイクルを繰り返すことで、従業員エンゲージメントを高めていくことができます。

ではそのサイクルを具体的に見ていきましょう。

3-1.現状調査

社員に対して従業員エンゲージメントのアンケート調査を行う際は、従業員エンゲージメントに影響を与えると考えられるすべての要素について質問することが重要です。
把握したいのは部分的というケースは少なくありませんが、初めから質問の項目を絞った結果、質問していない他の項目に改善が必要だと推定される場合に改善策を検討しづらくなってしまいます。アンケート調査はあくまでも包括的であることが大切です。

3-2.計画・実行

改善が必要な部分を見つけたら、優先事項を絞り込み、改善計画を立てます。この時重要なのは、社員に対して計画を明らかにし、いつどのように実行するのかを認識してもらうことです。
社員に対してめざすゴールを明示し、透明性のあるプロセスを見せることで、ゴールに到達可能であることや適切にプロセスが進んでいることを証明できます。

3-3.経過観察・調査

改善計画を実行し終了したら、再度アンケート調査を行って従業員エンゲージメントの数値の変化を見ます。調査の結果、解決していれば次の課題の改善に進みます。
解決していなければ新たな改善計画を立て直し、再度実行します。

3-4.繰り返す

調査→計画→実行→再調査→計画…という一連のサイクルを繰り返します。この間、改善されているかをこまめに調査し続け、計画と実行を繰り返し行うことが重要です。

従業員エンゲージメントの数値を向上させるためには、こうしたこまやかな対応が求められます。しっかりと社員一人一人の状態を見ながら進めたいから自社でやるというなら、現状の調査の段階で見るべき箇所をきちんと押さえておきましょう。

調査から計画立案、実行、結果の分析といった作業には多くの労力と時間がかかります。コストをかけて冷静な分析が欲しいというなら専門業者に依頼しましょう。
その理由については第5章で詳しくご紹介します。

4.従業員エンゲージメントの調査会社、コンサルティング会社

従業員エンゲージメントの調査や結果分析などを外部に依頼する場合は、調査や分析に関する実績が豊富な専門業者に依頼するのがおすすめです。ここからは、調査や分析の実績が豊富な調査会社やコンサルティング会社 を紹介していきましょう。

・モチベーションクラウド(調査会社)
https://www.motivation-cloud.com/?_bdadid=5MDAWN.0000bnvd0&utm_medium=cpc&utm_source=google&utm_campaign=main

調査実績が約3300社という高い信頼性を誇る調査会社です。日本最大の組織データベースを保有しているため、勘や経験ではなくデータに基づいた確実な分析が可能です。分析結果をもとに、実行しやすいシステムを提供することで、調査結果を踏まえた改善計画をしっかり実行できるようアドバイスしてくれます。

・wevox(コンサルティング会社)
https://wevox.io/?gclid=Cj0KCQjwvezZBRDkARIsADKQyPk-C6bX_Ot9qWCAy_MG4Xi3V4PikHwwNgDS36LTjbhy5Am5qp9nYKIaAgdAEALw_wcB

大和証券やLINE、sansanなど名だたる企業が導入している信頼性の高さを誇ります。アンケート調査の配信から課題の特定までをワンストップで提供し、組織の改善をしっかりフォローします。パソコンはもちろん、スマートフォンやタブレットなどさまざまなデバイスから回答できる利便性も人気です。

・TUNAG(調査・コンサルティング会社)
https://tunag.jp/ja/

調査だけでなく結果にもとづいたコンサルティングサービスを提供しています。サービス開始1年半で導入企業が100社を超え、現在も導入企業は増え続けています。社内SNS機能や人事評価連携、精度管理機能など人事担当者の負荷を軽減しながら、課題に合わせた改善策をコンサルティングで具体的に提案します。

・ウイリス・タワーズワトソン(調査・コンサルティング会社)
https://www.towerswatson.com/ja-JP/Services/our-solutions/employee-insights

グローバルな事業展開を行っている企業を対象に、世界20ヵ国以上の拠点に調査部門を設けて、ローカルで丁寧なサポートとコンサルティング、フォローアップを提供するネットワークを誇ります。

5.従業員エンゲージメント指数が高い企業

では最後に、従業員エンゲージメント指数が高い企業を紹介していきましょう。

モチベーションに特化した経営コンサルティング事業を行っているリンクアンドモチベーション社が開催した「Best Motivation Company Awardにおいて、組織のモチベーション指数が高い企業として表彰された企業を中心に紹介します。

従業員エンゲージメント指数が高いのはなぜなのか、具体的にどのような取り組みをしているのかについてもあわせてまとめました。

・LIFULL(旧ネクスト)
LIFULL公式サイトのトップページ
引用:https://lifull.com/brand/
不動産・住宅情報サイトや家具インテリアECサイトなど、複数の事業を運営しているLIFULLは、新規事業提案制度「Switch」を設けることで、社員の意欲向上に成功したことがポイントです。内定者も含めて全社員が新規事業を提案できるという制度で、選考を通過するとアクセラレータからサポートを受けられます。

新卒2年目の社員が提案した新規事業の責任者に抜擢されたり、育児のため時短勤務中の女性社員が優秀賞を獲得したりと、役職や性別・在職歴に関係なく社員が自身の才能やスキルを生かして挑戦できるシステムになっています。

・佐竹食品
佐竹食品公式サイトのトップページ
引用:http://www.satake.cc/
一般向けスーパーや業務用スーパーを経営する佐竹食品。1日も休業できないためシフト制で現場を回さなければならない中で、全社員が企業の理念やビジョンを共有する工夫を行っていることがポイントです。2年に1度全店舗を休みにして全社員が集う「ありがとう総会」は、社員の結束が固まるきっかけとなるイベント。

会社としてめざすべき方向性の再確認や社員一人一人がもつべき志などを共有し、店舗や部門ごとの表彰式が行われた後、食事会や社員のパフォーマンスといった全社員が一丸となって将来のビジョンと楽しい時間を共有します。社員のモチベーションアップを図る目的もあり、実際に業績は右肩上がりです。

・ケーイーシー
株式会社ケーイーシー公式サイトのトップペー
引用:https://www.kec.gr.jp/
奈良県内で学習塾やパソコン教室など総合的な教育サービスを展開しているケーイーシーは、「日本で一番楽しい会社をつくりたい」という企業理念のもと、イベントで仮装姿を披露するなど独特の個性を持った代表者 が強いリーダーシップで会社の方向性を社員と共有しているのがポイントです。
学習アドバイスや自社の事業理念をミニドラマ形式で伝える動画をYouTubeチャンネルで配信するなど、企業理念である「人間大事の教育」を社員としっかり共有しています。

・ユーザベース
株式会社ユーザベース公式サイトのトップペー
引用:https://www.uzabase.com/
企業や業界の分析を行うオンライン情報プラットフォームや経済ニュースプラットフォームを運営しているユーザベース。コアタイムがないスーパーフレックスという勤務体系やリモートワークOKといった自由な働き方が実現できるのがポイントです。全社で共有している価値観「7つのルール」に基づいた社員の体験を紹介する「Year Book」 を毎年年末に発行。社内表彰された社員が中心となって、7つのルールにまつわるエピソードが紹介されており、企業としての一体感を重視した施策を実行しています。

・エイチーム
株式会社エイチーム公式サイトのトップペー
引用:https://www.a-tm.co.jp/
名古屋を拠点としてゲームコンテンツや情報サイト・ECサイトなどの企画開発、運営などを行う総合IT企業のエイチーム。毎月社員の誕生日を祝うイベントを開催する一方で、各事業の売上と利益や目標達成率を発表する全社ミーティングを毎週実施するなど、社員の協調性と独立心をバランスよく管理しています。

他部署の社員同士の風通しがよく、多角的な交流を通して新しい視点で業務に日々臨むことで、社員が経営者視点で業務に向き合う環境づくりを進めているのがポイントです。

6.まとめ

企業の成長には欠かせない指標として認識が広まりつつある従業員エンゲージメント。単に労働環境を整備して「働く場」として社員の満足度を高めるのではなく、企業の理念やビジョンに共感し意欲的に活動する社員を増やすために、企業経営者が常に意識しておきたい指標です。

従業員エンゲージメントの数値を向上させるためにはさまざまな角度からのアプローチが必要なため、一朝一夕に数値を高められるものではありません。しかし長期的な視点で企業の成長を考えた時、優秀な人材を定着させて企業全体の成長力を強化するためには、経営陣と社員とがどれだけ一体化し双方に貢献したいと考えるかが重要だと言えるでしょう。

この記事を参考に、従業員エンゲージメントについて理解し、自社なりに従業員エンゲージメントの数値を高める工夫に取り組んでみてください。