いきなりですが、HRテックという言葉を知っているでしょうか?
HRテックは、人事領域の業務において、テクノロジーを活用して業務改善をしていくことです。
今の時代、少子高齢化などの問題で人材不足が叫ばれており、人材確保や定着率の向上が求められています。
そこで、HRテックによる問題解決が注目されています。
実際に、世界最大の会計事務所・デロイトによる、世界140カ国・1万人を超える人事部門責任者・管理職を対象にした調査「グローバル・ヒューマンキャピタル・トレンド2017」(http://ur0.link/MD2l)では、参加企業の71 %がデータ活用(HRテック)による人事課題の解決を「重要」もしくは「非常に重要」と回答しているのです。
そこで今回は、HRテックとは何であり、どんなサービスが存在しているのかを紹介していきます。
HRテックを詳しく知り、HRテックを活用したサービスを導入することで、人事部門での問題解決や効率化に役立てることができるかもしれません。
現状の人事部門で問題を感じる、もしくは非効率だと感じるなら、ぜひこの記事からHRテックについて知り、活用してみてください。
1.HRテックとは
2.戦略的人事に必要なHRテックの種類
2-1.データベース化(社員データ集め)
2-2.評価
2-3.戦略検討・実施(適正配置)
2-4.活性化
3.段階別(特徴別)サービス
4.まとめ
1.HRテックとは
HRテックという言葉を初耳の方もいると思います。
そこでまずは、HRテックとは何なのかを紹介していきます。
どんな意味を持ち、どんな効果が期待できるのかを知ってみてください。
・HRテックと戦略的人事
HRテックとは、【Human Resource(人的資源)×Technology】の略です。
この言葉は造語であり、人事関連の業務においてテクノロジーを活用することで、業務効率化や質の向上に導くサービスを指しています。
人事関連の業務とは、採用から労務管理、タレントマネジメントなど広範囲です。
ちなみに、タレントマネジメントとは、従業員の持つタレント(能力・才能)やスキル、経験値などの情報を人事管理として捉え、戦略的な人事配置や人材配置を行なうことを指しています。
これにより、人材の適正配置や効率的な人材育成などを行なうことが期待できるのです。
HRテックで活用されるテクノロジーは、ビッグデータ解析や人工知能(AI)などが挙げられます。
これらの最先端テクノロジーを活用することで、ベストの人事配置や採用・育成などができ、人事業務の効率化や質の向上につなげることができます。
近年、HRテックが注目されている理由は、戦略的な人事が求められている背景があります。
現状、採用などの入り口については、活発でサービスも整っています。
しかし、入社後の人材管理については、まだまだ遅れているのが現状です。
その結果、離職率が高くなり、採用コスト・退職コストが無駄にかかってしまいます。
当然企業としては、無駄なコストを削減したいものです。
HRテックのサービスを導入し、人材管理を手厚くすることで、無駄なコストを削減することにつなげられます。
さらに、人材情報を管理することで、適正な評価や人事配置が可能になります。
適正な評価や人事配置を行なうことで、従業員のモチベーション向上やパフォーマンスの向上につながり、結果的に業績アップにまで期待できるのです。
また、戦略的な人事が求められることにより、人事の役割が変わったこともHRテックが注目されている理由の1つです。
今まで、人事の業務はルーチン業務だったわけであり、その業務を戦略的に行うとなれば、ルーチン業務を簡略化し、効率よく戦略を立てる必要があります。
そのため、ルーチン業務の簡略化が期待できるHRテックが注目され始めたのです。
このように、戦略的な人事が求められる背景から、HRテックが注目されているのです。
・HRテックの範囲は広い
HRテックの範囲は、とても幅広いです。
採用から採用後の人事育成、人事評価など様々な人事業務に対応したサービスがあります。
そこでポイントなのが、HRテックの各サービスがどの段階でどのように使う物なのかを理解することです。
段階に合わせてサービスを導入しなければ意味がありません。
また、自社の状況に合わせて使用することが重要です。
自社にとって、どんな段階の人事業務を改善したいのかを把握し、その段階に合わせたサービスを導入する必要があります。
参考:8カテゴリー299サービス掲載!HR Tech業界カオスマップ(2018年10月1日現在)https://hrtechnavi.jp/lab/hrtech-chaosmap/
上記の図は、HR Techナビと株式会社ウィルグループの共同企画で作成したHRテック業界を網羅的にマップ化した「HR Tech業界カオスマップ」です。
ここでは、8つのカテゴリーにHRテックを分類しています。
HRテックを活用したサービスを利用する際には、まずどのカテゴリーで利用したいのかを考え、そのカテゴリーからサービスを見つけるのがおすすめです。
2.戦略的人事に必要なHRテックの種類
HRテックという言葉には、採用から人材の適正配置までの一連を指しています。
しかし、戦略的人事の観点からみれば、重要なのは採用後です。
HRテックには「業務効率化」をメインにしたサービスもありますが、戦略的な人事からは少し離れます。
戦略的人事に必要なHRテックの種類は、「データベース化」「評価」「戦略検討・実施」「活性化」の4つに分類することが可能です。
そこでここからは、各種類について詳しく紹介していきます。
2-1.データベース化(社員データ集め)
・戦略的人事で必要なデータベース化
HRテックで必要になるのが、人事情報のデータベース化です。
自社の社員のデータを集めてデータベース化し、そのデータベースを基に戦略的人事を行います。
ここで言うデータとは、自社社員の「得意・不得意」「今までの実績」「考え方」「性格」「相性」など様々です。
ただし、HRテックでもこの分野は遅れており、まだ高品質なサービスが少ないのが現状となっています。
様々な情報を蓄積することができれば、人材配置の最適化など戦略的人事に活かせるため、今後発達していって欲しい分野と言えます。
・ピープルアナリティクスの導入
企業内に蓄積された社員のデータを収集・分析し、戦略的人事に役立てる取り組みをピープルアナリティクスと呼びます。
ピープルアナリティクスの導入により、「社員のパフォーマンスに影響を与える主要因」や「すぐに退職してしまう社員の特徴」などをデータからアプローチすることが可能です。
これらのデータを活用することで、業績アップや有効的な離職率改善の施策などを検討することができます。
人材情報をデータ化するまでは、人事担当者の経験則や勘を頼りに採用や人材配置をされてきました。
しかし、ピープルアナリティクスの導入でデータ化することで、ファクトに基づいた戦略的人事を行うことができるのです。
・ESサーベイも有効なデータ
ESサーベイも戦略的人事にとって有効なデータとなっています。
ESとは、「従業員満足度」のことです。
つまり、ESサーベイとは従業員満足度調査のことであり、この調査によって社員の満足度やその要因・影響度などを把握することができます。
そのデータを踏まえて戦略的人事を行うことによって、モチベーション向上や定着率の改善につなげることができるのです。
2-2.評価
・HRテックで公正に評価
戦略的人事に必要なHRテックのひとつが評価です。
HRテックによって、評価の可視化・最適化をすることができます。
これまで人事評価はブラックボックス化されているケースが多く、不透明な部分が多い傾向がありました。
しかし、HRテックで各個人の情報や実績に対して評価することで、可視化・適正化することができ、透明性を担保して評価への不満を削減させることができます。
正当に評価されることで、モチベーションやパフォーマンスの向上につながります。
・適切な部署で能力を伸ばす
社員にとって、適切な部署に配置されるのかはとても重要です。
適切な部署に配置されることによって、モチベーションを向上させることができます。
モチベーションを向上させることで、業績アップや個人の能力アップも期待できます。
これらの背景から、「評価を与えて給料を与える」だけではマネジメントできない時代となっているのです。
そこで、「あなたがこの会社で働くことで、これくらい成長できる」という的確なフィードバックができれば、社員の意識を高めてスキルアップも目指せます。
そして、この的確なフィードバックをするためには、HRテックの存在が欠かせません。
HRテックの機能を活用して、スキルアップのためのロードマップを作成することで、社員のモチベーションにつなげることができ、育成にもなります。
HRテックを利用した先進的な評価は、現状だけでなく未来も含めており、社員の育成に役立つのです。
2-3.戦略検討・実施(適正配置)
・HRテックで得たデータを活用し人材配置
HRテックで得られた社員のデータを活用することで、人材の適正配置が可能になります。
社員のデータにある「得意・不得意」「性格」などの情報から、戦略を検討して人材配置をすることができます。
適正な人材配置をすることで、意欲やスキルアップも可能です。
業務が適性にマッチしていることで、社員は仕事への意欲を高めることができます。
また、適正な人材配置は「人材開発」の意味もあり、社員個人のスキルアップも期待できます。
・タレントマネジメントがポイント
HRテックを活用することで、タレントマネジメントをすることができます。
タレントマネジメントとは、社員のスキルや経験値など様々な情報を一元管理することで、戦略的な人事配置をすることです。
HRテックを活用してタレントマネジメントすることで、どの社員をどの部署で活用するのかといった適正配置を考えることに役立ちます。
さらに、能力や経験値などを把握できることから、人材育成にも生かすことができます。
タレントマネジメントについては、様々な関連サービスが出てきているのが現状です。
2-4.活性化
・社内コミュニケーションの活性化
企業の多くは、社内コミュニケーションに課題を感じています。
実は、コミュニケーションに課題を感じている企業は約8割とされているのです。
そこで、HRテックを利用することで、社内コミュニケーションの活性化させることができます。
クラウドサービスの活用により、離れた場所でも社員同士が顔を見てコミュニケーションを取ることができるようになります。
密に連絡を取り合うことができるため、業務的に行っていた社員旅行や飲み会、各部署との交流などの企画をしっかりと計画することができます。
そのため、HRテックはイベント企画やチームビルディングなどに活かすことも可能です。
その結果、社内コミュニケーションの活性化につなげることができます。
ちなみに、チームビルディングとは、チームの各メンバーが能力を主体的に発揮し、一丸となって目的達成を目指す組織もしくは、そのための組織づくりのことです。
チームビルディングの対象は、社内におけるすべての人であり、新人や管理者、経営者まで含まれています。
HRテックの導入により、社員教育・育成の一環として、チームビルディングについても身に付けることができます。
3.段階別(特徴別)サービス
HRテック関連のサービスは、色々な段階の機能を統括して使えるようになっているものが多いです。
しかし、どの段階でサービスの強みを発揮できるのかを把握した上で、導入するのがおすすめです。
そこでここからは、段階別に強みのあるHRテック関連サービスの特徴を紹介していきます。
・データベース化(データ集め)
<wevox>
独自のサーベイを利用して、組織の状態を可視化することができるサービスです。
離職を未然に防ぎたい企業や組織の現状を把握したい企業におすすめです。
従業員のエンゲージメントを定期的に把握できるため、離職を未然に防ぐことに役立ちます。
また、組織の状態を可視化することで、現状把握をすることができるのです。
サーベイの実施周期に合わせて独自の質問を自動配信し、回答結果を自動で集計します。
自動集計で組織状態をデータベース化するだけでなく、組織の課題点についても自動抽出してくれます。
そのため、「質問の設計」「結果の集計」「レポート作成」の作業が簡単です。
課題点も自動抽出されるため、組織改善に役立ちます。
<COCOREPO>
クラウド上で、社員情報や社員のスキルをデータベース化することができます。
全社員のスキルを見える化することで、個々の能力を把握しやすくなります。
そのため、社員の適正配置に悩んでいる企業におすすめです。
プロジェクト管理にも利用できるため、社内で複数のプロジェクトを立ち上げている企業にとって活用しやすいサービスとなっています。
また、モチベーションセルフチェックが可能です。
日々の心理状況をアンケートで管理することで、モチベーションもグラフで見える化することができます。
スキルの見える化から戦略的な人事に役立てることができ、モチベーションの見える化から離職率改善に利用することが可能です。
<Geppo>
リクルートとサイバーエージェントによるHRテックサービスです。
従業員のコンディション変化を発見することができるサービスとなっており、従業員の退職や休職を予防したい企業におすすめです。
毎月3問の設問に回答するだけでシステムがデータを蓄積させ、従業員の気持ちを吸い上がることができます。
しかも、回答促進やレポートまで代行してくれるため、人事業務の負担も少ないです。
毎月観測しているため、いち早く変化に気づくことができ、定着率の向上に役立ちます。
・評価
<あしたのチーム>
参考:https://www.ashita-team.com/lp/?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=search
評価に特化したHRテックのサービスです。
人事評価の仕組みやシステムに悩んでいる企業におすすめです。
また、ベンチャー企業や中小企業に特化したサービスとなっています。
クラウド型人事制度の構築・運用をすることができ、AIによって人事評価を可視化することが可能です。
人事評価の可視化だけでなく、専属ドクターによるメンタルヘルス相談やカウンセリング対応などのサービスもあるため、離職率の低下につなげることができます。
<MBO Cloud>
参考:http://www.cydas.com/products/mbo-cloud/
目標管理・人事考課に特化したアプリサービスです。
進捗管理や目標管理をすることができ、個人の目標・成果を評価システムと連携させることが可能です。
そのため、人事部門において適正で効率的な評価をすることができます。
そのため、人事考課の業務を簡素化したい企業にとっておすすめのサービスです。
また、同じ会社が提供しているPerformance Cloudと連携することで、評価データを分析することができます。
その結果、多角的な人材分析と適正な評価をすることができるのです。
<Unipos>
ピアボーナスを簡単に実現するサービスです。
ピアボーナスとは、これまでの給与制度ではカバーすることができない、日々の貢献に対して支払われる給与のことです。
簡単に言えば、同僚からの感謝の気持ちを少額のボーナスとするシステムとなります。
ピアボーナスの導入は、社員同士の感謝が見えるためコミュニケーションの活性化やエンゲージメントの向上に使えるのです。
Uniposなら、このピアボーナスの送受信や集計が簡単にでき、人事・労務の負担が少ない形でピアボーナスを導入することができます。
社内制度や表彰制度と組み合わせて設計することができ、幅広いニーズに対応が可能です。
組織風の変革や従業員エンゲージメントの向上に役立ちます。
また、全社での導入だけでなく、部署単位の導入も可能です。
そのため、まずはお試しで特定部署だけの導入をすることもできるのです。
・戦略検討・実施(適正配置/タレントマネジメント)
<CYDAS(サイダス)>
Profile Managerというアプリケーションを利用することで、人材の見える化ができ、タレントマネジメントができます。
そのため、社員の適正配置や人材育成に悩んでいる企業におすすめのサービスです。
社員のスキルや経歴、評価などを一元管理することでき、人材マネジメントの効率を高めることができます。
社員検索機能があり、目的に応じて最も適任の人材を簡単に見つけることができるため、最適な人材配置にも役立つのです。
<Workday>
参考:https://www.workday.com/ja-jp/homepage.html?&_rda=/jp/
財務・人事向けのシステムであり、データを可視化してタレントマネジメントに利用することができるサービスです。
そのため、データに基づいた人事育成が可能となります。
タレントマネジメントだけでなく、人事・福利厚生・リクルーティングなど、HRテックに係る機能を一括で管理することができます。
導入することで、人事担当者の業務効率化にも利用することにもつながるのです。
人事担当者や財務担当者への負担を軽減させたい企業におすすめのサービスとなっています。
<かおなび>
クラウド人事管理ツールであり、タレントマネジメントに活用できます。
業種や企業規模を問わずに活用することができるサービスであり、人事管理の効率化におすすめです。
顔写真が並ぶ画面で使用することができるツールのため、顔と名前が一致しないという事態を防ぐことができます。
また、人材データベースを一元管理でき、スキルや経験などを可視化することが可能です。
そのため、人材配置の際にはデータから最適人材を見つけ出したり、育成プランを計画したりすることができます。
<タレントパレット>
参考:http://www.pa-consul.co.jp/TalentPalette/
人材活用プラットフォームであり、人材活用にマーケティング思考を取り入れたサービスです。
戦略的な人事はもちろん、離職防止などに悩んでいる企業におすすめです。
人材の見える化や人材の最適配置に役立ちます。
また、多角的な視点で人材情報を分析することができ、タレントマネジメントに活かすことが可能です。
人事データを有効に活用できるシステムとなっています。
・活性化
<airy>
社内コミュニケーションの活性化に役立つサービスです。
社内SNS導入に悩んでいる企業や失敗している企業におすすめです。
スマートフォンからの確認や回答ができるため、場所を選ばずにコミュニケーションを取ることができます。
動画・写真・ファイル投稿ができ、イベント時の動画や写真を投稿することで、社内コミュニケーションの活性化につながります。
他にも、eラーニング機能による教育やキャリアアップサポート、アンケート機能による従業員の生の声を吸い上げるなど、様々な使い道があります。
4.まとめ
今回は、戦略的人事の為のHRテックをサービスも含めて紹介してきました。
HRテック関連サービスは、戦略的人事に活用することができます。
少子高齢化などで人材不足が叫ばれる現代社会において、戦略的人事はとても重要な課題です。
そこで、HRテック関連サービスの導入は、課題改善の策のひとつになりえます。
サービスの導入をする際は、段階に合わせたサービスを選択することがポイントです。
今はまだ、さほどHRテック関連サービスは少ないですが、今後はどんどん発達していくことが予測されています。
人材管理・育成に力を入れるなら、ぜひHRテック関連サービスに注目してみてください。