会社をさらに発展させ、組織を強化させるためには新しい人材の確保が欠かせません。
しかし、新卒や中途を採用するには人員と金銭的な負担、そして時間もかかってしまいます。
そのため、できるだけ採用コストを削減したいと考えている方も多いのではないでしょうか?
自分の会社は採用コストをかけすぎているのか平均額も気になるところですが、会社によって費用がバラバラであまり参考にならないのが現状です。
採用コストを削減するために大切なのは、今ある無駄をしっかり省くことからはじめましょう。
そして決められた予算内で採用した人材にノウハウを身に着けさせる環境づくりをしていくことが大切です。
今回は、採用コストの基本的な知識として、平均額や種類ごとの解説、コスト削減ノウハウをご説明します。
目次
1.採用コストについて
1-1.採用コストとは
1-2.自社の採用コストを把握する
2.どんな種類のコストがあるのか?
3.コスト削減ノウハウ
3-1.内部コスト見直し
3-2.外部コスト見直し
4.まとめ
1.採用コストについて
それでは、まず採用コストとは何かを解説します。
参考として平均額もご紹介しますので、自社の採用コストと見比べながら現状を把握してみましょう。
1-1.採用コストとは
採用コストとは、企業が新しい人材を採用するためにかかる経費のことであり、「採用費」とも呼ばれます。
この採用コストは求める人材によって異なり、新卒、中途、管理職などのハイスペックの人材、英語が堪能なグローバル向けの人材など、タイプによって大きく変動します。
自社がかけている採用コストは、他社と比べて高額なのか安価なのか、採用コストをおさえたい人にとっては気になる部分です。
しかし、採用コストは業種によっても大きく異なり、平均額はあまり参考になりません。
とは言っても、他社はどれくらい採用費や求人広告にコストをかけているのか気になるところですよね。
2014年にマイナビが行った調査によると、採用費と広告費の平均は次のような結果が出ています。
まずは実際に採用費にあたるものと広告費とはどんな費用のことを指すのか、一覧でまとめました。
■採用費
- 広告費
- 入社案内
- ホームページ
- ダイレクトメールなどのツール作成費
- DM発送費
- セミナー運営費
- アウトソーシング費用
- 資料発送費
このように、広告費以外にかかる費用をまとめて採用費に分類しています。
■広告費
- 就職情報誌
- 就活情報サイト
一般に公開される採用情報の掲載や出稿するための費用です。
〇新卒採用の採用費
http://heartrock-noma.com/contents_628.html
・総額
上場企業:1,205万
非上場:約565万
・広告費
全体:319万
上場:566万
・入社予定者1人あたりの採用費
全体:55万
上場:45万
非上場:58万
1人あたりの採用費は、55万円と高額な費用がかかっています。
これが数百人単位で採用する企業の場合、採用コストの金額は数千万円レベルにもなります。
〇中途採用者の採用費
http://heartrock-noma.com/contents_628.html
・人材紹介:561万
・求人広告:227万
従業員規模が大きい企業ほど、採用コストをかけていることがわかっています。
また、業種別でみると金融がトップ、次いでメーカー、ソフトウェアの順で採用コストをかけていることが表からわかります。
ちなみに中途採用のコストは、その人のスキルによってかなりの違いがあります。
転職先の業種の経験がどれくらい豊富か、どんなスキルを持っているのか、年齢、などさまざまな条件によって大きく変動するのです。
具体的にはおおよそ80~300万と開きがありますが、基本的に新卒よりも高額になる傾向があります。
1-2.自社の採用コストを把握する
まず、採用コストを見直すには、自社の現在のコストをしっかりと把握しましょう。
採用コストの計算方法は、次の計算式で平均を算出できます。
「総経費÷採用人数=1人あたりの採用コスト」
サイト広告費、情報誌への掲載費、そしてセミナーへの参加費など、このように採用のために必要だった費用を洗い出し、合算してみましょう。
先ほどもご説明したように、新卒であれば1人あたり50万、中途採用は80~300万程度が平均です。
あくまで平均であり、業種や労働市場の状況によって変動するコストのため一概には言えませんが、これよりも大幅に1人に採用コストをかけている場合は、今一度コスト削減を目指してみましょう。
2.どんな種類のコストがあるのか?
採用コストの種類は、さらに細かく分類することができます。
また、大まかには外部コストと内部コストの2つに分けられますが、どんな種類があるのかをそれぞれ簡単に解説します。
■内部コスト
内部コストは会社側が人員や時間を割くときにかかるコストのことです。
・面接費用…・交通費1人あたり500円~10,000円(交通手段によって違いあり)
・従業員からの紹介ボーナス…一人あたり一律1,000円~
・筆記テスト…場所代や問題作成を自社で行えばほぼコストなし
・セミナー開催費…5~30万(講師により違いがあり)
たとえば筆記テストであれば会場の確保に、プリントの用意、試験官など物だけでなく人材のコストもかかります。
これをおさえるためには、自社の社風に合うのか合わないかを早期に見極めることが大切です。
早い段階で判断ができず、二次面接、最終面接と多くの人材を残すと、その分コストが多くかかってしまいます。
■外部コスト
・広告費…5万円~
・ウェブサイト製作費…自社で行えば1万円程度。外注なら10万~と高額。
・雑誌への掲載費…1か月でおよそ30~80万円
・合同セミナーへの参加費…10万円~
・合同会社説明会…10万円~
外部採用コストは、人材を集めるための広告として打ち出した、情報誌への掲載費やウェブサイトの製作費が代表的です。
また、ほかの会社との合同セミナーや会社説明会など、社内の人材を割くのもコストの一部です。
3.コスト削減ノウハウ
それでは、実際に採用コストを削減するには、どんな点に注意すればいいのでしょうか?
内部コスト、外部コストそれぞれの削減ノウハウをそれぞれ詳しく解説していきます。
3-1.内部コスト見直し
まずは内部コストの見直しからご紹介します。
①不適切な人材を早い段階で切る
内部コストを見直すには、面接にかける時間や費用をカットするのが有効です。
具体的には、面接時に会社の社風に合わない、不適切だと判断したら早い段階で不採用にすること。
書類選考、そして一次面接の時点で、採用者と応募者の間にすれ違いがないか、欲しい人材なのか、求めるスキルを持っているのかを明確にしておきましょう。
たとえば、面接の際には入社したらどんなことをやりたいのか、希望の職種と合わせて聞いておくことで、両社の間にずれがないかを確認できます。
ズレが見抜けないまま二次面接や最終面接まで進んでしまうと、会社が面接に割く時間や対応する社員が増え、それだけ採用コストがかかる上、せっかく採用しても短期間で離職するリスクも高くなります。
つまり、採用業務の質そのものを高めるため、希望者の考え方を一次面接でしっかり理解できる質問項目、そして優秀な面接官が必要です。
面接官としての経験が豊富で、会社の社風や理念をよく理解している人材に担当してもらいましょう。
②面接の内容を文書化して面接官の技量向上に努める
面接でのコストを削減するには、先ほどもご説明したように面接官そのものの技術向上も重要です。
面接経験が豊富で、かつ知識を多く持つ面接官がいれば、早い段階で会社に合った人材かどうかを判断することができます。
技量を高めるには、まず面接で何を尋ね、どんな点を見て判断したのかを文書化し、データにしておきましょう。
・面接官の名前と日時
・志望動機
・キャリアと実績
・自社の事業への理解および、どんな業務に携わりたいか
・面接をして面接官はどう感じたか
・次はどんな点に重視して面接すべきか
これらを文書化し、次の面接官に見せられる状態にしておくことで、面接官の新しい気づきと同時にこの人はこんな点を重視しているのか傾向もつかめるようになります。
また、これをPDCAサイクルにできるため、面接官全体の経験値、知識量のアップの貢献にもなります。
③今いる社員をやめさせない事
採用コストを減らすには、そもそも今いる社員をやめさせない環境づくりも大切です。
せっかく優秀な人材を確保したとしても、数年で退社してしまえば代わりの人材を確保するため、再び採用コストが発生します。
それを根本から防ぐために、今いる社員が簡単に退社しないよう社内の雰囲気や業務体制を見直しましょう。
現在退職者の多さに悩んでいる会社は、まずどうしてやめてしまうのかその原因を探ってみてください。
業種によって退社する理由は異なりますが、特に多いのは残業が多く休日が少ない、社員同士の関係がよくない、仕事にやりがいを感じないなどが代表的。
入社した新たな人材が早く会社に溶け込めるように、きちんとした指導、フォローができる環境を目指しましょう。
④業務のフロー・プロセスの見直し
内部コストの削減のためには、面接時間や面接までのプロセスの見直しも行ってみましょう。
面接にかかる業務のむだを無くすことで、経費、そして時間の削減につながります。
たとえば業務のスケジュール表を作成し、誰もが管理しやすい環境にする、ほかにも面接時間の目安を作り余分な時間をかけないなども、業務の効率化によって採用コストの削減になります。
⑤必要な人材のターゲットを細かくしぼる
企業がどのような人材が必要なのかを、より細かく見極めることも、不必要な人材を面接する前に選別できる大きなポイントです。
どのような性格、経験、学歴の人材を求めるのかはもちろん、性格であればより具体的にキーワードを絞り込みましょう。
たとえば「活動的」「責任感がある」「コミュニケーション能力が高い」など、自社が希望する人材を明確にしておくことで、本当に採用したい人材の応募確率が上がるのです。
その結果、自社に合わない応募者の選考の手間が減り、採用業務にムダがなくなります。
3-2.外部コスト見直し
次に外部コストを見直すときのポイントを解説します。
① 費用対効果が高い求人方法を選ぶ
費用をかけずに多くの人材を集めるためには、どんな求人方法がもっとも費用対効果が高いのでしょうか?
もっともコストが低く、人材が集まりやすいのは自社の採用ページとは別に採用サイトへの登録がおすすめです。
採用サイトは複数の企業の採用情報のみが掲載されたサイトで、多くの新卒、中途採用者が目を通します。
かかるのは初期の掲載費のコストのみで、一度掲載されると期間中24時間365日誰でも閲覧可能なので、人材を割かずともできる広告として、今は採用に力を入れたい会社にとって外せない存在と言えるでしょう。
たとえば大手ではマイナビやリクナビなどは知名度が高く、会員数が非常に多いです。
その反面、掲載している企業も多いからこそほかの求人の中に埋もれてしまう可能性もあるのです。
そこで、「Wantedly」など新しいアプローチでの求人方法を取り入れるのもおすすめです。
Wantedlyはフェイスブックを通じて人脈を広げたり、欲しい人材の募集をかけたりできるサイトです。
かっちりとしたエントリーフォームはなく、カジュアルに企業に行きたい気持ちを表現する「話を聞きに行きたいボタン」が用意されていて、ユーザーが企業を身近に感じられるシステムが導入されています。
②自社採用サイトを作って広告費をゼロに
外部の採用サイトに登録をするよりも、さらにコストを削減するには自社の採用サイトを作る方法もあります。
ハローワークへの求人票、大手求人サイトなどの求人サイトの利用のほかに、意外と見落としがちなのが自社の採用ページです。
求人情報サイトは、あくまでテンプレート内に文章を入力する形のため、文字数や情報量に限りがあります。
会社の細かい社風や他社との差別化ポイントを伝えるには、自由にカスタマイズできボリュームを増やせる自社サイトがおすすめです。
一度自社の採用サイトを作成すれば、ほかのサイトに出稿が必要な場合も元のサイトのデータをまとめる形で対応ができるため、最初に作成しておけば後に大きなコストダウンにつながります。
また、採用サイトのデザインも企業イメージに合ったものを心がけましょう。
企業理念や歴史など基本的なコンテンツのほか、会社説明会でよく聞かれる質問項目をQAコンテンツとして充実させるのもおすすめです。
より企業への具体的なイメージを求職者が理解できれば、会社の理念に沿った人材が集まりやすく面接の効率化にもつながるでしょう。
たとえば、リクルートホールディングスは宇宙をイメージした採用サイトを作っています。
黒を基調としたおしゃれなデザインに、カーソルと連動する3D表現がスムーズで、思わず閲覧者がすみずみまでチェックしたくなるような魅力がつまっています。
https://liginc.co.jp/web/useful/151082
LINEの新卒採用ページでは、新卒への伝えたいメッセージをはじめ、見やすく必要な情報がまとめられています。
シンプルですが清潔感があり、技術職や総合職など募集している部門ごとに、くわしく解説している親切な構造が評価されています。
https://linecorp.com/ja/career/newgrads/
③採用管理システムを導入する
これまで人材の採用管理はエクセルを用いることが基本でしたが、最近では専門の採用業務を支援する採用管理システムを利用する企業が増えてきています。
採用管理システムは、求人票の作成、候補者一人一人のデータの管理、内定承諾者のフォローなど、採用に関する業務一括をフォローしてくれるシステムのこと。
新しくエクセルを使ってデータを作成する手間がなく、入力だけで採用に必要な情報を一括管理できるのです。
サイトURL:
http://ur2.link/G9PD
料金:資料請求にて
i-webは1998年から採用支援システムとして使われている老舗です。
リクナビ、日経就職ナビとリアルタイム連動し、企業から新卒への働きかけがスムーズに行えます。
応募から選考予約などの手続き、アンケートなど応募者と人事のコミュニケーション機能も充実しており、採用活動に関わるすべての人の業務を効率化するシステムです。
サイトURL:http://it-trend.jp/employment-screening/6488
料金:無料プラン、有料プラン9,800円~70,000円
応募者情報の管理に面接調整予約、内定者フォローなどが可能の採用管理システムです。
初期費用とサポートが無料で、採用業務の見える化、自動化を進められます。
④ダイレクトリクルーティングでコスト削減
ダイレクトリクルーティングとは、企業が人材を探して誘う採用方法です。
人材紹介会社などを使わず自社でSNSやデータベースを活用し、気になる人材を見つけたら直接スカウトをすることで、外部コストの大幅削減につながります。
たとえば検索エンジンを運営するYahoo!株式会社では、デザイナー採用に「ViViViT(ビビビット)」というSNSサイトを活用した事例があります。
ポートフォリオ機能によって候補者を絞り込み、ヤフー自ら声がけをして人材を採用したのだそうです。
ただし、優秀な人材を確保するには相手に自社への興味を持ってもらえるような情報発信が求められます。
自社のフェイスブックなどのSNS、企業ホームページのコンテンツの充実など、会社の魅力を発信してファンになってもらえる情報発信を心がけましょう。
また、こうして魅力的な情報を提供していれば、潜在的ファンを増やし将来的な企業への応募数の増加にもつながります。
⑤人材紹介にかかる料金を安いところにシフトする
もし採用のために人材紹介会社を利用している場合は、紹介料の価格を見直すのもコストダウンにつながります。
紹介料の相場は業種によって違いがありますが、年収の約3割が相場です。
これは募集にかかる費用や人件費の原価があり、そこに利益が発生する額での目安です。
ただし、管理職クラスになると4割、第二新卒クラスは2割と候補者のレベルによって違いもあります。
また、たとえサイトの紹介料が安くても紹介された人材の能力が低ければ、結果的に会社によっては採用コストを余分にかけることになります。
紹介料が高くても、成功率の高いところを選んだ方が、採用コストの減少につながる可能性もあるため、複数の紹介会社を利用してみましょう。
4.まとめ
人材不足に悩む業種は、新卒の採用のために求人広告費に多額のコストをかけています。
年々金額も上昇しており、2014年に求人広告費は平均353万円もの金額。
人材紹介では382万とコストが増加しているのがアンケートで判明しています。
しかし、採用コストをかけたからと言って必ず優秀な人材が確保できるとは限りませんし、短期間で退職されればコストが水の泡になってしまいます。
まずは雇用した人材がやめないよう、社内環境を整えることを中心にはじめましょう。
ほかにも、後の財産になる自社ホームページでの採用ページの充実、人材紹介会社の見直しなど、効率的に人材を引き込めるよう外部コストも見直していくことが大切です。