新卒3年以内の離職率は3割!早期離職を防ぐ3つポイントを徹底解説

人材・教育

ニュースでも取り上げられているように、新卒は今や全体の3割が3年以内にやめていると言われています。

働き方改革が叫ばれる昨今、多くの企業が気にしている離職率。
特に新卒の離職率に頭を悩ませている企業は少なくありません。

新卒が戦力として育つまで3年と言われながら、第2新卒として転職活動をして離れていってしまう新卒社員。1人あたり50万かかると言われる新卒採用活動で、人がどんどん辞められてしまうのでは会社の損失は計り知れません。

新卒入社社員の早期離職はなぜ起こってしまうのか。原因がどこにあるのかを探り、少しでも離職率を抑えながら、会社の質を向上させていきましょう。

【目次】
1. 新卒が離職する本当の理由
2. あなたの会社は大丈夫?離職率が上がる傾向をまとめました
2-1 職種・業種別ランキング 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
2-2 会社の制度としての傾向
3. 離職率を抑える3つのポイント
3-1 内定時のミスマッチは無くす
3-2 労働環境を見直す
3-3 社内コミュニケーションを活性化させる
4. 中途採用のメリット
5. まとめ

1. 新卒が離職する本当の理由

新卒を採用するメリットは、将来的なリーダーや重要な人材になってもらうため。
今会社を動かしている人々はいずれ退職してしまいます。
その後、会社を動かす存在として新卒からキャリアを積んだ社員に引き継げるのです。
つまり新卒は企業にとって大きな先行投資とも言える存在。
そんな新卒を採用したにもかかわらず、短期間での離職率が上がっているのはなぜでしょうか?
ここでは新卒とはそもそも誰が該当するのか、離職率の計算方法や離職理由をご紹介します。

〇新卒の定義

そもそも新卒とは「新規卒業」を略した言葉です。
その年に学校を卒業、もしくは卒業予定の人が対象であり、すでに卒業済みの人は「既卒」です。
ただし、企業によっては卒業後2~3年は既卒者ではなく、「新卒」として採用を実施しているところもあります。

〇離職率の出し方

それでは次に離職率の計算方法を見ていきましょう。
離職率は1年間に退職した人数に対し、在籍社員の割合で計算します。
ただし、新卒入社で3年以内に退職する割合と、中途入社が1年以内に退職する場合も含まれます。

法的に計算方法が決まっているわけではありませんが、基本的にこのような計算式で算出できます。

式:当期間中の離職者÷当期間中の在籍人数×100=離職率(%)
例:3人÷100人×100=3%

企業によって違いはあるものの、大まかにはこのように計算ができます。

〇終身雇用制が変化している

どうして新卒の離職率が上がりつつあるのか、その理由の一つに終身雇用制の変化が挙げられます。
戦後は年功序列で賃金がアップし、終身雇用が保証されてきました。
しかし、最近は業績悪化によって60歳までの定年を謳っていても、実際はそれより前に早期退職を迫られるケースも増えてきています。
日本は戦後の経済成長期を終え、徐々に市場が縮小しつつあるからこそ、よりいい条件を求め転職をするのが当たり前になってきているのです。

新卒たちの離職理由

それでは転職に踏み切る新卒たちのきっかけはなんでしょうか。
以下が主な理由になります。・仕事が合わない新卒の離職理由第1位が、自分に仕事が合っておらず、適性を活かせないと判断したため。
自分で志望した会社ではあるものの、企業の仕事をしっかり把握できていなかったのが理由として考えられます。・就労時間が長い、休日が少ない特にサービス業に多い、就労時間が長く残業も多い、さらには休日も実際は少ない、などのいわゆるブラック企業だったと感じ、やめる新卒が増えてきています。
給料やキャリア形成などは入社前に知ることもできますが、実際の仕事のハードさは入社後でないとはっきりわかりません。
就労時間が長い上、休日も思うようにとれない職場は疲れがたまり体を壊すリスクも高まります。
最終的に、心身ともに限界を感じて早期に離職してしまう新卒も多いのです。

反対に3年以上のキャリアを積んでからの退職理由は、結婚や子育て、給料など、また別の理由がランキング上位に挙がってきます。

新卒たちが企業・労働に求めるもの

では新卒は企業にどんなことを求め就職したい、ここで働き続けたいと考えるのでしょうか?

・人間関係のよさ

新卒は先輩や同僚にめぐまれ働きやすい環境であることを望んでいます。
多少仕事内容はきつくても、尊敬できる先輩がいるいい人間関係が築けるところは仕事が続けやすいです。

・賞与など給料面の充実

バブルがはじけてから不況が続く現代では、働いても給料が少なく結婚したくてもできない若者が増えてきています。
特にバブル後の不況を肌で感じ、生きてきたいわゆるゆとり世代は、やりがいを重視しつつもお金の面も非常に意識しています。
将来年金がもらえないかもしれない、といった不安感からできるだけ給料面の条件がいいところなら多少仕事が大変でも働きたいと考える人がいます。

2. あなたの会社は大丈夫?離職率が上がる傾向をまとめました


離職率は会社の職種や業種でも大きく違ってきます。
実際の離職状況のランキング、そして離職の原因になる会社の制度の傾向をご紹介します。

2-1 職種・業種別ランキング 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」

厚生労働省が発表している、新卒の離職率をもとに離職率が高い職種や業種をランキング形式でご紹介します。

1位 生活関連サービス業、娯楽業 20.6&
2位 教育、学習業 20.4%
3位 宿泊業、飲食サービス業 19.9%
4位 不動産業、物品賃貸業 14.1%
5位 小売業 14%
6位 医療、福祉 12.9%
7位 建設 12.2%

出典元
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000140615.pdf

平成27年度で、離職率が10%を超える業種は上記の7つでした。
特に注目したいのはサービス業全般の離職率が高く、なんと2割を超えるという点。
ほかにも、教育に携わる業種や医療・福祉など、人と関わる仕事は全体的に離職率が高い傾向にあるのがわかります。

2-2 会社の制度としての傾向

ほかにも、離職率を高めてしまうのは会社自身の制度としての傾向も考えられます。

・残業代が出ない

サービス業は24時間営業や、夜遅くの時間帯まで開店しているお店など、夜遅くまでの就業時間になることもあります。
なかには会社が残業代を支払わないで、定時を過ぎてからも働かせるような、いわゆるブラック企業も存在します。
ほかにも月何十時間以上からは、残業しても残業代が出ないと制限がある会社も存在し、その背景には長時間労働を未然に防ぐ国の協定が影響していると考えられます。

・厳しい上下関係がある

上下関係がまったくない会社はありませんが、年齢や役職が上の立場の人の意見は絶対といった厳しい上下関係があるところは、新卒にとって大きなストレスとなります。
反対に、上司や先輩が魅力的で尊敬できる対象であれば、新卒もこの企業でずっと働きたい、先輩のようになりたいと思い、仕事へ尽力できるのです。

・休日が少ない、不規則

飲食業や宿泊業の離職率が高いのは、休日が土日ではなく平日もシフト制で不規則な働き方をしているのが理由の一つ。
お盆やゴールデンウィークなど、ほかの人が休みの時期こそ忙しく、思うように休めない、連休がとれないなど、ハードなシフトを設けている企業は新卒が働きにくく退職してしまう傾向が、離職率20%を超える数字からも現れています。

3. 離職率を抑える3つのポイント


それでは、新卒の離職率を抑えるにはどんな点に気をつければいいのでしょうか?
改善したい点をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

3-1 内定時のミスマッチは無くす

新卒が離職する理由1位である、「仕事が合わなかった」「自分がやりたいこととは違っていた」との入社後のギャップを埋めるには、説明会や選考時のフォローをしっかりやっていくことが大切です。
以下は就活生の会社説明会での本音を集めたページです。

★リンク:「あなたの会社説明会は大丈夫?就活生のリアルすぎる本音!説明会で志望度をあげる方法とは」

見てみると、役員の挨拶の長さなど事業と関係ないものは面倒、ワークショップは選考対象外ならわざわざ参加したくない、という意見があり、ストレートな本音であることが分かります。
そこで会社説明会で就活生に向けて重視したいポイントが以下の2点です。

①会社のビジョンや理念がはっきり伝わる説明

「うちはこんな理念やビジョンを持っている」と、就活生に伝わる説明をしていきましょう。
ホームページにすでに載っている文章ではなく、説明会で実際に働く社員から聞ける、生の声を就活生は求めています。

精神論ではなく、今後企業はどう成長していきたいのか、どんな事業をやっていきたいのか、そのために求める人材について、
くわしく説明することで就活生は企業を理解し、自分が働いている姿をイメージしやすくなるのです。

②社員や職場の雰囲気を感じられる説明

企業そのものが魅力的でも、実際に入社したら人間関係が悪かった、となれば新卒はやがて会社に居づらくなります。
就活生は社員同士の雰囲気や会話の内容をチェックしており、幅広い年代の社員同士の交流や部署間のコミュニケーションも活発な企業は、働きやすいと感じています。
そこで、説明会には社内見学を取り入れ、実際の空気を肌で感じてもらいましょう。

3-2 労働環境を見直す

新卒社員が企業を離れる原因、第2位が労働環境の悪さです。
社内の上下関係の厳しさ、残業の多さ、非効率でムダが多い作業の数々は、新卒のモチベーションを低下させ、この企業には将来性がないと判断されてしまいます。
上下関係を重視し、非効率的でも伝統を重んじるやり方は時代遅れになりつつあります。

まずは社内の古い制度を見直し、新卒含め社員を大切にすることで環境改善へとつなげていきましょう。
株式会社レオパレス21では離職率が高い不動産業でありながら、意識改革で労働時間の減少に成功し、離職率を下げた実績があります。

「労働時間の長さ=評価」ではないと会社として発信し、限られた時間で成果を出す人間を評価すると決めたのです。
その結果、時間外労働は1人あたり月に6時間減少し、有休取得率も3割から7割に大幅アップ。
残業が少なく、有休がしっかりとれる企業へと変わりました。

3-3 社内コミュニケーションを活性化させる

ほかにも社内でのコミュニケーションを活性化させ、上司部下間だけでなく横のつながりも意識させることが、新卒だけでなく社員全体に連帯感を作り、退職率を下げる効果を生み出します。

業務外でのコミュニケーションがとれていない社員の、会社に対する満足度は19%である一方、十分にコミュニケーションがとれている社員の満足度は一気に74%にまで上がるデータもあります。
つまり、コミュニケーションの活性化が、長い目で見た時に定着率アップに繋がるのです。

・部活動

このコミュニケーションを深めるために、おすすめしたいのが部活動です。
業務以外で、新卒同士やほかの部署、上司との交流を持つことで仲間意識が生まれます。
たとえば「野球部」や「サッカー部」など、運動以外にも趣味によった「ハンドメイド部」など文科系の部活も充実させると、より幅広い社員が参加しやすくなります。

実際に社内部活動を2005年から導入していサイボウズ株式会社さんでは、5人以上の部員、かつ年数回の活動報告があれば部の設立ができ、補助も受けられる制度を用意しています。
その結果、離職率は28%からたった4%にまで改善した結果が報告されています。

・社内SNS(コミュニケーションツール)

社内SNSを導入することで、部署や上司部下問わず、一気に情報の共有ができコミュニケーションの活性化につながります。
外回りが多い業種は、社員同士のコミュニケーションも希薄になりがちです。
ほかの社員が何をしているのか、どんな人がいるのかを把握しきれない社員も多いです。

そんなときに、社内用SNSやWEB社内報など、コミュニケーションと情報共有に特化したツールを導入すれば、コミュニケーションの土台になります。

以下に、より詳しく社内のコミュニケーションの活性化をうながすアイディアをまとめたページがありますので、ぜひチェックしてみてください。

★リンク:「社内のコミュニケーション活性化は最重要!取り入れやすいアイディア教えます」

4 中途採用のメリット


新卒も既存の社員も含め、高い定着率を維持できることが会社としてベストではありますが、
それでも退職者を0にすることはできないのが実情です。

そこで、必要になるのが中途採用です。

〇中途採用(ベテラン)のメリット

ほかの企業での経験や実績を積んできた人材を中途採用することは、企業にとって即戦力になります。
また、新しい人材の投入によって、既にいる社員たちも刺激を受け、もっと自分を高めよう、と意識改革につながるきっかけにもなります。
社会人としてのビジネスマナーも把握しており、業務の基礎を教えれば即戦力になるため雇用する側としても助かる人材です。

ただし、中途採用は新卒よりも給与が高額な分、もし会社に合わなかったら大きな損失になります。

〇新卒と中卒のハイブリッド-第二新卒採用のメリット

第二新卒とは新卒から3年未満の求職者のことで、4年生大学卒業であれば年齢25~26歳にあたります。
実は近年新卒の離職率が増えてきたことで、第二新卒を歓迎している企業が増えてきているのです。
基本的なビジネスマナーを身に着けていながら、社会経験が浅い分、企業への適応能力が高いのが第二新卒のメリットです。

中途・第二新卒といった新しい人材を受け入れることで、戦力の拡充だけではなく、停滞しがちな社内を変えるきっかけを得ることも出来ます。
もちろん、一番は新卒が離職せず成長してくれる環境であることがベストですが、そのうえで中途や第二新卒を採用し、常に新しい風を吹かせることも同じくらい大切。
中途採用に対してマイナスなイメージをもたずに、積極的に受け入れることが、人材不足に悩まされず、常に向上し続けられる会社を作る大切なポイントです。

5. まとめ

新卒は今や全体の3割が3年以内にやめていると言われています。
入社時の意欲が高くても、実際に働いてみて業務内容にギャップがあった、給与や休日の面で不満があるなどが大きな理由として考えられます。
だからこそ、入社前の説明会の段階でそのギャップを埋めるため、実際のオフィスを見てもらうなど企業側の努力も必要です。

さらに、社内での古い制度を見直し、新卒が無理なく働けるコミュニケーションがとれやすい環境を作るのも、新卒の離職を防ぐうえで意識していきたいポイントですので、
ぜひ今回ご紹介した内容を踏まえて、新卒が働きやすい環境を整えていきましょう。