売り手の採用市場において、注目されている「アルムナイ」 という言葉をご存知ですか?
アルムナイとは、企業の退職者やOB・OGなどの離職者を意味しており、退職後も彼らと接点を持ち、再雇用する採用手法のことです。
そのため、新しい採用手法としてアルムナイは注目されています。
すでに導入している企業があり、ヤフー株式会社では退職者を「モトヤフ」と名付け、情報交換や再雇用などに活用しています。
アルムナイを上手に活用することで、人材確保につなげることが可能です。
ですから、人材確保を課題にしている企業としては、アルムナイ制度を整えることを検討してみる価値があります。
そこでこの記事では、アルムナイとはどんな採用手法でどんなメリットがあるのか、そして実践している企業の実例などを紹介していきます。
ぜひ参考にして、アルムナイという採用手法の導入を検討してみてください。
1.アルムナイとはOB・OGのこと!
2.アルムナイ実践企業例
3.アルムナイ実践の注意点
4.アルムナイのノウハウを提供・手助けしてくれる会社の紹介
5.まとめ
1.アルムナイとはOB・OGのこと!
それでは早速アルムナイについて、深く知っていきましょう。
アルムナイは英語で「alumni」の綴りで、「卒業生・同窓生・交友」などの意味として使われる単語です。
しかし、企業におけるアルムナイでは、「離職者・OB・OG」という意味で捉えています。
ちなみに、一般的には定年退職者はアルムナイの意味合いに含まれません。
これらの捉え方からわかるように、アルムナイという採用手法は、一度離職した人材を再度雇用する制度のことです。
そのため、アルムナイではなく、「出戻り制度」「カムバック制度」などの名称で導入している企業もあります。
また、アルムナイは出戻りではありますが、復職とは違った意味 です。
復職は基本的に、休職など職務に復帰することが前提の為、会社に在籍した状態のままとなります。
一方でアルムナイは、他社への転職や起業を理由に退職した人材を対象としているのです。
・アルムナイが流行りだした背景とは?
アルムナイという採用手法が注目され、流行りだした背景には転職の捉え方の変化とITツールの発達の2点が挙げられます。
まず転職の捉え方の変化ですが、昔と比較して近年は転職が当たり前になりました。
終身雇用制度が崩れたことで、転職が珍しいことではなくなり、ごく当たり前のこととして捉えられるようになったのです。
これにより、同業界内で複数の企業を転々と循環することも可能となり、結果企業としても今まで触れにくかった「卒業生=元同僚」たちに目を向け始めたのです。
また、ITツールの発達も背景にはあります。
ITツールの発達により、ダイレクトリクルーティングという採用手法を導入する企業が増えました。
ダイレクトリクルーティングとは、人材紹介会社や求人広告を通さず、企業自らが主体的に人材を発掘し、採用することを指しています。
ダイレクトリクルーティング用の採用媒体なども通すことなく、相手の連絡先・素性がわかっていて声をかけられるからこそ、ダイレクトリクルーティングの1つのターゲット層として、アルムナイも発展してきました。
このように、アルムナイが流行りだした背景には、転職の捉え方の変化とITツールの発達が挙げられます。
・アルムナイのメリット!
<即戦力として採用できる>
アルムナイのメリットは、即戦力として採用することができることです。
売り手市場の現在、優秀で即戦力となる人材を確保するのは難しいのが現状です。
でももしすでに一度在籍していたことのある人なら、対象者の実力がわかっており、即戦力になると判断することができます。
しかも、自社になじみがあるため、実力が発揮しやすいメリットもあります。
<ミスマッチが少ない>
転職が当たり前となったことで、ミスマッチによって離職するケースが多々あります。
しかし、アルムナイなら自社のことを理解しています。
そのため、再度入社した際に「こんなはずでは…」というミスマッチが少ないです。
<リファラル採用も狙える>
リファラル採用を狙うことができるのもアルムナイのメリットです。
リファラル採用とは、知人・友人の紹介・推薦によって採用選考をする手法のことを指しています。
離職者たちと良好な関係を築いておけば、離職者自身がターゲットになるだけでなく、たとえ彼ら自身を呼び戻せなくても、彼らの友人・知人・現同僚をスカウトすることができるかもしれないのです。
ちなみに、リファラル採用のメリットは、採用コストの削減と質の高い人材の確保です。
どちらの面でも、企業の採用業務としては注目しておきたい要素となります。
それだけに、アルムナイを活用したリファラル採用は狙い目であり、大きなメリットです。
2.アルムナイ実践企業例
ここからは、アルムナイ実践企業の実例を紹介していきます。
具体的な実例を参考にすることで、よりイメージしやすいです。
ぜひ、実践企業例を参考にして、自社に取り入れるのか検討をしてみてください。
・「カムバック・パス制度」でアルムナイの活用:株式会社ワークスアプリケーションズ
(引用:https://www.excite.co.jp/news/article/E1513234540855/)
<「カムバック・パス制度」とは?>
株式会社ワークアプリケーションズは、「カムバック・バス制度」を導入することで、アルムナイを実践しています。
カムバック・パス制度とは、退職する社員に再入社パスを付与し、その再入社パスの期間内なら無条件で再入社を受け入れるという制度です。
この制度は、退職する社員の誰もが再入社パスを付与されるわけではありません。
本人が退職時にカムバック・パスの取得を希望し、さらに在職中に一定の成果を収めたと認められる社員に対し、再入社パスは付与されます。
また、再入社パスの有効期限は評価に応じて異なり、3年もしくは5年間有効です。
カムバック・パス制度の最大のメリットは、どんな退職理由でもOKなことです。
パスを取得していれば、いかなる理由であっても戻ってくることができます。
<「カムバック・パス制度」導入の背景>
この制度導入の背景には、優秀な人材の確保が最重要戦略との考え方があります。
もともと、ワークスアプリケーションズは大学生・大学院生を対象にしたインターシップで、優秀な成績を修めた学生に3~5年間いつでも入社可能なパスを発行するという制度を設けています。
このパスを利用して入社するケースが多くありました。
これを受け、諸事情で退職した社員にカムバック・パスを付与することで、優秀な人材を確保できる考え、カムバック・パス制度が制定されたのです。
(参考:http://www.worksap.co.jp/files/4814/4712/7764/051201_newsrelease.pdf)
・「リワークエントリー制度」で再入社OK:株式会社クレディセゾン
(参考・引用:https://www.saison-chienowa.jp/articles/uHvGccKk)
<「リワークエントリー制度」とは?>
クレディセゾン株式会社では、「リワークエントリー制度」によってアルムナイの再入社を受け入れています。
この制度では、退職時にエントリーしておくことによって、離職期間10年以内で一定の条件を満たしていれば、再入社ができる制度です。
退職理由は、結婚や育児、介護などのライフイベントだけでなく、転職・留学などもOKとなっています。
また、リワークエントリー制度を利用した5年以内の再入社なら、退職時と同条件の待遇保証です。
<「リワークエントリー制度」の体験談>
実際に、リワークエントリー制度は利用されてた八田真美さんの体験談です。
八田さんはクレディセゾンに入社し、約10年間セゾンカウンターで接客・営業をしてきました。
しかし、旦那さんの転勤が決まります。
転居先の周辺の支社に異動希望を出したり、支社長に直接かけあったりして仕事を続ける方法を模索したのですが、欠員がなく、悩んだ末に退職することにしたのです。
退職後は、転職活動をしたのとのことです。
しかし、八田さんは退職後わずか2ヶ月で再入社を果たすことになります。
タイミングよく欠員が出たことで、リワークエントリー制度を利用して短期間で復帰することができたのです。
ー「リワークエントリー制度」は心の支えにー
八田さんは、一度退職した後もクレディセゾンに戻りつもりであり、リワークエントリー制度が支えになったとのことです。
実際に、八田さんは以下のように語っています。
「この制度があったからこそ、思い切って退職という選択ができたのだと思います。クレディセゾンで働きたいという思いが強かったので、もし再入社できるという選択肢がなければ、夫には単身赴任してもらい、実家に帰って子どもを一人で育てながら仕事を続けていたでしょう。」
(引用:SAISON CHIENOWA https://www.saison-chienowa.jp/articles/uHvGccKk)
このように、リワークエントリー制度があることで、出戻りができる安心感から退職という選択ができたという方がいます。
八田さんは旦那さんの転勤がきっかけですが、自身のスキルアップなどでも使える制度であり、スキルアップして戻ってきてくれれば、企業としてもプラスとなるのです。
・「アルムナイネットワーク」を整えて活用:株式会社セプテーニ・ホールディングス
(参考:https://www.septeni-holdings.co.jp/csr/activity/alumni.html)
株式会社セプテーニ・ホールディングスは、「アルムナイネットワーク 」を構築し、アルムナイの活用をしています。
アルムナイネットワークとは、OB・OGに対して、キャリア開発サービスや情報を提供するネットワークです。
セプテーニグループに勤務したことがあるOB・OGが加入可能となっています。
このアルムナイネットワークを通して、キャリア開発サービスの提供や情報の共有を行うことで、ビジネス面におけるパートナーシップを築いています。
共有する情報は、グループの関連情報や業務委託・業務提携に関わる情報などです。
つまり、再雇用という意味でアルムナイを活用するのではなく、アルムナイネットワークを通して、業務委託や業務提携などでアルムナイを活用しているのです。
アルムナイは、再雇用をする以外にも、活用できるという実例となっています。
3.アルムナイ実践の注意点
ここからは、アルムナイ実践で注意すべき点を紹介していくので、参考にしてみてください。
<再雇用の条件を明確にする>
アルムナイ実践をするなら、再雇用の条件を明確にすることが重要です。
誰でも再入社OKで、しかも無期限だったら、欲しい人材とマッチしないOB・OGまで採用しないといけなくなります。
しかし、それではアルムナイ制度の意味を成しません。
アルムナイ制度の目的は、主に優秀な人材の確保であり、必要な人材を再雇用することに意味があるのです。
そのため、一定の条件を明確化することがポイントとなります。
スキルや経験、業績などを評価し、期限を設けて採用基準を明確化するようにしましょう。
<制度化させて周知する>
アルムナイ実践では、制度化させて周知させることも大切です。
曖昧な制度では、実践したとことで応募してくれません。
そのため、しっかりと制度化して、企業としてOB・OGを受け入れていることを表明するべきです。
また、社員に周知することもポイントになります。
立派な制度を整えても、退職した社員がアルムナイ制度を知らなければ、利用することができません。
制度化して満足するのではなく、社員に周知することが重要なのです。
<退職時と退職後のコミュニケーションに注意>
アルムナイの活用の成功は、退職時に良好な関係のまま退職してもらえるのかがポイントになります。
険悪になって退職した社員が戻ってくる可能性が低いです。
逆に言えば、円満退職した社員なら、出戻りしてくれる可能性があります。
そのため、退職時の対応は重要なポイントであり、注意すべき点です。
また、退職後のコミュニケーションも大切です。
アルムナイ向けのSNSグループを作ったり、ネットワークを構築したりすることで、コミュニケーションを取ることができます。
次の第4章では、アルムナイのノウハウを提供・手助けをしてくれる会社を紹介しているため、それらの会社のサービスを利用する方法もあります。
<複数の働き方を用意>
アルムナイ実践では、複数の働き方を用意することも必要です。
なぜなら、アルムナイの活用では、どうしても退職した原因がネックになります。
もし、働き方に不満があった場合、色々な働き方を提案 できれば、再入社をしてくれる可能性があります。
例えば、子育てのために退職した社員であれば時短勤務、地方に帰った社員ならリモートワークなどです。
他にも、フリーランスになっている社員であれば業務委託、介護で退職した社員には在宅勤務などの働き方があります。
また、アルムナイ実践では再入社にこだわる必要もありません。
会社に所属しなくても、業務提携や業務委託という選択肢もあります。
これなら、社内でのトラブルが原因で退職した方でも、アルムナイの活用をしやすいです。
多様な働き方や雇用形態を用意しておくことで、アルムナイ実践はより有効になるのです。
4.アルムナイのノウハウを提供・手助けしてくれる会社の紹介
アルムナイを活用する場合、自社だけの制度で行うのは大変です。
自社だけでアルムナイの活用のためのシステムを構築するのはコストや手間がかかります。
また、ノウハウがない状態では効果的な活用ができません。
そこで活用したいのが、アルムナイのノウハウを提供・手助けをしてくれる会社のサポートです。
ここからは、アルムナイのノウハウを提供・手助けをしてくれる会社を紹介していきます。
・株式会社ハッカズーク
(参考:https://hackazouk.com/)
(引用:アルムナイ・リレーション特化型クラウドシステムhttps://official-alumni.com/)
株式会社ハッカズークは、企業とアルムナイをつなげるためのクラウド型システムである「Official-alumni.com アルムナイ・リレーション・プラットフォーム」を提供しています。
このシステムを使うことで、アルムナイ制度の導入設計や企業とアルムナイをつなぐプラットフォームの活用などを行なうことが可能です。
また、同社はアルムナイ・コンサルティングも行っています。
アルムナイ・リレーションの構築、強化に必要なコンセプトや制度設計の運用 などをコンサルティングしてくれます。
簡単に言えば、より効果的なアルムナイ制度の導入設計やアルムナイ向けの情報発信設計などのサポートをしてくれるのです。
さらに、アルムナイ向けイベントの企画・運営まで行っています。
・株式会社MyRefer
(参考: https://i-myrefer.jp/)
(引用:MyRfer https://i-myrefer.jp/)
株式会社MyReferは、リファラル採用を活性化させるクラウドサービスである「MyRefer」を提供しています。
リファラル採用プラットフォームによって、少ない負担でリファラル採用を行うことができます。
また、社員にリアルタイムで情報告知ができ、自社の求人の紹介がしやすいです。
そんな「MyRefer」は、アルムナイにも活用することができます。
アルムナイ専用のマイページを提供しており、いつでも求人の紹介・出戻り応募ができるようになっているのです。
また、アルムナイ向けのイベントやコンテンツの配信も可能であり、出戻り応募を促進させることもできます。
5.まとめ
この記事では、新しい採用手法であるアルムナイについて紹介してきました。
アルムナイとは、退職したOB・OGを再度雇用する採用手法です。
優秀な人材確保が難しい今の時代、アルムナイは注目されており、様々な企業が導入しています。
アルムナイという採用手法のメリットは、「即戦力として採用できる」「ミスマッチが少ない」「リファラル採用を狙える」などが挙げられます。
OB・OGなので、実力がわかり、仕事内容も理解しているため、即戦力として採用でき、ミスマッチが少ないです。
しかも、一度社外に出ているため、そこで培った人脈によって、リファラル採用まで狙えます。
アルムナイの制度を整えるのは難しいと感じるかもしれません。
しかし、アルムナイのノウハウを提供している会社もあるため、そのサービスを活用すれば、制度化させることができます。
優秀な人材確保を目標にしている企業は、ぜひアルムナイ制度の導入を検討してみてください。