あなたの企業は内定者研修を実施していますか?
研修ではなく懇親会を開催すれば内定者のフォローにつながると考える企業は多いかもしれません。
2017年卒の学生を対象に実施されたマイナビの調査では「内定者研修を開催してほしい」と回答した学生の割合に対して、実施している企業数はわずか1/3という結果が出ています。
その要因としては、企業側のマンパワー不足や、実施による内定辞退の不安があげられます。
しかし、内定者研修を導入することで、早期退職率の低下や入社モチベーションを上げるなどの効果が期待できます。
そこで今回は、内定者研修を取り入れている他社企業の事例と共に、研修実施の重要性を説明していきます。入社までに内定者をどのように育てているのかなど、具体的な話もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.内定者研修はどうして行われるのか
2.他社の内定者研修について紹介!
2-1.開催期間別の研修内容紹介
2-2.取材して分かった研修で内定者に求めるもの!
3.内定者研修を開催するためには
3-1.内定者研修で取り入れるべき2点
3-2.内定者研修開催のための5ステップ
4.まとめ
1.内定者研修はどうして行われるのか
今まで実施してこなかった企業は、内定者研修を行うことをお勧めします。というのも下記のメリットが得られるからです。
・採用コストの削減
・内定者のモチベーションの向上
この章では、内定者研修を実施することで得られる、2つの効果について説明していきます。
ぜひ研修を行う根拠づけとして参考にしてください。
新卒採用にかけるコストは一人当たり約50万円といわれています。もし研修を行わずに内定者が入社すれば、ミスマッチによる早期退職に繋がりコストを無駄にすることになります。
そのため、内定者研修を実施することで内定者に入社前から事業内容や職場環境わかってもらい、モチベーションの向上につなげることができます。
しかし、内定者研修を実施している企業は多くないのが現状です。マイナビの調査によると、下図のように17年卒の学生の36.7%が「内定者研修を行ってほしい」と回答していますが、実際に実施した企業はわずか1/3です。
なぜ学生の期待の割合と導入企業の割合で大きな差が生まれるのでしょうか。
考えられる理由として、「企業が学生に割く時間がない」「研修による辞退を恐れているため」などがあげられます。
ですがこの理由が払拭できるほど、研修は企業にとってメリットになります。
次章では内定者研修の事例を効果と共に紹介します。
ぜひ参考にして研修を取り入れてみてください。
2.他社の内定者研修について紹介!
内定者研修の内容など、他社がどんな取り組みをしているか気になりますよね。
この章では、他社の内定者研修の事例をご紹介します。
そして、株式会社サイバー・バズさんに研修を組む際に参考になるお話をきいてきました。
ぜひ、研修を組む際の参考にしてください。
2-1.開催期間別の研修内容紹介
内定者研修を取り入れている企業の事例をご紹介いたします。
開催期間別に研修を紹介しますので、どの研修を取り入れるか検討中の方は参考にしてみてください。
▼合宿研修
・株式会社ミクシィ
http://pr.mixi.co.jp/entry/20160824
ミクシィグループでは毎年内定者同士の懇親と、個人の成長のきっかけを作ることを目的として、合宿研修を実施しているそうです。
2017年度の合宿の目的は下記のとおりです。
・自分自身を知り、伸ばすべきポイントを知る
・ともにチャレンジする同期を知る
研修内容:
体を動かすアクティビティと、室内にて自分や同期の行動を振り返るプログラムです。
アクティブティは、チーム全員が協力しなければ達成できない内容にしています。
その後、室内にて気づいたことを発表し、今後どのように改善していくかを考えます。
効果:
アクティビティを通して、「指示を出すのがうまい」「効率的な方法を探すのがうまい」という良さを見つけるだけでなく「指示を待ってしまう」「積極的に意見が言えない」など自分の改善すべき点を見つけることができます。
室内での振り返りを行うことで自分の側面だけでなく同期の側面にも気づくことができます。
・ありがとうホールディングス
http://arigatou-holdings.co.jp/approach/activities/2016/1211/3519/
合宿研修として2泊3日の研修を開催したそうです。
下記の目的を合宿期間で内定者に身につけるために開催しています。
・入社までのモチベーションをあげる
・内定者同士のコミュニケーションをとらせる
・社会人としての基礎を身につける
研修内容:
事前に課題として出していた「理念と価値観」について 2018卒採用に向けた会社説明会の資料作成を、プレゼンで発表してもらうという内容です。
『5ストレングス』
自分の強みを知り、それをいかに生かしていくかを各自で考え、まとめて発表するという内容です。
効果:
来年度に向けた会社説明会の資料・説明という課題での研修では、会社のことを知るだけでなく、プレゼン練習など社会人に必要なスキルを身に着けることができます。
そして自分の強みを知り、周りに知ってもらうことで入社後でもその強みをいかした仕事ができるようになります。
・株式会社カカクコム
http://ur0.biz/Hh0l
一泊二日の目的は「配属後に期待されることを体感する」です。
研修内容:
・シミュレーション研修
実際にビジネスで起こりうる一場面を想定し、上司、チームメンバーとコミュニケーションを図りながら企画を提案するという内容です。
効果:
自分たちの力でやりきるという目標に向かって集中力を持続させる力をつけさせることができます。
▼一日研修
・株式会社エバーセンス
https://eversense.co.jp/blog/3399
インターンとして来社の機会はありましたが内定者同士が顔を合わせたことはなかったため、今回の研修を企画したそうです。
企画にあたり、下記の目的からワークショップ研修を開催しました。
・同期となる内定者同士で良好な関係を築いてほしい
・「なぜ、この企業へ入社するのか」というお互いの原点を確認してほしい
研修内容:
内定者それぞれの「いま」「これまで」「これから」を知り、考え、伝えるという内容です。
「いま」を知る
思考パターンや現在のスタンスを知るためにシンプルな質問から内定者の思考を知ることができます。
「これまで」を知る
入社前までの人生をグラフに表しプレゼンします。
そのプレゼンを聞いたうえでお互いの魅力を発表しあいます。
「これから」にむけて
入社後のことを考えるテーマです。
なぜエバーセンスが社会に必要なのかというお題から深堀りして考える力を身に着けることができます。
効果:
いまとこれまでを知ってもらうことで、内定者は自分の考え方をわかってもらい、同期との連携が今後ともしやすくなります。
これからを考えることで社会人として身につけなければならない考える力を入社前の研修から実践しておくことができます。
・Acroquest Technology 株式会社
http://ur0.biz/Hh0p
アクロクエストの内定者研修の最後として行われるのが、 初任給公開交渉です。
研修内容:
自分の価値についての認識がほかの社員と自分でズレないことで、今後その人にどんな仕事を任せることが全員で理解することを目的としています。
初任給公開交渉とは、自分から入社後の給料を提案することです。
会社に自分にはこんな価値があるのでこの給料ですよねということが提案できます。
効果:
内定者が自分の価値を知り、仕事へのモチベーションに繋げることができます。
・わくわくbase株式会社
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=658690137671297&id=496232703917042
大きな目的はみんな同じですが、その間のプロセスは人によって多種多様に存在します。そのプロセスの考え方を共有するために研修を行いました。
研修内容:
レゴブロックを使用したチームビルディング研修を行っています。
ブロックを組み立てて自分を表現することで言葉や文字だけの自己紹介よりも自分が客観視でき、仲間から見た自分もとらえることができます。
言葉はいうだけでどれだけの重みをもっているのか伝えきれませんがこのブロックを使って自分を表現して具体的にイメージをもつことを学ぶことができます。
効果:
入社前に個人の考えや個性が社員や同期に知ってもらえます。
・パーソルキャリア株式会社
https://tyanbara.org/record/201509305689/
NPO法人ゼロワンが考案したチャンバラ合戦をパーソルキャリアの内定者研修で利用したそうです。
研修内容:
チームを組み、作戦会議ののち、試合を行います。試合後すぐにミーティングを行い、試合の悪かった部分とそれをどうすればいいのかを振り返ります。PDCAを通じて改善できるようにFBをもらいながら次の作戦を練ります。
効果:
アクティブに動きながらも、研修として自分の行動とチームの行動を見直し、相手の戦略にたいしてどう向き合うかを考えることができます。
▼職場見学
・株式会社シアーズホーム
http://searshome.co.jp/recruit/blog/150/
注文住宅建築を中心に事業を行っているシアーズホームでは、入社後に勤務予定地となる職場を見学することができます。
実際に職場にて説明を受けることで社員の会社の愛着度もわかります。仕事風景も見せるとでより社内の雰囲気を知ることができます。
効果:
社内の環境を見せることで内定者は自分の働く環境をイメージしやすくなります。
2-2.取材して分かった研修で内定者に求めるもの!
いくつかの事例を紹介してきました。その中でも今回は一日研修を企画している企業へ取材に行ってきました。一日の研修はプログラムも比較的決めやすく、内定者研修を始めて取り組む企業は一日研修から始めてみるのがいいと思います。
そこで今回は、株式会社サイバー・バズさんの内定者研修の企画方法を取材してきました。ぜひ、参考にして研修を企画してみましょう。
https://www.cyberbuzz.co.jp/blog/2016/12/2017.html
【研修内容紹介】
大山登山の研修で内定者9名と社員6名人事2名で登山を行ったそうです。登りは全員で登りますが、下りはチームに分かれてグループトークで下ります。
その際のトーク内容は、内定者同士でお互いのいいところを先輩社員に紹介と人の夢を応援し、自分の将来の夢をアウトプットすることを目的にしていました。
下山後は懇親会を兼ねて食事をしながら研修の振り返りを行うという内容でした。
――研修の目的の決め方は何でしたか。
「研修の目的はその年の内定者の色によって変えていますね。
その年の内定者の様子を見て、入社までにこの部分を身に着けて入社してほしいところを目的として決めています。」
――なぜ山登りを研修にしたのでしょうか。
「2017年卒の内定者たちの目的が、2つありました。
1. 一体感の醸成
2. みんなでやりきる力
これを身に着けさせるために何をすべきか考えたときに、いくつか候補があがったのですが、全員で同じゴールに向かってどうすべきかを考えてやり抜くところが研修として身につくのが登山だと考えて、登山に決めました。」
――研修までのスケジュールを教えてください。
「研修を決めてから当日までは一か月半ほどのスケジュールで取り組みました。」
①研修日を決定
②内定者へ連絡
③細かい研修内容を決定
④研修当日
――研修で苦労した点はありますか。
「研修の準備段階では、山の選定が大変でした。リタイアを出さず、けれどもすぐに登れるようではダメなギリギリの難易度の山を、口コミや登山者のブログを読んで選定しました。」
――学生の反応はどうでしたか。
「やってよかったという意見がたくさんありました。
実際に研修中に山登りをリタイアする寸前までの子がいたんですけど、その時にその子の荷物を持つよう声をかける子や、杖を拾ってきて差し出してくれる子がいました。
周りのフォローのおかげでリタイアすることなく登りきることができたことがアンケートにも反映されていました。」
――内定者研修を行うことで内定者のどういう部分を見ていますか。
「内定者が必ずしも入社の時に同じスタートラインに立つ必要はないと考えています。つまり、内定者が研修をどう活用するのかが見たいです。
例えば、先輩社員と交流できる研修で先輩社員とどういう風に交流して、じゃあそのあと個人的に飲みに連れて行ってくださいと言えるほどの関係性になる子もいれば、連絡先すら交換しないで何もせずにその場で終わる子もいます。
入社前の行動として能動的であるかが見たいので、研修から見えてくればいいと思っています。」
サイバー・バズさん取材にご協力いただきましてありがとうございました。
内定者研修を行うからこそ見える部分や、内定者へ入社前に企業が求めるものが研修になるという話を参考に、ぜひあなたの企業でも内定者研修に取り組んでみましょう。
3.内定者研修を開催するためには
では実際に研修内容を決めていくにはどうするべきでしょうか。
この章では、内定者研修を行うにあたり取り入れるべき点と、研修までの順序を紹介します。大まかな流れの把握をして内定者研修までのスケジューリングの参考にしてください。
3-1.内定者研修で取り入れるべき2点
内定者研修を行う上で重要な点は2つあります。
・内定者の不安要素を知る
・研修を行う目的を明確にする
▼内定者の不安要素を知る
まず、内定者が入社までにどういうことを不安に思っているかご存知ですか?
下記の3要素すべてにおいて共通して言えるのは、「内定者は会社の事をわかっていない」ということです。
就職活動での面接などから得た部分しかわからないため、入社前に職場環境や社員の交流が図れる場を提供することでその不安要素は解消されるでしょう。
2014年卒学生を対象にした調査より下記の不安要素があげられました。
【内定者の不安要素上位3つ】
・入社予定の会社のことをよくわかっていない
・自分は将来この会社でやっていけるのか
・会社の一員になれるか
▼研修を行う目的を明確にする
企業は内定者にどうなってほしいのか明確な目的を作ることが重要です。
研修の際にその趣旨をきちんと伝えることで学生も意識をもって取り組んでくれます。
目的をブレさせないためにも一つに絞って行うことをおすすめします。
【内定者研修を実施する目的】
・会社の仕事内容を把握できる
・同期同士が打ち解けあうことができる
・普段の仕事の様子を見せることができる
・社員の働く環境を教えたい
・適性をあらかじめ見ておきたい
3-2.内定者研修開催のための5ステップ
研修を実施するために必要な5つのステップを紹介します。
実際に内容が固まり学生へ連絡する際は、急なスケジュール内容であると不信感を抱かれる要因になります。そのため、実施スケジュールは十分に余裕を持って進めましょう。
①研修の目的を決める
3-1.章をもとに、内定者研修の目的を決めましょう。
②開催期間の設定
・合宿研修
何泊何日なのか、時期はいつかなどを伝えましょう。
・一日開催
日付を指定しましょう。
・定期開催集合型研修
一週間に一度集合型の研修であれば、何回集まるのかを明確に決めましょう。
③研修の内容を決める
目的に合わせた研修内容を決めましょう。
内容を振り返るチェックシートを利用して、内定者に向けた研修内容に適しているか確認しましょう。
“チェックシート”
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- □ 研修で何を伝えるか、その目的と内容がはっきりとしているか
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- □ 研修の狙いとスケジュールに齟齬はないか
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- □ 受講者のレベルとプログラム内容がマッチしたものになっているか
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- □ 設定したタイムスケジュールに無理はないか(ある程度の余裕はあるか)
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- □ 研修全体の流れに、変化・メリハリは付いているか
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- □ 研修中における受講者の変化(態度変容)を想定しているか
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- □ 突発事項や研修のスケジュール変更に、対応できるようになっているか
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- □ 研修のアウトプット、成果が何であるかを想定しているか
https://jinjibu.jp/f_training_and_development/article/detl/outline/784/
④学生に連絡
学生に連絡する際は下記の点に注意しましょう・
・スケジュールの記載
研修についてそれぞれのスケジュールをすべて伝えましょう。
全員の参加を優先するならば、内定者にスケジュールを確認することも一つの手です。
内定者の都合もあるため、連絡は一か月から二か月前に行うのがベストです。
・研修時の費用について
研修の際の交通費や、時給が発生するのかどうかを記載しましょう。
内定者からは聞きづらいところなので企業から伝えることが大切です。
・研修内容を伝える
研修は何を行うのか、2章であげた内容などを参考に自社で取り組むべき研修内容を伝えましょう。研修内容がわからなければ、内定者も困惑してしまいます。
また、事前に準備するものなどあれば指示しましょう。
⑤研修準備
研修日に向けて準備を行いましょう。
内定者の行動をある程度予測し、ケースバイケースで行動できるように資料の確認など徹底しましょう。
また、スケジュールを一度通しで社員でやってみるなど工夫しましょう。
4.まとめ
いかがでしたか。
内定者のフォローとして研修は、内定者のモチベーションや能力の向上に有効的です。
しかしそのためには自社できちんと内定者が入社までにどうなってほしいかきちんと目的を定めなければなりません。
自社に合った研修方法を見つけて内定辞退を防ぐ研修を行っていきましょう。