「最近社内に活気がない気がする。社員同士のコミュニケーションも少なくなっている」
「会社への愛着が薄く、ちょっとしたことで退職にいたる社員が増えてきた」
そんな社内の状況が気になりだした方は、「社員のエンゲージメントが低下しているのでは?」と思い当たり、何かしらの手を打ちたいとお考えのことでしょう。
エンゲージメントとは、企業自体や商品やブランドなどに対する消費者の深い関係性のことです。企業内で用いられる場合は、本人の内側から湧き上がる貢献意欲と解釈されています。
そのような本人の内面にアプローチするのは、従来型の「社員研修」や「人事評価」の運用とは性質が異なるため、頭を抱えてしまう方も多いようです。
さらに人事や経営がよかれと思ってエンゲージ向上施策を行っても、社員の心情に寄り添ってない場合は、かえって会社への不信感や不満感を高めてしまうリスクもあります。
エンゲージメントを向上させるためには、必ず考えなければならない4つの構成要素があります。
本記事では、4つの観点で「エンゲージメントが高まりやすい場合」と「エンゲージメントが高まりにくい場合」を取り上げます。
ここまで読めば、エンゲージメントを高めるメカニズムが理解でき、自社が施策を投じるべきエンゲージメントの優先順位が確認できるはずです。
ただし、実際にエンゲージメントの向上施策を行う際は、気をつけるべき観点もあります。
記事の後半では、日本企業の課題や注意点・成功事例を取り上げます。
・エンゲージメントが向上するメリットとは?
・エンゲージメントが高まらない要因とは?
・エンゲージメント向上施策をする際の注意点とは?
・実際にエンゲージメント向上に成功した事例とは?
最後までお読みいただければ、自社にフィットしやすいエンゲージメント向上施策の方向性が見えてくるかと思います。
ぜひ自社の状況や社員の心情を思い浮かべながら、当記事をご一読いただければ幸いです。
【目次】
1.エンゲージメントを高めるための4つの要素
エンゲージメントを高めるためには、やみくもに施策をするのではなく、エンゲージメントを高めるためのメカニズムを理解する必要があります。
今回は4つのエンゲージメントを高める構成要素を紹介します。
・会社エンゲージメント
・職場エンゲージメント
・仕事エンゲージメント
・制度エンゲージメント
もちろん、すべてを等しく高めることが望ましいのですが、各企業の事情によって優先順位が異なることでしょう。だからこそ、まずは自社がどの要素に課題があるかを把握することが重要になります。
また、エンゲージメントを考える際には、高める観点だけでなく、エンゲージメントを高めにくい観点にも留意する必要があります。
したがって、今回はエンゲージメントの向上だけでなく、エンゲージメントを阻害する観点でも解説を進めます。
1-1.会社へのエンゲージメント
会社に対するエンゲージメントとは、社員が会社への発展性への期待や掲げたビジョン・ミッションへの共感度合いのことです。
経営者がビジョンやミッションを重要視し、社員に繰り返し語ることで高めやすいエンゲージメントといえます。
社員が日常的に業務遂行をしている際には、あまり意識しない観点かもしれません。
しかし、仕事でのトラブルや急激な外部環境変化など、いわゆる“何かの事件”があった際、社員個々人のふんばりは会社エンゲージメントに左右されます。
1-1-1.会社エンゲージメントが高まりやすい企業の特徴
経営トップが会社の目指す姿を日常的に語っている企業は、会社エンゲージメントが向上しやすいです。
目先の財務目標だけを語るのではなく「業界でこんなポジションを担いたい」、ひいては「業界全体をこのように改革したい」など、自社が目指すビジョンに言及することがポイントです。
また、経営トップのビジョンが、中間管理職層に浸透・連鎖していることも重要なポイントです。
経営トップの声が、社員全員にまで直接届く企業規模は限られています。むしろ中間管理職層が、会社ビジョンを理解しているかどうかが、社員の会社エンゲージメントに影響を与えます。
1-1-2.会社エンゲージメントが高まりにくい企業の特徴
経営トップがビジョンではなく、直近の財務目標や業績のみを語ると、会社エンゲージメントは低下しやすくなります。
もちろん事業体である以上、業績を上げることは重要です。
しかし社員が聞きたいのは、読めば分かる数値情報だけではなく「なぜその目標なのか」という根拠や「なぜその目標を目指したいのか」という理由や背景情報です。
特にコロナウィルスや円安などの外部環境で否応なく業績悪化している局面では、社員は「この会社に勤め続けて大丈夫だろうか」と考えるものです。
そんな状況で、自社が何を目指すのか、あるいは何だけは譲れないポイントか、などの強烈なメッセージを打ち出さないと、社員の離反を招きかねません。
1-2.職場へのエンゲージメント
職場エンゲージメントとは、一緒に働く同僚や、職場の雰囲気に対するエンゲージメントのことです。
サービス業に代表されるような、チームのシナジーが必要とされる業態では職場エンゲージメントは重要といわれています。
Brown&Lam(2008)やWhitman et al.(2010)の「サービス業に特化したエンゲージメント研究」では、個人よりも組織単位のエンゲージメントの方が、組織成果との相関が強いと立証されています。
1-2-1.職場エンゲージメントが高まりやすい企業の特徴
組織内の風通しが良く、健全なコミュニケーションが起こっている場合は、職場エンゲージメントが向上しやすいでしょう。
リモートワークの状況下においても、職場メンバーへの信頼感があり、ちょっとしたコミュニケーションが取れる環境であれば、所属組織へのコミットメントは高まります。
「心理的安全性(psychological safety)」の言葉に代表されるように、組織の中で自分の考えや気持ちを、誰に対してでも安心して発言できる状態が理想でしょう。
単純なコミュニケーションだけではなく、職場の課題解決についてメンバーで意見を出し合うような、仕事面で結束し合う場を演出することも効果的です。
1-2-2.職場エンゲージメントが高まりにくい企業の特徴
社員個々人が黙々と別の作業に従事して、チームで同じミッションに向かっている感覚がないと、職場エンゲージメントは低下しやすくなります。
ただし、現在職場の雰囲気が悪い場合は、いきなり「みんなで職場の改善について考えてみよう」というチーム全体への投げかけは逆効果になりかねません。
少し手間はかかりますが、改善のためには社員個々人へのヒアリングから始めることが推奨されます。不満を聞いてもらえた時点で、おそらく本人の気持ちも前向きになるはずです。
個々人からのヒアリングをもとに、改めてチーム全体の場で「ここが問題だと考える」や「今後、チームでここだけは一緒に取り組もう」という改善案を提示するようにしましょう。
1-3.仕事へのエンゲージメント
仕事エンゲージメントとは、現在の仕事において社員がどれくらい充足しているのかの観点です。
仕事への適性は人それぞれとなるため、定義が難しいエンゲージメントですが、総じて仕事を進めるプロセスや仕事へのスタンスによって、エンゲージメントの高まりが左右されやすいでしょう。
特に仕事経験が少ない新入社員~若手社員は、学生時代に想像していた仕事と現実の仕事のギャップが生じやすいゾーンといわれています。
1-3-1.仕事エンゲージメントが高まりやすい企業の特徴
仕事エンゲージメントは、仕事そのものよりも「仕事のプロセス・仕事の進め方」に左右されやすいものです。
仕事そのものの適性は、本人が職業を選択している以上、ある程度セルフスクリーニングがなされています。例えば、Holland(1976)の研究によると、サービス業に従事する労働者は、もともと社交的で積極的な人格が多いとされています。
つまり、自ら望んでその仕事に就いている可能性が高いため、よほど不向きな職種に挑戦していない限り、仕事不適応はおきません。
仕事エンゲージメントを考えるにあたり注視したいポイントは、仕事のプロセスやプロセスに社員の声を取り入れているかどうかでしょう。
たとえば「営業職」という職種であったとしても、業務プロセスは各社各様です。
社員の声を聞き入れ、売上目標に到達するため納得感が高いプロセスを構築している会社は、仕事エンゲージメントが高まりやすい傾向にあります。
1-3-2.仕事エンゲージメントが高まりにくい企業の特徴
社員が仕事のプロセスの改善要望をしても、上司や会社が聞き入れない場合は、仕事エンゲージメントが下がりやすいでしょう。
社員は仕事を通じて、会社の風土や今後の働き方などさまざまなものを見ています。
今現在の仕事にはそこそこ満足していたとしても「もっと効率の良いやり方があるのに」や「みんなで知恵を出し合う風土が欲しい」など、「進め方」に関する不満があるとします。
そのような不満に目をつぶり「とにかくこれまでと同じやり方でやれ!」と従来型のプロセスを押し付けると、結果的に社員の仕事エンゲージメントは低下します。
とくに若手層であればあるほど、自分と仕事との適性が分からないため、上司や職場メンバーの仕事の進め方が、仕事エンゲージメントに与える影響が大きくなります。
1-4.制度へのエンゲージメント
制度へのエンゲージメントとは、処遇をはじめとした人事制度や労働条件に関する視点です。
社員である以上、制度・条件は気になるのが当然でしょう。
しかし、処遇や条件面などのスペック条件は、エンゲージメント向上には寄与しにくい“衛生要因”といわれています。これはアメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論の動機づけ・衛生理論」です。
つまり、衛生要因である制度・条件面をどれほどリッチにしたとしても、やる気の源にはならないのです。
従って、制度エンゲージメントのポイントとしては、いかに社員が共感しやすい制度を導入し、いかに社員が納得できる運用ができるかどうかになります。
1-4-1.制度エンゲージメントが高まりやすい企業の特徴
社員は「自分が何に頑張れば評価される(=報酬に反映されるか)」に納得している場合、制度エンゲージメントが高まりやすい傾向があります。
従って、等級‐賃金‐評価制度の中身が開示され、各々の関係性まで分かりやすく社員に説明されている会社は、制度へのエンゲージメントは高まりやすいでしょう。
運用面での工夫も必要です。
同じ制度や条件にもかかわらず、組織によって雰囲気や活気に差が出ることもあります。具体的には、「賃金の決め方や、どうすれば昇格できるのか」など制度の運用プロセスについて透明性を確保する工夫が、マネジメントには求められます。
制度運用について丁寧に説明している組織は、たとえ同じ制度・条件であっても社員の納得が得られやすいのです。
1-4-2.制度エンゲージメントが高まりにくい企業の特徴
注意したいのが、いくら開示されているといっても、そもそも社員からの共感が得られない制度ではエンゲージメントが高まらない可能性があります。
例えば年功序列制度のように「長く働いた人が賃金が高い」制度であれば、若手社員は「目の前の仕事をどう頑張っても、歳を取らない限り報われない」と感じてしまいます。
加えて、制度や条件に対して社員の不満があっても、現場マネジメントが「制度は変えられないからしょうがない」というスタンスでいると、制度エンゲージメントはさらに低下する傾向があります。
社員側も制度は変えにくいと分かっていて不満を表明しているため、不満を無視あるいは蓋をするようなスタンスは、さらなる不信の種になりかねません。
こうなると、僅かでも賃金の良い競合他社へ社員が転職をしてしまう状況にもつながってしまいます。
2.社員エンゲージメントを高めると何が良いのか?
これまで4つの観点でエンゲージメントの中身を紹介してきましたが、具体的に社員のエンゲージメントが上がると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは3つのメリットを紹介します。
・社員の帰属意識が高まり、離職を防止できる
・社員のやる気が高まり、業績の向上が期待できる
・経営ビジョンや理念が浸透し、会社への愛着が生まれる
エンゲージメント向上は「自社が何を狙うのか?」と目的をしっかり設定しないと、頓挫しにくいものです。
具体的なデータをもとにしながら3つのメリットについて解説するので、自社の目的設定の参考にしてください。
1-1.社員の帰属意識が高まり、離職を防止できる
エンゲージメントが高まった状態の社員が多いと、社員の定着力を上げることができます。
企業によるエンゲージメント向上のための取り組みは、組織へ愛着を持ったり、この企業で働く意味を見出したりする社員を増やすための活動です。
新卒採用も中途採用も、どちらも苦労して採用にした人材が組織で活躍する前に離職してしまうのは、企業にとって大きな損失です。その損失を抑えられるので、大きなメリットといえるでしょう。
実際にある調査では、エンゲージメントの高低によって、離職率に差が生じていることも実証されています。
参考データ:「Driving Performance and Retention Through Employee Engagement」CEB社
労働力不足に悩む企業が多い昨今の状況では、社員の離職を防止できることは大きなメリットといえるでしょう。
2-2.社員のやる気が高まり、業績の向上が期待できる
社員エンゲージメントの向上は、企業業績の向上にも無視できない観点です。
ただし、エンゲージメントと業績の間にはさまざまなプロセスがあるため、短期的には実感しにくい観点といえるでしょう。
社員エンゲージメントの重要性が世界的に広まった背景には、社員エンゲージメントの企業業績や生産性向上への寄与が、データで明らかになったこともあります。
ウイリス・タワーズワトソンの調査では、「持続可能なエンゲージメント」のレベルが高い企業は、低いエンゲージメントの企業に比べ、1年後の業績(営業利益率)の伸びが3倍という結果が出ています。
※なお「持続可能なエンゲージメント」とは、ウイリス・タワーズワトソンが提唱した指標で、エンゲージメントを“継続的に高く維持している”という要素です。エンゲージメントが高い状態が継続すればするほど、業績への好影響がより顕著であることが検証されています。
さらに日本でも2018年に株式会社リンクアンドモチベーションと、慶應義塾大学ビジネス・スクール岩本研究室の共同研究により、社員エンゲージメントの向上は、営業利益率並びに労働生産性向上に寄与することが分かりました。
このような調査結果をもとに、企業規模を問わず先見の明のある企業では、社員エンゲージメントを高める活動が加速するようになったのです。
2-3.経営ビジョンや理念が社員に浸透し、会社への愛着が高まる
エンゲージメントの高まりとは、経営ビジョンや理念に共鳴している状態といえます。つまり、「この会社が好き」「この会社の社員でいることが誇らしい」という心情の社員が多いということです。
ビジョンや理念が浸透していない状態では、個々人の社員が自分が良かれと思った言動や判断を取ることとなります。この状態では「組織」ではなく、単なる「人の集合体」といえます。
ビジョンや理念が浸透していれば、社員個人が「この判断はビジョンに照らすとどうなのだろう?」と考えるようになり、結果的にビジョンを実現しやすくなります。
さらにはビジョンや理念が風土として浸透していけば、極端に考えれば、社員の行動を規制する人事評価制度や行動規範も不必要となります。
風土にまでビジョンや理念が昇華すれば、個人が意思決定できるいわゆる「ティール型(進化型)組織」に近い状態といえるでしょう。
3.なぜ日本企業ではエンゲージメントが高まりにくいのか?
エンゲージメントが低くて良いと思う企業は、それほど存在しないと思います。
しかし本腰を入れて取り組めないのは、何かしらの理由があるからです。
自社でエンゲージメントの向上に取り組む際には、日本企業のエンゲージメントをとりまく課題や、エンゲージメントが高まらない独特の背景を理解する必要があります。
ここからは日本企業の3つの課題を紹介します。
・インナーコミュニケーションが未発達だから
・コミュニケーションが点在しているから
・働き方の多様化に対応していないから
自社を点検する観点を持ちながら、記事をお読みいただければ幸いです。
3-1.インナーコミュニケーションが未発達だから
社員へのケアというインナーコミュニケーションの観点は、歴史的・風土的に日本企業には薄いといえます。
インナーコミュニケーションが未発達なことは、「会社が何もしなければ、社員のエンゲージメントは勝手に高まらない」ことにつながります。
歴史を紐解くと、元来日本企業は社員の満足よりも顧客満足に徹する姿勢が強い傾向があります。
顧客の要望に応えたい商人精神が功を奏し、高度経済成長下では日本が誇るモノづくり文化が形成されていきました。
しかしバブル崩壊後、日本企業は競合との顧客獲得争いに晒され、顧客へのサービス合戦が過熱していきました。その結果、一部の業界でサービス残業や超過勤務などが発生し、ついには顧客第一主義が社員を犠牲にする弊害が起こったのです。
そんな日本で急速に社員エンゲージメントが注目されたのは、米国の調査会社ギャラップ社が2017年に実施した社員エンゲージメント調査です。
この調査では、日本企業は「熱意あふれる社員」の割合がわずか6%であり、139ヵ国中132位と最低ランクに近い順位であることがわかりました。
参考:「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査
社員自身の「やりたい」を引き出すエンゲージメントは、多くの日本企業では何も策を投じていなかったからです。
この当時からインナーコミュニケーションを強化する動きが加速しましたが、未だ発展途上といえるでしょう。
3-2.コミュニケーションツールが複数あり、使いこなせていないから
コミュニケーションツールが点在して、なおかつ複数のツールが存在しているのも、エンゲージメントを阻害する要因です。
コロナ禍で複数のコミュニケーションツールを一気に導入してしまい、社員が使いこなせていない状態で放置してしまっている企業も多いのではないでしょうか。
その一因として、日本企業にはインナーコミュニケーションを担う組織・部署を持っている企業は少ないことが挙げられます。
インナーコミュニケーション機能がない弊害で、社員のエンゲージメントの向上に向けて「どのようなツールを」「どのような場面で使う」のようなマネジメントが手薄になってしまうのです。
結果的に、エンゲージメントの向上を狙った際に、社員が使っているコミュニケーションツールがさまざまありすぎて、系統立ったマネジメントを展開仕切れない企業が多いようです。
たかがツールといえど、組織的な働き方を好む日本企業にとってはツールの整備、及びそれらツールを制御する機能は、無視が出来ない観点といえます。
3-3.働き方の多様化に対応しきれていないから
昨今の多様な働き方に対応仕切れていない企業が多いことも、社員エンゲージメントを上げにくい要因となっています。
エンゲージメントは、会社や仕事だけでなく、社員のキャリアプランやライフプランにも影響を与えます。
とかく、リモートワークや副業などがメジャーになりつつある昨今、働き方の多様化に対応仕切れていない日本企業では、エンゲージメントの阻害要因となりがちな傾向があります。
特に若い世代の社員は「ワーク・ライフ・バランス」の言葉に代表されるように、仕事とプライベートを両立できる働き方に充足感を得る傾向が強いでしょう。
システムや人事制度が絡むため、すぐに改定が難しい分野ではあるかもしれません。
そんなときでも「○年後を目処に、こんな働き方を実現したい」と発信するだけでも、社員のエンゲージメントを低下することは防げる可能性があります。
4.エンゲージメントを高めたいなら、必ず注意すべきこと
もし今後、エンゲージメントを高めるための施策を展開するなら、注意すべき視点を3つ紹介します。
・人事部門に任せきりにしない
・制度・ツールの導入後に、運用を放置しない
・経営側のメリットだけで語らない
一つひとつ、具体的に解説していきます。
4-1.人事部門に任せきりにしない
人事部門にエンゲージメント向上やインナーコミュニケーションを任せきりにしてしまうと、エンゲージメントの向上には至りにくいことが多くあります。
前述したように、インナーコミュニケーション機能を担う専門組織は日本企業には珍しく、その結果人事部門に委ねる傾向があります。
しかし、人事部門は「採用」「社員研修」「労務管理」など、実務を多く抱えています。その状態では、インナーコミュニケーション施策の優先順位はどんどん下げられてしまいます。
本来、エンゲージメントの向上は表面的・部分的な施策よりも、経営の意思に依存する側面が強いといえるでしょう。
したがって、人事部門主導というだけではなく、経営からの「社員エンゲージメントを高める施策に取り組む」というメッセージ発信が重要になります。
4-2.制度・ツール導入後、運用を放置しない
エンゲージメントを高めるために新たなコミュニケーションの制度やツールを導入したあと、運用は生命線といえます。きちんと運用にパワーを注ぐことが、ツール定着の要諦です。
よくツールの導入だけ行い安心してしまい、運用は現場任せにして放置するケースもあります。
現場ではツールの使い方が分からなかったり、面倒になったりすると、たちまち制度もツールも風化してしまいます。
新しい制度やツールを導入した場合は、理想の運用が叶った状態をゴールとし、必ずその状態になるまでフォローや運用のプッシュを行うようにしてください。
4-3.経営側のメリットだけで語らない
エンゲージメントを形成する主体は、あくまで社員です。くれぐれも、会社や経営の都合だけで必然性を語らないように注意しましょう。
たとえば「社員の定着率を上げたい」という語り方では、あくまで経営側の目的に映ってしまいます。「皆さんが働きやすい環境を整えたい」という語り方の方が、社員側が享受できるメリットが明確になります。
その結果、新しい制度やツールに対して、社員も前向きな観点で見ることもできます。
経営側の意図や目的がある場合でも、必ず社員側の視点に変換してエンゲージメントを伝えるようにしましょう。
5.他社でのエンゲージメントの高め方
最後に、他社でエンゲージメントを高めた事例を2つ紹介します。
もし置かれている課題が似ている場合は、参考になることでしょう。
5-1.引越し業A社【部署間のコミュニケーション強化事例】
A社は社員数25名。管理本部、コールセンター、引越しセンター勤務のスタッフで業務内容も職場も異なるため、事業所間の情報共有がありませんでした。
その結果、社内の一体感の欠如や社員のモチベーション維持が課題となっていました。
そこで、情報共有ツールを導入し、事業部の活動や社内イベントの様子を投稿し、部署間で共有するようになりました。
部署の状況だけでなく、リレー形式の自己紹介や新入社員紹介など、社員のことを知るきっかけ作りとしても活用したそうです。
その結果、部署間のリレーション強化になり、社内の雰囲気が活性化。さらに採用面接でもツールを使用し社内の雰囲気を伝えることで、内定辞退率も下げることができました。
5-1.店舗事業B社【リモートワーク下での結束強化事例】
B社は社員数160名。アパレル・美容院など異なる事業を店舗展開していました。
社員数が100名を超えてきた段階で、部署間の情報共有が手薄になっている課題感がありました。加えて、リモートワークで孤独感を感じる社員が増加している状況にも手を打ちたいと考えていました。
そこでコミュニケーションツールを導入したのですが、段階的な導入を行う工夫を施しました。最初はキーとなる数部署でトライアルを行い、どんな投稿が社員のモチベーションに寄与するかを検証したのです。
その結果、趣味や家族のことに関する「マイエピソード」が投稿のハードルも低く、社員間の結束に効果があると分かり、一気に全社展開しました。
トップダウンではなく、社員の自主性を尊重したことが奏功し、投稿数は日を追うごとに増えていったそう。その成果として、社員の退職率が改善に至りました。
6.エンゲージメントを高めたいなら、コミュニケーションツール「WORKSTORY」がおすすめ
前章の事例でお分かりの通り、エンゲージメントを高める一歩目は、インナーコミュニケーションの土台を整えることです。
インナーコミュニケーションにした特化したアプリ「WORKSTORY」なら、理念浸透から相互理解・蓄積まで、社内のコミュニケーション課題が解決可能です。
エンゲージメントが高まらない課題は、社員の状況によってさまざまに変化します。
しかし「WORKSTORY」であれば、理念浸透・離職率低下・内定辞退対策など、広範囲に一つのツールで対応できるエンゲージメントDXツールです。
未来型 社内報テック「WORKSTORY」を活用してエンゲージメント向上しませんか? |
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WORKSTORYとは社内ブランディングの全てを一箇所に集約できるツール。これ1つで会社がわかるDX促進ツールです。 【WORKSTORYの特徴】 オンライン相談・詳細の資料ダウンロードも可能です。ぜひ一度お問い合わせください。 |
7.まとめ
エンゲージメントは、最近注目されつつあるトレンドなので、先んじて手を打つことが効果を上げるコツとなります。
あらためて、当記事のポイントを振り返ります。
◎エンゲージメント向上を考えるなら、4つの構成要素を理解し、優先順位をつけることが重要
・会社エンゲージメント
・職場エンゲージメント
・仕事エンゲージメント
・制度エンゲージメント
◎社員エンゲージメントを高めるメリットは以下の3点
・社員の帰属意識が高まり、離職を防止できる
・社員のやる気が高まり、業績の向上が期待できる
・経営ビジョンや理念が浸透し、会社への愛着が生まれる
◎日本企業でエンゲージメントが高まらない主な要因は以下の通り
・インナーコミュニケーションが未発達だから
・コミュニケーションが点在しているから
・働き方の多様化に対応していないから
◎エンゲージメント向上施策を投じるなら、以下の注意すべき点がある
・人事部門に任せきりにしない
・制度・ツールの導入後に、運用を放置しない
・経営側のメリットだけで語らない
「エンゲージメント」の言葉は茫漠としているため、何から手をつければよいか分からないという声もよく聞きます。
だからこそ、自社にフィットしやすく、なおかつ効果を発揮しやすいポイントを、当記事を参考に見つけていただければ幸いです。