『ロッキー』のテーマで残業減!?職場環境の改善に効果のあるアイデア集

モチベーション・はたらく環境

あの三井ホーム本社で、定時を回ると「ロッキー」のテーマが響くことをご存知ですか?
実は、これは職場環境の改善手法のひとつとして取り入れられている取り組みです。
そしてなんと、この取り組みを始めてから残業時間が2~3割減っているという驚きの効果が現れています。

働く女性、働く高齢者の増加などに伴い、みんなが心地良く働ける「職場環境づくり」が注目されています。
このコラムでは、他社の事例を参考にしつつ、職場環境づくりの鍵となるアンケートのとり方や実施する上でのポイントを紹介します。

環境改善のための答えは1つではありません。
成功のカギは一人一人の意見を反映しながら、その会社らしい工夫をすること。
従業員一人ひとりが自分らしく働ける、そんな環境実現のヒントにしてください。

1.職場環境っていったい何?
1-1.二種類の職場環境がある
1-2.職場環境の改善には従業員アンケートが必須
2. 職場環境の改善のためのアンケート
3.職場環境の改善例
3-1.「快適職場指針」に基づく職場環境の改善例
3-2.「ストレスを減らす」職場環境の改善例
4.職場改善を実施する上でのポイント
5.まとめ

1.職場環境っていったい何?

職場環境についてみんなで話し合った時に認識がズレないよう、この言葉の意味をまずは整理しましょう。

1-1.二種類の職場環境がある

私たちは何気なく「職場環境」という言葉を使っていますが、次の二つの意味があります。

・国が公表している「快適職場指針」
・上記の指針より広い意味の「ストレスを含めた職場環境」

それぞれの概要を解説していきます。まず「快適職場指針」ですが、これは平成4年に労働安全衛生法が改正された際、国が公表したものです。快適職場指針は、次の4つの項目から構成されます。

1. 作業環境の管理
2. 作業方法の改善
3. 疲労の回復を図るための施設・設備の設置
4. その他の施設・設備の維持管理

補足しますと、「1.作業環境の管理」は、空気の汚れ・臭気・温度・湿度などを適切に維持管理するものです。 たとえば、喫煙所を設ける、クーラーの温度を下げすぎない、 切れた蛍光灯を交換するなどの改善が挙げられます。

「2.作業方法の改善」は、重い荷物を移動させるときは交替で行う、高温多湿の倉庫で作業するときは扇風機を設置するなどの改善が挙げられます。

「3.疲労の回復を図るための施設・設備の設置」は、リラックスできる休憩室や清潔に管理されたシャワールームの設置などが考えられます。

実際の「快適職場指針」は、かなり細かい内容になっています。詳しく知りたい方、下記をご参照ください。

中央労働災害防止協会WEBサイト「快適職場づくりとその効果」

次に、もう一つの「ストレスも含めた職場環境」についてお話しします。

前出の「快適職場指針」では、暑い、重い、暗いなど五感で感じられる内容が職場環境のテーマでした。しかし、最近ではストレスも含めて職場環境という言葉が使われています。

そのため、みんなで職場環境について話し合った時に、認識がズレてしまうことがあり得ます。職場環境の改善に着手する際には、どのようなテーマを対象にするのか、まずは定義づけをする必要があります。

たとえば、人の感情やストレスを含めた職場環境のチェック項目は、次のようになります。

□ 職場内で挨拶や日常会話がなされず、雰囲気が殺伐としている
□ 職場全体がいつも忙しい
□ 職場内で怒鳴り声が聞こえる
□ セクハラが横行しているが、黙認されている
□ 毎月80時間を超える残業を行っている特定の社員・職場がある
□ 離職者が毎月出ている
(中略)

引用:社会保険労務士法人 中村・中辻事務省

上記の引用元では、さらにたくさんのチェック項目を紹介しています。気になる方は、アクセスしてご確認ください。

1-2.職場環境の改善には従業員アンケートが必須

五感で感じられる職場環境、ストレスを含めた職場環境、どちらをを改善するにしてもポイントとなるのは、「人は一人ひとり感じ方が違う」ということです。

たとえば、クーラーの温度を同じ温度に設定しても、暑いと感じる方もいれば、寒いと感じる方もいます。また上司の台詞でも、ある人はセクハラだと感じ、ある人にとっては面白い冗談と感じる場合もあります。

そのため、職場環境を改善する時には、従業員から広くアンケートをとることが必須となります。このアンケートを省いて職場環境を改善した時には、「経営者や担当者の自己満足の職場改善」になりかねないので要注意です。

2. 職場環境の改善のためのアンケート

前章でお話ししたように、職場環境の改善においては従業員のアンケートが重要です。 アンケートをとるときの注意点としては、「プライバシーの配慮」と「人事考課との区別」があります。

まず「プライバシーの配慮」ですが、職場改善のアンケートは、気軽なアンケートとは異なります。セクハラやパワハラなどに関わることもあり、回答者のプライバシーの保護は絶体です。記名式で行う場合は、 直接本人から回収する、あるいは、外から中身がわからないよう封をしてもらうなどの配慮が求められます。

また、このアンケートを人事部で取り扱う時は、部署の中でも一部の人間しか内容を見られないよう配慮する必要があるでしょう。

無記名アンケートを採用する場合は、正直な考えを書いてくれやすいというメリットがあります。ただし、どんな方が回答したかが分からなければ、年齢層や階層による傾向を分析できません。そのため、名前は書かずとも、世代や所属部門を記入する項目はあった方が良いでしょう。

もうひとつの注意点の「人事考課との区別」では、アンケート内容は人事考課と一切関係ないことを明記しとくと、安心して回答しやすくなります。

アンケートの項目の具体例については、下記のwebサイトが役立ちます(後半にアンケートの項目例として紹介されています)。必要な方はご参照ください。

IT人材のためのキャリアライフスタイルマガジン『Mayonez』

3.職場環境の改善例

(1章で解説したように)職場環境には、国が公表する「快適職場指針」に基づくもの、
ストレスを含めたもの、の2種類があります。それぞれの改善例を紹介します。

3-1.「快適職場指針」に基づく職場環境の改善例

・喫煙スペースを設けて空気環境を改善

出典:快適職場づくり事例集
分煙室を設けるのが当たり前の時代。さらに一歩進めて、敷地内の完全分煙や屋外への喫煙スペース設置を実施する企業も目立ってきています。屋外に喫煙スペースを設ける場合、樹木の周りに喫煙用のベンチを設けてリラックス効果を高める企業もあります。

・体温を下げる様々な施策で温熱条件を改善

出典:快適職場づくり事例集
夏の酷暑で屋内の温度が上がった時の対策としては、冷房機や扇風機の設置が一般的です。他の工夫としては、冷やしおしぼりの配布、塩・冷水・製氷機などの設置を行う企業もあります。

・廊下の色やミラーで作業空間を改善

出典:快適職場づくり事例集
大がかりな工事をしなくても、ちょっとした工夫で職場環境の安全度は向上します。たとえば、通路の曲がり角にミラーをつけるだけでも衝突回避になります。また、搬入搬出が多い企業では、廊下の色を「人が通るエリア」と「荷物が通るエリア」で区分けすることで、安全確保を行っています。

厚生労働省・中央労働災害防止協会が作成した『快適職場づくり事例集』には、この他にも豊富な事例が掲載されています。

3-2.「ストレスを減らす」職場環境の改善例

・ロッキーのテーマで残業ストレスを改善

https://www.sankeibiz.jp/business/news/170815/bsj1708150500001-n1.htm

残業の削減で従業員のストレスを軽減する取り組みが広がっています。その中で注目されているのが、三井ホーム本社の成功例です。

午後6時の定時になると、映画『ロッキー』のテーマ曲を流す取り組みを2014年から開始。その結果、残業時間が2〜3割削減したことがメディアで話題となっています。

三井ホームの残業の削減では、「ロッキーのテーマ曲を流している部分」ばかりが取り上げられますが、残業が長くなりそうな従業員に対し、上司や周囲のサポートがあるという側面も見逃すことはできません。

・周囲のケアで子育て中のママのストレスを改善

http://www.first-1.jp/backnumber.cgi?&TYPE=3#info_id151

子育て中のママのストレスを周囲のサポートで軽減する取り組みをしているのが、エイブルを展開する高知県のファースト・コラボレーション。同社では、幼児の育児をしている女性従業員のために「オフィス内に授乳室をつくる」という取り組みをしています。さらに、お客様と交渉がある場合は他の社員に子守り依頼OKや、赤ちゃんの夜泣きで従業員が寝不足にならないよう昼寝制度などもあります。

・好きな日に出社時間を遅らせてストレスを改善

最近では、働き方の多様性でストレスを緩和する活動が当たり前になってきました。具体的な取り組みとしては、フレックス制度、時短勤務、リモートワーク、在宅ワークなどがあります。

フリー出社も取り組みの一つ。島根県に拠点のあるコンサルティング会社「エブリプラン」では、1週間のうち1日に限り、出勤時間を1時間遅らせられる『ニコニコ出勤制』を行っています。同社の通常の始業時間は9時ですが、ニコニコ出勤制の日は10時からの出勤に調整できます。市役所に立ち寄ってから出勤する、カフェでゆっくりしてから出社するなど、自由度の高い使い方ができそうですね。

・従業員のハラスメント教育でストレスを改善

この他、パワハラやセクハラなどのハラスメント対策をする企業も増えてきました。ハラスメントに有効な改善策は専門家による「セミナー」です。パワハラやセクハラの加害者は、自分がハラスメントをしてるという自覚がないケースがほとんど。ちょっとしたことでも相手からするとハラスメントに感じられることを、セミナーを通して気づかせる必要があります。セミナーを受講することによって、ハラスメントが訴訟に発展した時の、会社と個人が受けるダメージも正しく認識できます。

4.職場改善を実施する上でのポイント

職場環境の改善が成功するか否かの分かれ目は、「全社が一丸になって取り組めるか?」です。そのためには、社員の啓蒙活動が大切です。

● なぜ、職場環境の改善が必要なのか
● 現在どんな問題が社内にあるのか
● それを改善するにはどうしたらいいのか

などについて情報発信し続ける必要があります。浸透を図るために、 ポスターを作成したり、イベントを行ったりするのも有効でしょう。

改善をはじめた当初は、従業員から「そんなのムリだ」「仕事に支障が出る」といった否定的な意見が出るかもしれません。「職場環境の改善によってこんな成果が出ている」という部分を共有しながら進めていくと、理解してくれる社員が増えやすくなります。

職場改善を実行する時の基本的なフローは次の通りです。

1. 職場環境改善等についての合意の形成
2. 職場環境の現状分析と評価
3. ストレス要因のリストアップと対策の立案
4. 対策の実行
5. 対策の評価

スケジュール立案や調査の具体的な方法については、専門家が作成した資料があります。下記のアドレス(外部リンク)をご参照ください。

http://www.tmu-ph.ac/pdf/dounyuutennkaimanual.pdf

5.まとめ

最後にここで解説してきたことを振り返ってみます。

まず職場環境には、国が公表している「快適職場指針」の内容と「ストレスを含めた職場環境」の二種類があります。

みんなで話し合うときには混乱しないよう、どちらの意味合いで職場環境というワードを使っているのか定義する必要があります。

実際に職場環境を改善する時には、従業員に広くアンケートをとりましょう。そうでないと、経営者や担当者の自己満足になってしまいます。

職場環境の改善の分かれ目は「全社員が一丸になること」です。そのためには、啓蒙活動やフローに沿った進捗が大切になってきます。